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2012年5月16日 (水)

「冷や飯を食う」~川淵三郎氏の例

先日の朝日新聞「耕論」に「冷や飯を食う」という記事があった。その中に、サッカーの川淵三郎氏の話があった。曰く・・・

サッカーに賭ける転機に
     日本サッカー協会名誉会長 川淵三郎さん
 今でも24年前の、あの時のことを忘れません。サラリーマン人生で、ある意味、絶頂期にいた頃でした。突然、思いも寄らない人事を告げられました。
 当時51歳の私は、古河電工名古屋支店銅製品販売部門の部長でした。仕事は順調で取扱量は社内でもトップクラス。次は、前任者と同様に東京に戻って本社の部長だと信じていました。
 ところが、受けた辞令は100%子会社の部長。その頃はサッカーから離れ、将来は本社の重役に、と夢を思い描いていました。同期入社の約90人の中でも順当にポストを歩んでいたから、まさかの左遷です。
 異動は、支店長から自宅への電話で告げられました。頭の中は真っ白、声も出ません。ロスタイムで追いつかれ、ワールドカップ出場を逃した日本代表の「ドーハの悲劇」を現地で目の当たりにした時と同じぐらいのショックでしたね。
 「これからの人生、どうしようか」と落ち込みました。世間から見れば左遷ではない人事も、本人の感情は違うものです。私のことを古河電工の出世頭と見てくれていた取引先の役員からも「何か悪いことでもしたんですか」と、同情の言葉をかけてもらいました。
 退職という選択肢も頭の中をよぎりました。しかし、独り立ちして食べていけるのかと考え、やはり難しいと思い直しました。サラリーマンは、言わば「まな板の上の鯉」です。組織に左遷はつきもの。同期入社の中で将来の役員間違いなしと見られていた東京大卒の人間も、関連会社に出向していました。会社員人生、すべて思い通りにはいかない、必ず挫折が待ちかまえているんだと思います。
 幸いにも、私には立ち直るきっかけがあった。当時の日本サッカーリーグから、リーグの運営責任者への誘いを受けたのです。人気が低迷していたサッカーを、プロ化で押し上げようという機運が高まっていました。
 子会社への出向を受け入れ、会社勤めとの二足のわらじを3年続け、91年、Jリーグのチェアマン就任を機に退社しました。最初はプロ化できるなんて確たる見通しがあったわけではありませんが、あの左遷があったからこそ、サッカー界の改革に賭けようと決意できました。
 そうは言っても、今も心に引っかかりがあります。あのとき、本社の人事責任者は直接、私に告げなかった。大事な人事は一対一のサシで話をするべきです。そうでないと、しこりが残る。左遷は、異動を言い渡す方の力量も問われるのです。
 会社員生活は30年に及びました。不遇をかこった時に、仕事以外に何か打ち込めるもの、没頭できるものを持っておくことも大事でしょう。私にとって、サッカーが人生のよりどころになりました。(聞き手・角津栄一)
*川淵三郎さん:36年生まれ。東京五輪サッカー日本代表、ロス五輪代表監督。 91年にJリーグ初代チェアマン。日本サッカー協会会長も6年務める。」(2012/05/13付「朝日新聞」p19より)

先日「新渡戸稲造の人生訓」(ここ)という記事を書いたが、それと同じような話。
人間、挫折は付きもの。しかし復活劇はある・・という話。
WIKIをみると「1988年6月、古河産業へ出向、取締役伸銅品部長」とあった。そして、こんな記述も・・・・
「1988年、森健兒から日本サッカーリーグ(JSL)総務主事の後任を頼まれ引き受けるが、森は「川淵さんはおそらく古河電工の役員として東京に戻れると思っていたんでしょう。ところが東京に戻ることになったものの、本体の古河電工ではなく系列の古河産業に出向だったんです。もしこれが本体の役員だったら彼はそっちに行ってサッカーに関わっていなかったと思いますよ。権力志向の強い人だから。これからどうなるかわからないサッカーより彼はそっちを選んだでしょう」と話している。『「ダイヤモンド・サッカー」の時代』のインタビューでも、川淵はほぼ同内容の話をしている。「サラリーマンとして先が見えた以上、このままでは生きていく上で夢がない。では自分の目指すことのできる夢って何だろうと考えたときに、それはサッカーしかないと思ったんです。それで総務主事の話を引き受けることにした」。

この話は、何が真実か分からない。つまり、見る視点でいかようにも捉えられる。氏の言うように左遷かも知れないし、会社組織からすると順当な人事かも知れない。“権力志向の強い人”が本当だとすると、保守的な会社はこのような人材は扱いが難しいため、登用を避けるかも・・・。特に、本人が本社役員を期待していればいるほど、なかなか期待通りには動かないもの。人事とはそういうもの。そして、その内示を面と向かって言うのは、余程の覚悟が要るので、安易に電話で・・・!?(普通は有り得ない内示方法なので、周囲は相当に氏が怖かったのでは・・・?)

