介護の話~「入院2年、老親の2000万がなぜ底をついたか」
先日買った雑誌「PRESIDENT」に、急な親の介護で、2年で親の2000万円の財産を使い果たしてしまった。という怖い話が載っていた。この話は決して他人事ではないのである。つまり「知らない」と、こんなことも起こり得る、ということ。少し長いが、こんな記事を読んで、少し勉強(復習)しておこう・・・。
「入院2年、老親の2000万がなぜ底をついたか
母がタクシーで徘徊 一回で3万円超請求
“その日”は必ず訪れる。しかし、親が元気なうちに介護のことを考えるのは億劫だ。考えたくないことは考えず、中途半端な情報でタカをくくってしまう。
それだけに、いざその事態に陥ったときの動揺は大きい。
「トラブルで食ってる僕ですら、ひどいものでした」――警察・医師・法曹界に幅広いネットワークを持ち、危機管理のコンサルティングを専門とする平塚俊樹・武蔵野学院大学客員教授(44歳)は、8年前、父親(当時73歳)が認知症となった当時をそう振り返る。今でこそ介護関係者の相談にも乗っている平塚氏だが、かつてわが身に起こった“親の介護”という突発時に、ベターな方策を選び続けるのは難しかった。
父親が居宅の近所を徘徊するようになった頃、平塚氏夫婦は実家から車で30分程度の場所に自宅を購入していた。
「当時はまだGPSを使った本人の位置確認ができなかった。言葉は話せても自宅に帰れなくなる、警察に保護され迎えに行く、という日々が続き、介護認定を周囲から勧められたんですが……」
母親(当時67歳)がかたくなに嫌がった。父を自宅に閉じ込め、区役所の担当者が来たら「出ていけ」と邪魔をする。離れて暮らす実姉が母親の肩を待ったために家族ぐるみの大ゲンカ。そこで、母親が不在の間に、近所の人々や医師の協力を得て介護認定「3」を取得。デイケアと訪問介護を半々で続けた。
そんなある日の夜中の3時頃、平塚氏の携帯電話に救急隊員から「今すぐ来てください」と連絡が入った。
徘徊した父親が階段から落ちて、頸椎を骨折したのだ。そのまま労災病院の個室に運び込まれた。しかし、そこで「うちは介護病院じゃありませんから、看護師一人付きっきりにするのは保険適用外」と言われ、費用は実に月80万~90万円。しかも、「今の保険制度では、面倒を見られるのは3ヵ月だけ。次の病院を探してくれ」といわれた。
ソーシャルワーカーとともに「まるで就活みたいに」あちこちの病院に電話をかけまくり、面接を繰り返した。ようやく見つけた介護専門の病院も、入居すれば月額30万~40万円。やはりリミット3ヵ月を言い渡された。
困ったことに、父親は転倒時に通帳、財布、キャッシュカードを紛失していた。「銀行に行ったら、『本人じゃないから通帳の再発行はできない。本人を連れてきてください』。でも、父は病院から出られない。途方に暮れていたところで、両親と20年以上付き合いのあった銀行支店の融資係長が声をかけてくれた」
幸い、その融資係長が気を利かせて代理人契約を結んでもらい、ようやく父親名義の預貯金を使えるようになった。
このころから、母親の様子もおかしくなってきた。父親の面倒を見る平塚氏の携帯電話に、毎日一50回以上電話をかけてくる。生肉を食べ、冷蔵庫の中をすべて腐らせた。タクシーで何度も徘徊し、請求額が毎回3万円超……平塚氏は、ついに当時の勤務先を辞めた。
「介護休暇なんてなかった。母親を保護した警察から突然連絡があっても、有給休暇では対応できない。当然、営業成績は下がります。嫁は嫁で私が両親に時間の大半を取られているのが気に入らずケンカの毎日。もう辞めるしかないですよ。デイケアの方から『実の息子が面倒を見るのは珍しい』と言われました。サラリーマンだと、妻に丸投げする人がほとんどで、多くの夫婦が離婚に至るそうです」
その次に見つけた有料の住居型老人ホームも月50万円。ようやく事の重大さを悟った姉夫婦が奔走、月35万円の老人ホームを探し出した。
