スカイツリー/東京タワー/フレッツテレビのFM電波の差
今日は、我が家のアンテナの建て替え工事をした。と言うのは、先日FM送信アンテナのスカイツリーへの移転に伴い、我が家の10素子のFMアンテナの方向を、今までの水戸局方 向から、スカイツリー方向へ変えたが(ここ)、その時に、アンテナ工事屋さんから「マストも屋根馬も支線も、錆びていて危ない」との指摘を受け、台風毎にヒヤヒヤするのもイヤなので、建て替えた。ついでに8年半前の地デジ放送開始以来使っていたUHFアンテナも新品に交換し、それに加えて先日の台風で飛ばされて、5素子が3素子になっていたFMアンテナも新しいものと交換した。FMアンテナは10素子で充分なのだが、FMチューナー(KENWOODのL-02T)が2台あるので、5素子も予備として設けた。
せっかくなので、データを採り、評価をしてみた。するとFM電波について、色々と分かってきた。
まず、アンテナ屋さんのマスプロのデジタルレベルチェッカーによる、信号レベルの測定値がこれ・・・。
<信号レベル>
(スカイツリー) (東京タワー)
NHK FM J-WAVE TOKYO-FM
(82.5MHz) (81.3MHz) (80.0MHz)
10素子 89.3dBμV 89.0dBμV 77.4dBμV
5素子 77.4dBμV 79.4dBμV 69.2dBμV
フレッツ 70.2dBμV 70.6dBμV 72.0dBμV
*スカイツリー:空中線電力 7Kw/ERP 57kW
*東京タワー:空中線電力10Kw/ERP 44kW
*「フレッツ・テレビ」:FM電波をフレッツ光の光回線で送ってくるNTT東のサービス(月額700円)
Wikiによると、東京タワーは「空中線電力10Kw/ERP 44kW」だという。一方、スカイツリーは「空中線電力7Kw/ERP 57kW」だという。ERP(Effective Radiation Power :実効輻射電力)とは「アンテナからある方向に放射されるエネルギーを「半波長ダイポール・アンテナ」での送信電力に置き換えたもの」だそうで、スカイツリーの方が受信地点での電波の力が強い設定になっている。
データでも、東京タワーよりもスカイツリーの電波が12dBも強い。フレッツテレビの電波は変わらない。
なおフレッツテレビは、前にNTTが調べてくれたところによると(ここ)、終端装置の出力コネクタ端で、76.5dBuVあった。よって、今回調べたFMチューナー入力部は、同軸ケーブル20mやすき間ケーブルを経由しているので、6dBほど減衰しているのだろう。
それにしても、レベルが高い。総務省の放送エリア図(ここ)によると、当八王子は最低でも2mV/mの電界強度を確保する、とある。前にマスプロに問い合わせたら「10素子アンテナ(FM10)で計算すると、2mV/mであれば71.0dBμVのレベルが得られる」という。その最低線に対して、プラス18dB。強い事はありがたいのだが、幾ら我が家がちょっとした高台の上とはいえ、予想よりもずっと電波が強い。
<アンテナの特性>
一方、FMアンテナの特性表を見ると、マスプロのFM10とFM5の利得の差は、NHK(82.5MHz)で4dB、J-WAVE(81.3MHz)で3.5dB、TOKYO-FM(80.0MHz)で3dB程度である。しかし、実測値の差はNHKで12dB、J-WAVEで9dB、東京タワーからのTOKYO-FMでは8dB。それぞれ、8dB、6dB、5dBほど特性表から高い。これを見る限り、10素子のアンテナはそれなりに高性能であるという事らしい。
<ノイズ量(S/N比)>
(スカイツリー) (東京タワー)
NHK FM TOKYO-FM
(82.5MHz) (80.0MHz)
10素子 61.3dB 59.6dB
5素子 60.8dB 58.3dB
フレッツ 53.1dB 53.3dB
そして最も大切なノイズの量の評価である。評価方法は前に書いたように(ここ)、放送されている音楽の曲間の無音部分のノイズ量を、試験放送時の1KHzの基準トーン信号の90dBと比較している。
だいたいFM放送は、電波の強さなどどうでも良い。マルチパスが無くて、ノイズ量が少なければ、それで良い。そう考えて、上のリストを見ると、東京タワーよりもスカイツリーの方が、10素子で1.7dB、5素子で2.5dBほど良いことが分かる。これは電波が強いせいか??