しかし、その後はまさに“水を得た魚”のような活躍が始まる。まさに適材適所を地で行っている話だ。

この話を聞いて、自分なりに理解したポイントは、「個性派は古い伝統のある会社ほど、評価が得られにくい」「出る杭は打たれる」「仕事以外に没頭できるものを持っておくことは大事」・・・
氏も同様とのことだが、業務に打ち込めば打ち込むほど、他の世界(氏の場合サッカー)との距離が広がる。しかし、逆境で別の世界に転じた場合、その別の世界で生き延びられるだけ深さがあるかどうか・・・。
普通のサラリーマンは、今までの仕事から干された時、転身などなかなか出来ないもの。別の世界・・と言っても、その世界は極めて浅いもの。そもそも忙しいので、なかなかそんな世界の準備は難しい。しかしそう言っていては、“逃げている(言い訳している)”としか見られないのが事実だが・・・・。
もう自分など、もうリタイア組なので関係無いが、現役世代には、この話を糧にして欲しいものだ。つまり、いつ逆境に陥るか・・・・。それは誰も分からない。それは仕事上かも知れないし、私的なことかも知れない。その時に、前向きに生きる別の選択肢を持っているかどうか・・・。それが人間としての強さ・・。
それは、日ごろの準備無くしては有り得ないだろう。

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コメント

サッカーのワールドカップ・ブラジル大会も開始から1週間が経ち、佳境にはいりつつあります。私は、日頃はJリーグの試合など見たこともない、ワールドカップが近づいたときだけ、人並みに試合(とくに日本代表の試合)をTV観戦する、にわかサッカーファンにすぎませんが、気になることがあります。状況が、ジーコ監督が率いた日本代表のドイツ大会での戦いぶりとそっくりなことです。ザック・ジャパンは史上最強のチームと言われていますが、あのときも、MFに中田英寿、中村俊輔、小野伸二等をそろえて(いわゆる「黄金の中盤」)史上最強のチームといわれていました。その前の大会(日韓大会)でベスト16に達したこともあって、ドイツ大会ではそれ以上の結果が期待されていました。しかし、勝てる相手と見ていたオーストラリアに負けて、絶対勝ちにいくといっていたクロアチアに引き分けて、最強の相手ブラジルに勝たないとリーグ戦は突破できないところへ追い込まれました(結果は、御承知のように、ブラジルに大敗して一次戦突破はならず)。今回も、前回の南アフリカ大会のベスト16を受けて、ベスト16あるいはそれ以上への期待が非常に高かったと思いますが、勝つはずだったコートジボワール戦は逆転負け、何が何でも勝つはずだったギリシャ戦も引き分けで、グループ最強のコロンビアに勝たないと一次突破できないところまで追い込まれてしまいました(勝ってもほかのチームの状況によっては決勝トーナメントへ進めない)。ここまでの経過は、ドイツ大会とまったく(?)同じですが、こうなったからにはせめてコロンビア戦ではひと泡吹かせて、ドイツ大会とは違うところ見せてほしいですね!

【エムズの片割れより】
自分も同様に、W杯だけワイワイです。でも職場で休暇を取ってまでも見る価値があるのかどうか・・・。
それに、サッカーで応援しないのは非国民・・・という雰囲気も好きではありません。
今回の日本は、マスコミも叩いていますが、ボタンが掛け違っているようで・・

投稿: Keiichikoda | 2014年6月21日 (土) 18:59

上の2014/6/21のコメントへの追記です。危惧したとおり、1勝もできずに一次リーグを敗退し、ドイツ大会の二の舞になってしまいました!各メディアも、選手たちも(といっても私が読んだのは日経と読売だけですが)日本(サッカー)と世界との差が厳然としてあることを再認識し、愕然としたようです。しかし、今回のワールドカップは、スペインも、イタリアも、イングランドも、スペインも、一次リーグを敗退しました。これらの国はサッカーの「世界」そののものではありませんか!ワールドカップが始まる前にNHKで放送された「岡田武史の見る世界基準と日本の挑戦」という番組では、岡田元日本代表監督はわざわざヨーロッパに出かけ、スペインとイタリアの代表監督と会って、意見を交換し、(日本が勝つための)アドバイスを受けているのです。これまでの、日本チームの敗退の分析では、いろいろの面で日本が世界にまだまだ立ち遅れていることの指摘だけで、今回はなぜこれらのサッカー先進国が勝てなかったのかまで踏み込んだ分析は今のところありません。何か共通の敗因があるはずです。
ところで、ワールドカップではいつも感心していることがあります。アメリカは見事一次リーグを突破しました!アメリカでは3大人気スポーツ(アメフト、バスケ、野球)の陰に隠れて、サッカーは一部のファンが観戦するマイナーなスポーツにすぎません。いったいアメリカ市民のどのくらいの人が今回のワールドカップに注目しているのか、ごく少数でしょう!にもかかかわらず、毎回一次リーグを突破してくるですね、優勝こそしていませんが、強いんですよね。国民が熱狂して応援しても一次リーグを突破できない国とは大違いです!

【エムズの片割れより】
確かに、アメリカとサッカーは、あまりフィットしない・・・。その中で勝ち上がるとは、たいしたもの・・・
それに引き替え、日本サッカーは、51ものクラブがあって、この結果・・・。
プロサッカーはお金を取ってプレーを見せるので、世界の大舞台でも結果を出して貰いたかった・・・。その点、プロ野球は結果を出している・・・。

投稿: KeiichiKoda | 2014年6月27日 (金) 10:07

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