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2012年5月 6日 (日)

「お墓がない!」~檀家制度は続く?

少し前のニュースだが、天皇が従来の土葬ではなく火葬をご希望で、両陛下の合葬も望まれている、と報道されていた。その実現に向けて検討が始まるという。
これもかなり前の記事だが、朝日新聞「オトナになった女たちへ」というコラムに、「お墓がない!」という記事があった。曰く・・・

お墓がない!
    太田光代
 唐突なことを言うようだが、お墓がない。そんな映画のタイトルを聞いたことがあるが、これは映画ではなく、現実に今、私におきている切実な問題なのだ。
 入院生活を送っていた夫の父が亡くなって、通夜、葬儀と慌ただしい日々を送ったが、一段落ついて、嫁の私にも父のことを懐かしみ、四十九日の法要までに心の整理をする時間が訪れるのかと思ったのも束(つか)の間、父の遺骨はどこに行くのかという疑問が頭をよぎった。父は太田家の三男で、十一人兄妹の末っ子である。昔ながらのしきたりで長男を本家とすると、三男の父は分家であるから、墓は自分で建てなくてはならない。こんな時にとは思ったが、夫の母に率直に聞いてみた。「お父さんのお墓は、どこですか?」。すると、「ないわよ。持ってないから、建てないといけないんじゃない?」。
 私の実の母は、随分前に墓を買っていた。子供心に、死んでもいないのに、お墓を買うなんて、と思った記憶がある。現在は私を育ててくれた優しい父が安らかに眠っているが、お墓の場所が遠すぎて一度も行ったことがない。けれど、景色が良いからと母が気に入って購入した墓地である。いずれ母もそこに入って、すてきな場所で、夫婦水入らずのときを過ごすのだろう。
 さて、太田家の墓の話に戻るが、夫は一人っ子。長男であるから、これから建てる父の墓は、夫や私の墓でもある。天寿を全うする順番は、年齢で考えると夫の母、男女の平均寿命差を考えて夫、最後が私である。お墓は守る人の近所が一番と口をそろえて皆様おっしゃる。
 全国的に墓地不足が深刻化しているという。都立霊園は年に一度抽選を行っているが、相当な倍率である。民間霊園も近くに少ない。遺骨はお墓が決まるまでの間、条件を満たせば都立の納骨堂で一時的に預かってくれるというが……。皆様、直面すると深刻な問題です。慌てることになる前に、一度シミュレーションすることをお勧めします。(プロダクション社長)」(2012/04/15付「朝日新聞」p30より)

「生老病死」。誰も何時かは死ぬ。その時に必要になるのが墓・・・。代々続いている家の長子なら、たぶん親の墓があるだろうから心配ないが、次男以下のいわゆる分家は、上の記事のように、墓をどうするかが課題となる。

墓や菩提寺について、当blogでも何度か書いてきた。その視点は、あまりに庶民離れしたお寺さんの金銭感覚・・・・。
昨年、義姉が亡くなったが、その時に菩提寺から請求された金額が、通夜・葬儀・戒名料で100万円、納骨時のお布施が11万4千円だったという(ここ)。
何よりビックリしたのは、お通夜に坊さんに喪主が挨拶に行ったときに、最初に差し出されたのが、上記111万4千円の銀行振込用紙だった、という話。お寺さんにとっては、お通夜で亡くなった人を弔うことよりも、戒名料が何よりも大切な話なのだろう、と感じた

来月は義姉の1回忌の法要。お寺さんとその日取りを決めたら、1回忌の御布施10万円を要求してきたという。おまけに「来年の3回忌までは、御布施10万円でお願いします」と書いてあったとか・・・。何とも・・・・・

ふと思った。代々受け継いできたお墓も、長男に子どもが無かったらどうなるのだろう?
ある大先輩に聞いたら、長子が途絶えたら、その墓は途絶えてしまうのだそうだ。次男以下のいわゆる分家は、当然別に墓を建てる。よって子どもが無い家が代々受け継いできたお墓を守るためには、あらかじめ養子を迎えて、お墓だけでなく、代々の家の資産も次の世代に繋げていくしか方法が無いらしい。そう言えば、子どもの居ない家に、結婚と同時に若夫婦で養子に入った友人もいたっけ。
しかし菩提寺からすると、檀家の継続こそが大切なので、事情により檀家の名義を縁者に移す事はたやすいらしい。
でもその時の問題は、途絶えそうなお墓を“誰”に移すかだ。お墓の“場所”の問題もあるが、何より毎年の墓の維持費と、戒名料・法事などのお寺に払うお金が大問題。都会の一等地にあるお墓は、その維持にもそれなりの金がかかる。

資産家でもない普通のサラリーマンが、非常にお金がかかる“都会の一等地のお墓”を受け継いだ場合も悩ましい。普通のサラリーマン家庭の場合、不動産などの受け継ぐ資産はほとんど無い場合が多い。よって、ただお墓をのみ譲られた時、そのお墓の維持で日常の生活が脅かされる、なんて言う事態も想定されてしまう・・・
ふと、年金で連鎖倒産している神戸のタクシー会社の例を思い出した(ここ)。生活を豊かにするための年金問題で、会社が潰れる・・・。何のための年金か・・・

お墓は公営の霊園が一番。しかし墓を先祖から受け継ぐ場合には、公営墓地の選択肢はない。その問題の全ては、現在の檀家制度にあるのだろう。前にも書いたが、受け継ぐ世代は何の選択肢もなく、ただただ祖先と同じ檀家制度に組み入れられてしまう。今までの相場で、事ある毎に菩提寺から「幾ら払え・・・」と指示が来る・・。“お布施”という言葉と、そんな現実との乖離に、つい笑ってしまう。
でも、もうそんな時代ではない。
葬儀以外では会う機会もなく、ほとんど顔も知らない菩提寺との縁・・・。お金だけでつながっている現在の檀家制度は、そろそろ終了させないといけない制度かも・・・と感じるこの頃ではある。

(関連記事)
「戒名料」に思う・・・日本のお寺は必ず廃れる!?

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