イタリア地震学者らの誤安全宣言に禁錮6年
今朝の朝日新聞「天声人語」は、先のイタリア「ラクイラ裁判」についての話題だった。曰く・・・
「知る者は言わず、言う者は知らず」という。物事を深く理解する人は軽々に語らない、との戒めだ。世の地震学者は今、この言葉を呪文のように唱えていよう。
3年前にイタリアで起きた地震で、直前に「安全宣言」を出した学者ら7人に、禁錮6年の判決が下った。危険を十分に知らせず、被害を広げた過失致死傷罪。求刑の4年を上回る厳罰である。
一帯は当時、群発地震に見舞われ、不安が募っていた。発生6日前、7人は「知る者は語れ」を期待されてリスク検討会に臨む。結論は「大地震の予兆とする根拠なし」、防災局幹部は「安心して家にいていい」と踏み込んだ。遺族会によれば、やれやれと帰宅した中から30人ほどの犠牲者が出た。
死者309人、被災者6万人の現実は重いが、専門家は実刑に戸惑いを隠さない。山岡耕春名大教授は「驚いた。学者の責任を厳しく問えば、自由な発言や本音の議論を妨げる。長期的には住民にも不利益では」と語る。
口が災いの元では、学者たちは黙り、万一の備えが綻(ほころ)びかねない。同じ地震国の住人として、科学の手足を縛るような判決には首をかしげる。弁護側は「まるで中世の裁判」と控訴する構えだ。
福島の原発事故でも、東電や政府の関係者が民事と刑事の双方で訴えられている。被告席の背後にどっかと座る「安全神話」は、一片の安全宣言より罪深い。再び神話に頼ることのないよう、原子力に携わる全員が口を開く時だ。安全に関する限り、沈黙は「禁」である。 」(2012/10/25付「朝日新聞」「天声人語」より)
この判決には驚いた。確かにプロとして、ジャッジは間違った。しかも明確に・・。しかし、刑務所に6年、という罰はどうだろう?しかも求刑4年に対し、判決は6年。
今回の福島原発事故でも問題になっている通り、一般国民への告知は政治的な思惑も絡む。そして希望的観測が一人歩きする。最悪値を考えたくない・・・と。
昔見た、映画「日本沈没」を思い出した。小林圭樹扮する田所博士が、日本が沈没するという事実を「気が狂った」状態を装ってテレビで言う。大衆は、狂人が言うのだから・・と“それなりに”聞く。ここには、真実を受け止められない国民に、どうそれを伝えるか・・という一つの解が示されていた。
同じく、韓ドラでは、王様の主治医は、王様が亡くなると死罪に処されるしきたりという。王様の命を助けられないのは、確かに重い罪だが、かといって人間は誰も死ぬ。つまり、王様が死ぬときに主治医だった医師は、実に運が悪い・・・、という事になる。よって、王様が高齢になってからは、誰も主治医のなり手がいないのでは・・?
地震予知も同じ。もし予知を間違えたときには、刑事罰に問われるとすると、バカバカしくて予知メンバーのなり手は居なくなるだろうし、たぶん地震学者は家族親戚だけを逃がして、だんまりを決め込むことだろう。
ところで、予知できなかった先の東日本大震災の時の地震学者たちは、どう評価されたのか・・・。地震学会での自己反省の様子はテレビに流れていたが、地震後、マスコミも含めて吊し上げるような極端な非難の話は聞かなかった。しかしそれは、「無視」を意味するのかも・・・。
イタリアのように、予測が外れて罪に問われるほど地震学者に期待されていることが良いのか、それとも日本のように「無視」されるほど、影が薄い方が良いのか・・・。
このイタリアの裁判は、刑事罰に処する以外に、もっと手段があるような気がして、違和感が残った。
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コメント
学者たちは「可能性は低い」と言ったようです。
結果有罪判決ならば、可能性が低くても「高い」的な発言をするしか無くなってしまいます。
狼少年は褒められることになりそうです。
【エムズの片割れより】
政治家は“ことなかれ”が優先するのでしょうね。
投稿: 通行人 | 2012年10月26日 (金) 10:37