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2012年10月26日 (金)

「発見とは何か~10項目の条件考える」~根岸英一氏の話

日経新聞の「私の履歴書」。今月(2012年10月)は、ノーベル賞受賞者の根岸英一氏だ。その21回にこんな記事があった。曰く・・・

発見とは何か~10項目の条件考える
   豊富なアイデア、特に重要   根岸英一
 「その反応はどのように発見したのですか?」。パデュー大の教授に就き各地で講演していた時のこと。コロンビア大でのセミナーでR.ブレスロウ教授が突然質問した。
ジルコニウム触媒を用いた「アセチレンのカルボアルミ化」という新しい反応を発表したばかりだった。新反応を発見と呼んでくれたことは素直にうれしかったが、そこでハタと考えてしまった。
ある水準以上の発見が限りなく続いて有機合成化学の未来は切り開かれていく。新反応の発見は、有機化学者に課せられた最大の使命の一つのはずだ。それに関する質問に対し信念に基づいた即答ができないとは、大変ふがいないことではないか。
 この質問に対する一義的な答えがあるなら、誰でも毎年あるいは毎月のように何かを 発見してしまうだろう。新反応に限らず、発見はそう簡単ではない。あれこれ考え私なりの発見・発明の条件をまとめた。十数年前に日本の専門誌の巻頭言で初めて披露し、その基本は今でも変わっていない。それは10項目ある。
 発見の大前提には「何か欲しいか」という①願望と「何を必要とするか」という②ニーズがある。そしてそれを目指す③作戦あるいは計画を立てなければいけない。
 発見に向けて最も大切な項目は、ブラウン教授に学んだ④系統だった探索だ。ただしこれを進めるためには、知性的な側面から3つの項目が欠かせない。⑤豊富な知識と⑥豊富なアイデア、そして⑦正確な判断だ。
 アイデアは計画の実現のために特に重要だと考えている。大学の研究で学生や博士研究員がアイデアを持ってきた時、私は必ず「ほかにどういうアイデアを考えているのか」と聞いている。少なくとも5~10個、望ましくは20~30個のアイデアを持ち、最良と思われるものを検討すれば、よい結果に結びつく確率は高くなるはずだ。
121026rireki  知性面以外にも必要な条件が2つある。探索に向けた⑧意思力あるいは意欲と、探索をあきらめない⑨不屈の行動力だ。私自身「エターナル・オプチミズム」という姿勢を貫いてきた。日本語に訳すと「永遠の楽観主義」になってしまうが、ここには絶対にへこたれないという意味合いが含まれている。
 実際に実験を始めると、うまくいくことはほとんどない。では何回、失敗を続けられるのか。私は思ったような結果が1ヵ月出なければ、いったん棚上げする方針を決めている。別のテーマに取り組んでいるうちに、失敗した実験がだんだん客観的にとらえられるようになる。違う視点から別のアイデアが浮かび、再挑戦する。それを繰り返してきた。
発見の条件の10番目の項目は「セレンディピティ」だ。スリラン力の3人の王子が思いがけない発見をする昔話に基づくこの才能は、最近とても重要視されている。しかし私は最後に置いた。多くの場合にセレンディピティがなくとも発見は可能と考えている。中心はあくまで、系統だった探索だと確信する。
 テレビ番組でこの発見の条件を話したら、音楽家の松任谷由実さんが見ていて感激し、対談に招いてもらえた。私も感激した。(有機化学者)」(2012/10/22付「日経新聞」「私の履歴書」より)

この記事に詳しい解説がない「セレンディピティ」について、wikiで調べてみた。
「セレンディピティ(英: serendipity)は、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見をする「能力」を指す。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけに閃きを得、幸運を掴み取る能力のことである。」だそうだ。

さて、この論、何にでも通用する考え方ではないかと思う。例えば、自分がまだ若く独身で、何とか若い可愛い(例えばメイちゃん(←実はウチの愛犬)みたいな)女性をゲットしたいと考えるとする・・・。すると、
①「願望」~若い可愛い妻が欲しい
②「ニーズ」~両親がそろそろ孫が見たいと言っている
③「作戦・計画」~どこで探す?友人のツテ?親戚のツテ? それとも結婚相談所?・・・
④「系統だった探索」~一番可能性のある所から当たろう・・・
⑤「豊富な知識」~紹介された女性とどんな話をする?
⑥「豊富なアイデア」~そしてデートの場所は?
⑦「正確な判断」
~おっ!脈がありそう!?
⑧「意思力あるいは意欲」~絶対に彼女を見付けるぞ!
⑨「不屈の行動力」~友人からの紹介がダメなら、親戚に頼もう・・
⑩「セレンディピティ」~天は必ず自分に味方!!

ここまで書いて、さすがにバカバカしくなってきたな・・・。これは多分に昨夜見た、菅野美穂と天海祐希のテレビドラマ「結婚しない」の影響だな・・・・。ったく、いい年をして!?

しかし、この「発見の条件」。発見以外でも通用する。例えばメーカーがよく起こす品質事故。先ずは事故原因を探さなければいけない。それには系統立った探し方をしないと、いつまで経っても原因が分からない事になる。
昔、原発設計の部門と一緒に仕事をした事がある。自分たちがある品質事故を起こしたとき、その連中は、大きな黒板に、考えられる原因をツリー状に解析し、それぞれを検証するための道筋を作って行った。スゴイ早さで・・・。それはFTA(Fault Tree Analysis=故障の木解析)であった。
どんな問題解決にも、科学的に系統立って考えるのが一番。根岸さんのこの「発見の条件」はその思考方法について、参考になる。
最後に話は脱線するが、ウチのカミさんを見ていると、判断は全て“カン”・・。それで人生を謳歌できるのだから、科学的な解析方法なんて、日常生活では必要ないのかな・・・なんて弱気になったりして・・・。(カンで生きる女性は、人類ではない??)

<付録>愛犬メイ子が、今日、また後ろ右足を上げてケンケンして歩くようになった。もう10歳。しばらく良かったのだが・・・。早く良くなってくれ~~。散歩が出来ない!!

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