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2012年7月 2日 (月)

日経・夕刊の「あすへの話題」~日立・川村会長の話

今日の日経夕刊に、「あすへの話題」の執筆者が7月から替わる、と載っていた。残念!日立製作所会長・川村隆氏のコラムを毎回楽しみに読んでいたのに・・・・・。
愛読していた川村氏の筆はこんな具合・・・

外から眺め、眺められ 日立製作所会長 川村 隆
 誰にとっても、自分を100%客観的に見るのは難しい。どうしても贔屓目(ひいきめ)に見てしまう部分が出る。
 客観的な目は色々あるが、代表格は例えばカメラである。自分の顔や容姿、ゴルフやスキーのフォームを写真で見て、あっと驚いたり、文句を言ったりする人は多い。自分はこんな年寄り顔じゃないとか、こんなヘッピリ腰のスキーヤーじゃないなどと言う。しかし、必ずカメラの方が正しい。
 会社も同じで、中にいる人はなかなか自分の会社を客観視できないことも多い。ウチの会社の評価は低すぎるとか、株価がこんなに低いのはおかしい、などと言う。
 外から眺める方が、むしろ全体が分かることが多い。私は、グループ会社に出ていた時の方が、客観的に親会社の分析ができた。海外に出ている日本人の方が日本を客観的に分析でき、あるべき姿を指摘できるのと同じである。外から眺めた経験は、親会社に戻って改革を実施する際に、大いに役に立った。
 会社の評価の際、カメラの役割をするものの一つは、年金資金などの運用をする機関投資家の目である。贔屓目無しの客観評価には、評価された会社の社内から「実態を知らない連中がこんな厳しい評価をするなんて」と恨み節が出るが、大抵は機関投資家が正しく、自分達が甘いのだ。
公募増資の際、「カメラの目」の投資家に株式を買ってもらうには、本当に苦労した。私がそれまで売ってきた製品とは違って、株式には性能保証も株価保証も配当保証も付いていない。私と会社の将来を信用して無保証製品たる株式を買ってください、と「カメラの目」を持った人々に言って信用してもらうのは、本当に大変だった。」(2012/06/11付「日経新聞」夕刊より)

氏は、いったん子会社に転出した後、日立本体に戻ってV字回復を果たした立役者として有名。よってこのような話にも実感がこもる。
しかしこの論は、誰でも経験する納得のできる話だ。
自分も、現役時代は引っ込み思案の性格から、何度となく工場外に転出することを打診されたが、聞く耳を持たなかった。海外出張も同じ。
しかし、50歳を超えてから、とうとう断り切れなくて米国に出張“させられ”た。初めてパスポートを手に・・・。その時に見聞きしたこと、それすべてが衝撃だった。自分の住んでいる世界の、何と矮小なことか・・・・。それ以来皆に言ってきたことは、「英会話は必須。英語が話せるかどうかで、自分の住む世界の広さが決まる・・・」。
結局、それに反応して、英会話に目覚めた人は、自分、息子どもを含めて誰も居なかったけど・・・。

楽な道はどこへ? 日立製作所会長 川村 隆
 ヒトとそのイトコのチンパンジーとで、たった数百万年の間の進化に、これほどの差がついてしまったのはなぜだろう?
 恐らくヒトは辛く厳しい道をも選ぶことができ、後者は楽な道のみを選んだせいではないだろうか? 後者の祖先は、戦いにも強く、ヒトの祖先を森からサバンナへと追い出した。ヒトは、食糧も少なく外敵も多いサバンナでの辛く厳しい日々を、頭脳を発達させ、群れの行動を進化させて生き延びてきた。一方、チンパンジーは快適な森でのその日暮らしにすっかり満足し、太古の生態をほぼ留めて今日に至っている。ヒトは未来を考え、辛く厳しい道を自分の意思で選ぶことができるという点で他の動物に勝り、種としての衰退を免れている。
 国や企業が衰退する原因にはいろいろある。割合多いのは自己満足に陥る例であろう。幾つかの成功を重ねた後、自己満足状態に陥り、過去の継続・現状維持・組織防衛が本務だと思い込み、世の中の変化に対応できずに没落する。
 自己満足状態の会社では、過去の成功商品に固執し、世界中の潜在顧客・新需要を開拓しようとせず、新商品の開発も遅く、発生リスクヘの対応も鈍く、商品信頼性の維持も怠りがちだ。辛い厳しい仕事を避けて通りがちになるのである。
 国や企業の存立が危うくなるのは、国民や企業人が楽をして厳しい道の選択を避けたり後回しにしたりする時なのだ。日立の創業者も個人としての「誠」、集団として力を発揮するための「和」に加え、現状に甘んぜずに厳しい道を選んで未来を開ころと「開拓者精神」なる一言葉を我々に残した。米国建国時の「フロンティア精神」と同じだ。今の日本や企業に最適の言葉と思う。」(2012/06/25「日経新聞)夕刊より」

言うまでもないが、企業は“顧客”に“何か”を売って商売をしている。大事なのは顧客。それは、誰も頭では、そして言葉では分かっているものの、なかなか体では分かっていない。
そして直ぐに言い訳に走る・・・。「こんな良い製品を作ったのに、お客に見る目がないので買わない・・・。バカな客だ・・・・」と。
しかし、その結果、自己満足の言葉とともに、業績は落ちて、会社は潰れる・・・・
真に“顧客目線で考える”というスタンスがどれほど難しいことか・・・。還暦をとうに過ぎた自分でさえ、そして年を取るほど、それがビジネスの最初であって最後であると思う。

もう現役を卒業し、半ば「休め!」状態の自分なのに、この川村氏の言葉、視線に、ハッとする自分がまだ居る・・・。

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