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2012年8月10日 (金)

「企業の役割」~トヨタの消費税“還付”は2000億円

消費増税法案が“政争ゴッコ”のあげく、ようやく今日(2012/08/10)の参議院で成立した。ヤレヤレ…
だいぶん前の記事だが、日経新聞の「大機小機」に、企業についてのこんな記事があった。曰く・・・

企業の役割
 企業が日本経済のためにできる貢献とは何か。新興国とのコスト競争に勝ち、拡大する新興国需要を取り込んで外貨を稼ぐこと、と思われている。だが、本当にそうか。
 企業の目的とは利益を上げ、配当や株価上昇で株主に貢献することだ。従って、株主が日本人に限られるなら、日本の富を増やすことになろう。
 しかし、グローバル経済では企業に国籍などはなく、株主も日本人とは限らない。もうかると思えば外国人も日本企業の株主になるし、日本人も外国企業の株主になる。日本企業の株価が上がらなくても、日本人は収益を得ることができる。
 日本に金銭的貢献があるとすれば、税金の支払いだ。ところが、海外移転をカードに法人税引き下げを求め、輸出製品だからと消費税分は還付され、還付額が1000億円を超える企業もある。
 こうした企業の行動とは、日本の労働力をできるだけ安く、少なく雇い、新興国の消費者が喜ぶ商品を安く提供するのと同じようなものではないか。電気料金が家庭向けより安いのも、一般家庭の負担で海外顧客に商品を安く供給するためだ。輸出企業が日本で雇用を生んでいるとの意見もある。だが、輸出企業が外貨を稼ぐほど、経常収支を黒字化して円高を招き、国内産業の育成を妨げる。輸出で稼ぐのではなく、国内消費者にアピールして内需をつくることが日本経済に役立つ。
 そもそも企業の存在意義とは、顧客の望む商品を提供することだ。利益は結果にすぎない。つまり、輸出偏重の経営戦略は、日本ではなく、新興国の消費者のためだ。
 これまで日本製品が伸びてきたのも、まず消費者の目が肥えた日本市場で試され、それが世界の消費者にも受け入れられたからだ。デジタルカメラもエコカーもゲームも、今や世界を席巻しているアニメもそうだ。
 しかし最近は、目の肥えた日本の消費者を諦め、まだ商品が行き渡っていない新興国に売ろうという安易な道を選ぶ傾向がある。これなら当面の収益は確保されても、先行き発展は期待できない。新興国との価格競争で最後に負けるのは、オモチャや食器産業の経験からしても明らかだ。
 企業が日本経済のためというなら、日本人が喜ぶ製品を開発し、国内市場を広げて稼いでほしい。それが企業の長期利益にもつながる。(魔笛)」(2012/07/26付「日経新聞」p17「大機小機」より)

この記事で、「海外移転をカードに法人税引き下げを求め、輸出製品だからと消費税分は還付され、還付額が1000億円を超える企業もある。」というくだりが気になった。

税理士の湖東京至さん(元静岡大学教授)によると、2009年度分で、トヨタは2000億円、ソ120810kanpukinn ニーは1000億円の消費税還付を受けており、輸出大企業は、消費税を払うどころか、逆に還付されているという。(写真はクリックで拡大)
理由は、「輸出還付金制度は「外国のお客さんから日本の消費税はもらえない。だからトヨタなどが仕入れの際に払った消費税分を返してあげるのだ」と説明されています。」
そして、2010年度は消費税収入の約3割がこれら還付金に回されているという。(ここより)

仕組みは意外と簡単。(ここ)によると、
「消費税の税額は年間売上高から年間仕入れ高を差し引いた額に5%掛けて決まる。輸出分の税率はゼロだから、輸出割合が高いほど、仕入れ段階の税額と還付金の逆転現象が起きるというわけだ。
「例えば、ある企業の売り上げが国内で500億円、輸出で500億円だったとします。仮にトータルの仕入れ額が800億円だったとしましょう。その場合、国内で販売した500億円の売り上げに対する税額は25億円、仕入れの税額は40億円となり、差し引き15億円が還付されることになるのです」
 つまり、本当は1000億円の売り上げがあるのに、500億円も低くなり、それでいて仕入れ額の800億円はそのままで計算されるというわけだ。」