そして、10素子と5素子のアンテナでは、1dB位の差しか無いことが分かる。
つまり、10素子のアンテナで89dBμVのレベルが得られた・・と喜んでも、ある程度のレベル以上からは良くならない、というFMの本来の特性があるため、あまり意味がない事が分かる。
(左の表で、dBf=dBμV+11.25
*0dBf=1fw(フェムトワット=1×10マイナス15乗ワット)なので
75ohmの時の電圧値は(V^2)/75=1*10^(-15)より
V=0.273μVとなり
0.273μV(0dBf)=-11.3dBuVとなる)
しかし案の定、フレッツテレビの電波の質は良くない。スカイツリーに変わっても、まったく改善されなかった。幾ら光で送るとは言え、元の受信した信号の質が、あまり良くないのだろう。ノイズ量の7~8dBの差はあまりに大きい。良い音でFM放送を楽しみたい方は、自分でアンテナを建てるに限る。
かくして我が家では、幾らFMチューナーが2台あるからといって、結果としてわざわざ5素子のアンテナを建てる必要はなかった。つまり、10素子の入力を2分配するだけで充分だったようである。
もちろん電波の状態は日々刻々と変動している。上のデータもあくまでも一例である。しかし傾向は変わらない。絶対値は別にして、“傾向”だけは今日のデータから、色々と読み取れるような気がする。
結論として、自分の“マルチパスの無いFM電波”を追い求めた「趣味」も、2012年4月23日のNHK東京FMのスカイツリー移転を機にマルチパスが無くなり、我が家の受信局を、今までの水戸局(61.2dBμV)から、スカイツリー(89.4dBμV)に切り替える事ができた。上記のように、充分すぎるほどの信号である。
サテサテ、これからのNHK FMの番組が楽しみである。
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コメント
こんにちは。ようやく清瀬に戻ってきました。
スカイツリー発信を聴きたくてスイッチを入れて浦和向きのアンテナ(5素子)でも問題なく82.5MHZが聞けました。
そこで東京方面に向きを変えたら針一つ分強くなりました。(L=02Tで78DB)
フレッツと比較するとエムズさんと同じ結論に達しそうです。ただ私の場所のフレッツはSNにムラがあり、今日のシフのピアノのSNはフレッツは良くなかったです。SNが良い時はスカイツリーに迫る音質で聞くことができます。
想像以上のスカイツリーの素晴らしさでした。
しかしエムズさんの実行力ときたら・・・・
私も浦和とはお別れです。フレッツはアンテナ
トラブルの時のために予備にしておきます。
なおFM東京は東京タワーが大株主のため
当分スカイツリーに移動は無いようです。
でも日本昔話のように「それから幸せに暮らしましたとさ・・・」となるのかな?
私も虚脱感に襲われそうです。
なおT-1100でマルチパスリダクションはかなり
効果ありますよ。
L-02Tはフレッツよりスカイツリーのマルチパスの振れが少ないようです。
音は深みのL-02T 明晰のT-1100
30年のアドバンテージはあるようです。
逆に30年間トップを続けたL-02Tの偉大さも
印象的ですね。
【エムズの片割れより】
しかし電波によってこんなに音が違うんですね。自分はNHKしか聞きませんが、我がL-02Tがトシのせいか、昔の真空管ラジオのように、たまにピューと言います。確かに、幾ら名機とはいえ、30年以上前の機械がこの先どの位持ってくれるのか・・・
将来方向のFMチューナーをどうするか、考えてしまいます。L-02Tに拘っていて良いのか・・・・
投稿: 風鈴崋山 | 2012年5月 1日 (火) 22:34
スカイツリーの音質は素晴らしいの一言ですが
新しい発見をしました。
マンションの共聴アンテナを久しぶりに接続したのですが個別受信と同等の音質で楽しめました。
共聴アンテナはマンションの屋上に8素子で設置しています。引き回しが長くブースターを
かなり多用しているので敬遠していたのですが
スカイツリーになってからはNHKは問題なくなりました。
個別受信は家がそばに建っていて十分な範囲が取れませんが、伝送は単純ですのでこちらを
メインにして共聴をサブにしようと思います。
フレッツは私もやめようかな・・・
しかし今までの苦労はなんだったのでしょうか
おそらく全てのFMチューナーの性能を引き出してくれますね。
とにかくノイズ皆無でミュージックバードの再現ですね。おかげで録音もクリアーになりました。
今まで蓄えていたFM録音ほとんど消去して
しまいました。
これからエアーチェックは再スタートです。
後はアナログLP再生に力をいれます!
【エムズの片割れより】
確かに、今の状況を思うと、今まで何だったんだろう・・と思います。
それにしても、安心して聞ける、というのはありがたい。音楽に集中できます。
投稿: 風鈴崋山 | 2012年5月 4日 (金) 20:32