「姉と連絡を取って、母親を『旅行だ』と騙して連れていきました」
しかし、健康保険だけで2人で月5万円、住民税が3ヵ月に一度、約5万円も支払わねばならず、そこに医者の治療代や生活費も加わった。一児を持つ平塚氏の妻の病気入院も重なった。
「僕が約300万円持ち出しました。いまだに借金が残ってます」
その後、姉が苦労のすえ嫁ぎ先の地元の特別養護老人ホームでようやく空きを見つけた。が、「地元住民である」ことを示さなければ特養には入れない。そこで、姉が嫁ぎ先の実家にいったん父親を住まわせ、そこから特養に通わせる“儀式”を経てようやくそこに落ち着いた。
「母についても同様の儀式をやってから、同じ特養に入れた。向こうの実家には本当に迷惑をかけました」
約2年間の回り道。その間に、両親の預貯金2000万円を使い果たした。
「1番のポイントは、特養への申し込みの早さ。あるデイケアに、『こういうのは進行が速いから』と言われました。最初から特養に入れる準備をしないと、僕のような目にあいます。それでも、僕の場合は知己の医者がいろいろやってくれたから何とか破産せずにすんだ。それができない人は、自宅に両親を閉じ込めて、彼らの年金で食っていますよ」
では“そのとき”に備えて、今のうちに何をやっておくべきだろうか。
「まず、両親が元気なうちに、公証役場で任意後見契約を結んでおくんです」
任意後見制度は、判断能力の不十分な人に代わって財産などを動かせる成年後見制度の一つである。
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次に、親と同じ金融機関支店の取引口座を持ち、普段から代理人契約のことを話し合っておくことだという。
「いざとなったら躊躇せずに代理人契約を結び、親の口座を凍結し、自分たちで銀行口座を管理できるようにしておく」
最後に、「親が60歳を過ぎたら掛かりつけの医師をつくり、半年に一回必ず受診させ、自分も医師との人間関係を密にする」。そうすれば、親が外出できなくなっても、医師は本人不在のまま介護認定の診断書を書いてくれるという。
“知っている人”を知っておく重要性
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「軽いうちは『在宅』。少し重くなったら、昔の高専賃である『サービス付き高齢者住宅』や『有料老人ホーム』。ただ、月に最低20万円はかかるから、ここにいる間に、『特別養護老人ホーム(特養)』や『介護老人保健施設(老健)』に移れるよう押さえておく」
こうした情報に詳しいのは、ケアマネジャーだ。「プロのケアマネなら、こうしたケアを全部やってくれるし、平塚さんのようなケースはまず起こらない。そういう“知っている人”を知っておくことが非常に重要です」。
長谷川氏は「ケアマネジャーと主治医選びで運命が決まる」と断じる。
「まず、市町村の窓口で介護保険の申請と地域のケアマネ探しを行うのが基本中の基本。社会福祉協議会(社協)のケアマネがいいともいわれますが、単純にそうとは言い難い。一定の水準は保証されていますが、半分公務員のようなもの。土・日に連絡がつかない場合も多い。かといって、民間のケアマネは情熱ある人も評判の悪い人もいて玉石混交。それに、ほかにいい選択肢があっても、自社で患者を抱え込む傾向がある。一長一短です」
主治医については、多くの人は大病院の医師に頼みたがるが、肩書や名前で選ぶのは危険だという。
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「知らない」がゆえの悲劇を避けるには、早いうちから、正しいことを知るための真剣な努力を続けることだろう。」(雑誌「PRESIDENT」2012.9.3号p34より)
(本文全部のPDFはここ)