ナルホド・・・。確かに消費税が“預かり金”であり、トヨタの下請けが100%消費税を納税しているのであれば、トヨタが“下請けが国に預けた消費税”を還付されるのも分かる。しかし何万社あるか知らないが、トヨタの下請けの1社でも、資金繰りから消費税を納めていなかった会社があったとすると、状況は一変する。払ってもいない消費税を国から受け取ることになるので。(消費税の滞納率は4%位だという・・・)

一方、消費税は預かり金ではない、という判決も出ているという。
「判決は「消費者は、消費税の実質的負担者ではあるが、消費税の納税義務者であるとは到底いえない」「(消費税の)徴収義務者が事業者であるとは解されない。したがって、消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」。つまり、消費税は物価の一部であり、「預り金」ではないと判決ではっきり言っています。」ここより)

トヨタに限らず、業績のよい企業の調達部門のCD要求は強烈。つまりは消費税分など、下請けはとうにCDさせられている。しかし還付を受ける大企業は、そんな事は知らんふり・・・
まあ出来るとは思わないが、トヨタが「下請けさん、今回の注文は輸出車に使うので、消費税は払わなくていいよ」と、下々まで輸出専用の消費税無しの仕組みが出来ると少しはスッキリするのだが、まあ夢だね・・・・
今日成立した増税により、10%になったら、トヨタは4000億円の還付を受けるのか・・・。あまりの巨大な額に。ピンと来ないけど・・・

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コメント

「判決は・・・」以下の議論が私にはまったく理解できません。たとえば、私たちが、本体価格1000円の本を買えば、本屋に対して本体価格1000円プラス消費税50円の計1050円を支払いますが、その消費税分50円について私たち消費者は、自分で税務署に持っていく代わりに本屋に支払い、それを本屋があとで税務署に納めることを期待して行動しています。つまり、本屋(売り手)が私たち消費者(買い手)の消費税徴収の代行をしている(消費税は買い手からの「預かり金」である)と理解するのが自然です。日本では、(書籍以外は)消費税は商品の価格の内税として徴収され、本体価格と税が分離されて表示されていないので、商品を購入するとき価格全体のうちいくらが消費税なのかわかりにくい形になっているのは事実です。判決の議論がそのことを指しているなら、わかりますが、そういうことを指しているのでもなさそうです。(なお、アメリカにも消費税はありますが―アメリカではsales taxと呼びます―外税で表示されているので消費税がいくら課されているのか、買い手が実際に支払う額との差なので、消費税がいくらかかているか買い手に意識されやすい形になっています。)消費税(上の例だと、50円分)が売り手である本屋が買い手から受け取った「預かり金」だと解釈するのが正しいとしても、消費税を実質的に負担しているのは、買い手(だけ)であるとはいえない、つまり、消費税は実質的には売り手と買い手の両方とも負担しているというのが初歩の経済学が教えているところです。もちろん、買い手と売り手のどちらがどれだけ負担しているかは、いろいろな要因ー需要の状況がどうか、独占市場なのか、競争市場なのか等―に依存するので、一概にはいえません。消費税がないときの価格にくらべて、消費税を含んだ価格(買い手が売り手に支払う価格―上の例だと、1050円)が消費税分だけ上昇するなら、消費税が買い手に完全転嫁されたといい、消費税を負担するのは買い手だけですが、特別の場合を除いて完全転嫁されることはなく、売り手も実質的には消費税を負担しているのが普通です。したがって、「消費者は消費税の実質的負担者ではあるが・・・」とはどうい意味なのでしょうか?

