コダックの破綻~米、破綻と誕生の新陳代謝
今朝の新聞各紙に、19日に破綻した米・コダックの記事が載っていた。予想されていた事ではあるが、日経新聞の解説記事に、こうある。
「米、破綻と誕生の新陳代謝
名門イーストマン・コダッグの破綻劇は示唆に富む。一つは1980年代、90年代の日米関係を大きく揺さぶった通商摩擦の帰結としての意味合いだ。かつての通商摩擦は台頭する日本企業に対して、米国のライバル企業が「日本勢が不公正な競争を仕掛けている」と米政府に訴え、政治的に抑え込む構図だった。
だが、結果はパッとしない。その時々の交渉では日本側に譲歩をのませた事例もあるが、それを契機に米国勢が本格的に復活したのは半導体ぐらい。摩擦の代表格だった自動車では、後に米ビッグスリーのうち2社が法的整理に追い込まれ、携帯通信摩擦に火を付けた米モトローラはデジタル化への対応が遅れ、存在感を失った。
そして95年の日米フイルム摩擦の仕掛け人だったコダックの破綻。ライバルの強さを素直に評価せず、政府頼みで相手を封じようとする「傲慢さ」や「安直さ」が一連の経営の失敗の背景にあるのではないか。逆に「ジャパン・ユニバーシティー(日本という大学)から品質管理など様々なことを学びたい」を持論としたジャック・ウェルチ前会長が率いたゼネラル・エレクトリックは衰退とは無縁だった。
一方で、日本が学ぶべきは切れ目なく新しい企業を生む米国のダイナミズムだ。その過程で社齢130年超のコダックのような名門が倒れることもあるが、その穴を埋める次の主役が登場する。
例えば、米フォーチュン誌が選出する「最も尊敬される企業ベスト10」。米国の優良企業ランキングとして定評のある調査だが、最新の2011年版には70年代に創業したアップルやマイクロソフト、90年代創業のグーグルやアマゾン・ドット・コムが名を連ね、戦前から続くいわゆる巨大老舗企業はコカ・コーラなど2社にすぎない。
対して、今の日本で「一流企業」「優良企業」といえば、思い浮かぶのはトヨタ自動車や新日本製鉄などの名門メーカーであり、戦前から続く商社であり、あるいはNTTドコモのような旧公営事業体だ。コダックの倒産は当事者には痛恨の事態だろうが、米国経済の活発な新陳代謝能力は今も健在。日本としては「かつての摩擦の敵役」の頓挫に、浮かれている場合でもないのである。(編集委員 西條都夫)」(2012/01/20付「日経新聞」p3より)
こんな記事を読んでいると、色々な思い出がフツフツと蘇ってくる。
デジカメが普及するまで、自分も長い間、写真のフイルムはもっぱらコダックを使っていた。当時、“肌の色が美しいのはコダック”と言われていた。樹木希林CMのフジフイルムはほとんど使ったことが無かった。まさに写真の世界でコダックは、仰ぎ見る存在だった。しかし時代は移って行った。
ここ数十年の変わったことで、一番大きく変わったのは、家庭における写真の世界かも知 れない。家庭からフイルムが淘汰され、写真の世界は、まさに一変した。調べると、フイルムは1997年がピークだったという。その後のデジタル化で、彼(か)のサクラフイルムも2007年に撤退・・・。
もちろん、携帯電話に代表されるユビキタス(いつでも、どこでも、だれでも)社会への変貌も目を見張るが、それとて有線電話が無くなったわけではない。しかしフイルムは本当に使わなくなってしまった。
しかしあのコダックが潰れるとは・・・。株価が1ドルを切っていたというので、時間の問題ではあったが、何とも感慨深い。
最近の若者は、自力で家を建てなくなった・・・と耳にした。否、建てられなくなった・・? 昔はそれなりの会社に勤めていれば、35年ローンも楽々組めた。しかし現代は“何でもあり”の時代。どんな大企業も30年続くとは、誰も言えなくなっている。つまり、先の米ビッグスリーの破綻もそうだが、幾ら大企業でも、一生勤められるとは限らない。
そんな事でローンも組みづらいのかな・・・と、会社の休息室で若い課長さんに聞いてみた。「マンションは自分の?」「35年ローンを組みました」「最近はなかなか貸してくれないのでは?」「いや、生命保険とパックです。それは自殺もOKです」だって・・・!?
このブラックユーモア。何とも怖ろしく、寂しい・・・。
先の記事で指摘しているように、米国の優勝劣敗のエネルギーには、日本は到底追い付けない。日本はただ借金が増えるだけ・・・?
野田政権が、社会保障と税の一体改革に突き進んでいる。言うまでもなく、日本は少子高齢化と借金大国・・・。そして、若者に厳しい今の社会。その負担を将来世代に先延ばしにする従来のやり方は何とも心苦しい。
コダックも潰れる時代。つまり、我々が過ごした高度成長期とは時代が違うのだ。こんなニュースを聞きながら、消費税の10%も仕方がないかな・・と思う、この頃ではある。
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