「始める勇気~65歳から畑仕事はつらい」
先日の朝日新聞「これからの田舎暮らし」というコラムにこんな記事があった。
「始める勇気~65歳から畑仕事はつらい
定年になる前は、「定年になったら田舎暮らしをするつもりだ」といっていたのに、いざ定年になると、「あと二、三年は会社に残れるらしいから……」と前言を翻し、それから三年経つと、「娘が結婚するまでは、なんとか仕事を探して働かないと……」といってまた決断を先に延ばす。
そうやっているうちにどんどん時が過ぎ、結局はなにもしないまま終わる人が多い。
もちろんそういう人の大半(というかほとんどすべて)はもともとそれほど強い意志をもっていない人なので、どちらかというと口先だけで終わるほうが本人のためである。
が、なかには本当に真剣に考えていて、長い時間をかけて計画を実行しようとする人もいる。それはそれでよいのだが、もし本当に実行するつもりなら、あまり決断に時間をかけ過ぎないほうがよい。
ついこのあいだ、以前からときどき私の店にやってきては田舎暮らしの相談をもちかけてくる人が、ひさしぶりに訪ねてきた。
彼は四十歳を過ぎる頃から将来の計画を立て、五十歳になったとき、目をつけていた田舎に住めそうな家と小さな畑がついた土地を買った。それからは、休みのたびにそこを訪れ、地元の人たちにも知り合いができたという。あとは定年になったら引っ越すばかり、というのが、数年前に来たときの話だった。
「どうですか、引っ越しはされましたか」そう私か聞くと、彼は浮かない顔をして、「それが、まだ……」と口ごもる。
「結局、定年後も嘱託として会社に残ることにしたのですが、娘がなかなか嫁に行かなくて……」と、例の、典型的な先延ばしの理由を語りはじめるのだった。
「あ、こりゃダメだ」口には出さなかったが、私はそう嘆息した。
「あと四、五年のうちには行きたいですね」と彼はいうのだが、それではもう六十五歳を過ぎてしまう。せっかく家も土地もあるのに、その歳から慣れない畑仕事をはじめるのはつらいだろう。だいいちいまどきの娘さんは、結婚するかどうかさえわからないのだから。
田舎暮らしをしたい、という人に対して、私は、「慎重に考えたほうがいいですよ」と、ブレーキをかけるが、どうしても、という人がいたら、「人生に必要なものは勇気ですからね」といって背中を押す。(エッセイスト)」(2012/04/25付「朝日新聞」夕刊p9より)
「定年になったら**をするぞ・・」という話は良く聞く。でも現実は、なかなか実現しないもの・・・。
田舎に引っ込むのも、生まれ故郷に戻るのならいざ知らず、ずぶの素人が土地カンもない田舎に住み始めるのは、かなりの勇気と決意が要る。だからこの記事のように人は躊躇する。まさに「言うは易く行うは難かたし」である。
先日、元部下だったTさんが、体調を崩して会社を辞め、田舎に戻った、という話を聞いた。“その道(=仲間の事情)”に詳しい人に聞いてみたら、Tさんは、子どもが独立したのを機に、奥さんの実家の山形県に引っ越して農業をやる・・との事。横浜のマンションも売り払い、しかも同居していた彼の母親も一緒だという。そんな選択肢もあるのだ・・・。
定年を機に、“断捨離”ではないが、生活規模を縮小する意味で転居する人も多いと聞く。大きな家を処分して都会のマンションに移ったり・・・。でも大きな環境変化はリスクも伴う。上の記事ではないが、年を取って、慣れない環境でうまく行かなくなった時のリスク・・・。
我が家も、子どもが家を出て夫婦二人になった現在は、確かに家がデカ過ぎる。それは分かるが、かと言って引っ越す勇気がない。しかし元気な世の女性と同じで、ウチのカミさんは違う。
大きな声では言えないが、実は我が家では毎日のように、カミさんからせっつかれている。「早く駅前のマンションに移ろうよ~~」って。でも自分はなかなかその気になれない。
何よりも自分はこの家に愛着があるし・・。まあいずれ、自分ががんの宣告でもされたら、もう後が無いので決断することになるのかな・・ナンテ思うエムズくんなのである。(この記事がカミさんに読まれたら、また一悶着あるな・・・・・。たぶん・・・。きっと・・・)
| 0
コメント