【エムズの片割れより】
ご指摘ありがとうございます。この議論のリンク先が違っていましたので、改めて湖東京至さんの「国税庁の言い分破たん「消費税は対価の一部」判決で確定」という記事を読んでみました。
これを読むと、「預かり金でない」という判決が出ていること自体は本当のようです。
一方、我々庶民からすると、幾ら105円のものを顧客から100円に値切られたからと言っても、100円の中に5%の消費税が入っていると思っています。つまり、事業主に自分が払った消費税を預けたという感覚・・・
裁判は最終手段なので、判決はそれなりに受け止めるとして、世界で多く行われている消費税。そんなに欠陥があるのでしょうか?
もう少し“研究”してみます。
勉強の良いキッカケとなりました。ありがとうございました。

投稿: KeiichiKoda | 2012年8月15日 (水) 12:30

エムズの片割れさんの用意されたリンクをよく読んでみました。消費税は売り手の買い手からの「預かり金」ではなく、「対価の一部としての性格しか有しない」とする判決は、分かりづらい言い回しをしていますが、要するに、消費税は実質的には買い手(消費者)だけでなく、売り手(事業者)によっても負担されているということの法律的(?)表現なんですね。消費税にかぎらず物品税(酒税、ガソリン税)等の間接税は前者は従価税、後者は従量税という違いはあるけれど、経済にあたえる効果は同じだというのが経済学の教えるところです。消費税にしろ、物品税にしろ、間接税が課されると、買い手が支払う価格(税を含んだ価格)は上昇し、売り手が受け取る価格(本体価格)は低下し、取引数量は縮小し、売り手も買い手も経済状態が悪化するという点で違いはありません。なお、同じ税率であっても、買い手と売り手との間での負担の割合は、市場の需要の状態、市場が競争的なのか、それとも独占・寡占が支配している市場なのかといった市場環境によって違うので、すべての市場が均一の影響を受けるわけではないのはもちろんです。

【エムズの片割れより】
なかなか奥が深いですね。当方も勉強します。

投稿: KeiichiKoda | 2012年8月21日 (火) 10:03

たびたびコメントで恐縮ですが、今度は判決文ではなく、「仕組みは意外と簡単である」以下、引用されている部分です。ここの議論は論理的に納得がいきません。いま、ここでの例に多少修正を加えて考えてみましょう。2つの同種の製品を生産している企業があり、一つは国内向けに販売し、もう一つは輸出向けに販売しているとしましょう。いずれも売上高は500億円で、仕入高は400億円だとしましょう。ここでの議論で言えば、前者は(500-400)×5%=5(億円)を国庫に納めるのに対して、後者は400×5%=20(億円)の還付を受けるので、消費税のもとでは輸出企業は得をするという議論です。この議論はどこがおかしいかというと、まず、500億円の売上高、400億円の仕入高といいますが、いずれも本体価格(税抜きの価格)で評価されている金額です(だから、その差に5パーセントを掛けるのです)。第2に、両企業とも国から20億円の還付を受けているのです。しかし、前者の企業は、自分の製品の消費税500×5%=25億円を国に納めるので、正味25-20=5億円を国へ納めることになる。売上高を消費税込の価格で評価するなら、前者の企業の売上高は500+25=525億円あったことになり、そのうち消費税分25億円を国庫に差し出すことになるが、20億円が還付されるので正味5億円を国に差し出しているのです。これに対して後者の企業の製品は全額輸出されるので、消費税は受け取っていないので、500億円は正真正銘の売上高です。したがって、売上高を企業の手元に残った額(消費税支払い後の粗利潤)で計算すると、前者の企業は500-400+200=300億円で、後者の企業は500-400+200=300億円で全く同じになります。輸出企業だからといって得をしていることにはならない。売上高を計算するとき、前者は本当は525億円あったということを引用された議論では忘れられているのです。

投稿: KeiichiKoda | 2012年8月24日 (金) 12:34

上の議論の訂正です。最後の粗利潤(各企業の手元に残る金額)の計算に誤りがありましたので訂正します。国内向けに販売する企業は、525-420-5=100(億円)が企業の手元に残るのに対し、輸出企業のほうには、500-420 +20=100(億円)が残り、まったく同一である。前者は消費税込で525億円の売上高があり、消費税込で420億円仕入にかかり、国庫に5億円を納めるので、手元に100億円が残るのです。後者の売上高は消費税はゼロだから500億円が売上高で、仕入れには420億円かかり(20億円の消費税がかかっていることは前者企業と同じ)、20億円の還付を受けるので、計100億円が手元に残るがこの金額はまったく前者と同一であることに注意されたい。

投稿: KeiichiKoda | 2012年8月24日 (金) 14:07

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