もしシルバー族で、親の介護について、ここに書かれていることにビックリする人が居たら、良い機会なので少し勉強しておかないと・・・・・・
誰も、親の介護のことなど考えたくない。まあ考えなくて済めば、それに越した事はないが、それほど世の中うまく行かない。
昨日のニュースでも「認知症の高齢者が今年の時点で300万人を超え、平成14年時点の149万人から10年間で2倍に増加していることが24日、厚生労働省の推計で分かった。65歳以上の10人に1人が認知症を患っている計算になる・・・」と言っていた。
我が家の場合は、どちらかというとラッキーだった。最初にカミさんが母親のために、介護についての勉強や手続きをした。その前知識があったので(“知っている人”を知っていたので)、独居の伯母を特養に入れる際も助かった。それに加えてそれ以外の“知っている人”の知恵も借りて、昨年は自分の親もホームに入れる事が出来た。
自分たちの場合は、兄弟や嫁が居たので助かったが、ここに書いてあるように、「サラリーマンだと、妻に丸投げする人がほとんどで、多くの夫婦が離婚に至るそうです」という言葉が重い・・・。
キーワードは、何でもそうだが「あらかじめ」なのだろう。今は両親が元気でも、「“その日”は必ず訪れる。」のである。よって、いつ“その日”が来ても、直ぐに動けるように、“あらかじめ”行動予定を立てておく事が理想。
我々の経験から、実は“その日”は簡単に来てしまう。プロセスは実に単純。「転ぶ」⇒「腰や足の骨折」⇒「入院」⇒「(一人でベッドに括り付けられるため)認知症を発症」⇒「退院後行く場所が無い」・・・・・・
昨年、伯母に続いて今度は自分のお袋がこのセオリー通りに推移してしまった。老人の骨折は、防止がムリなのである。普通に歩いていても転べば骨折。転ぶな、と注意していても、それはムリ・・・。
つまりどの家でも「“その日”は必ず訪れる。」のである。
ま、こんな風に親の事を考えながらも、実はそれはつまり自分のことになるのである。
そろそろ自分も高齢者の仲間入り。あらかじめ自分自身の“転んで⇒骨折入院⇒認知症⇒どこに行く??”の予定表でも作っておくかな・・・・・・(トホホ・・・)
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コメント
平塚氏の記事を読んで・・・うむむむっ、考えさせられましたねぇ、介護に失敗すれば2000万くらい吹っ飛ぶのは、以前TVのドキュメンタリー番組で「親の介護のため全財産を失った」という記録がありました。介護に掛かる費用の高さゆえ、購入した住宅も蓄えも全て投げ出し、生活の糧となる仕事も辞めざるを得ない現実に、考え込んでしまった記憶があります。
幸い?我が親は、5年前に老人ホームに入ることなく絶界しましたので、この様な苦労はしなかったのですが、今度は、小生が子供たちに厄介を掛ける立場になり、この記事が非常に参考になりました。それより、「ぴんぴんコロリ」を心がけておきますか(マジ)
【エムズの片割れより】
本当にそうですね。うまくコロリと死ねれば良いが、最近話題の胃ろうなどによって長期介護などになったら、それこそ大変・・・。
そのうち、がんになったらラッキーと思うようになるのでしょうか???
投稿: 杉ちゃん | 2012年9月 8日 (土) 11:31
現代は、確かに長生きのリスクへの対処が必要ですね。医療・介護現場ではPEGが無差別に行われる傾向にあり、厚労省もその問題点を提起しています。高齢で経口摂取困難となった場合、積極的介入は避けて補液程度として後は自然に任せる・・・事が良い様に思えます。
【エムズの片割れより】
たぶん段々とそうなりますね。
ところで、病院は「病気を治すところ」だそうなので、末期は病院から出されて、家で迎えるようになる・・・。自分はその方が良いけど・・・
投稿: メメント・モリ | 2012年9月14日 (金) 20:40