海外から見た日本のTPP対応
先のTPPやCOP17について、どこか客観的な解説記事はないか・・・と探していた。
今朝の日経新聞に、米国の日本政治研究の第一人者の目から見た、日本のTPP対応について論じた記事があった。曰く・・
「TPPで日本の変革を
米コロンビア大教授 ジェラルド・カーチス(Gerald L. Curtis)氏
環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる日本国内の論争は、2つの勢力の衝突だとみている。グローバル経済の中で日本の生き残りを確実にしたい勢力と、自らの市場や権益を守りたい勢力との衝突だ。後者の代表例が農業、医療などの関連団体とその支持を受けた代議士などだ。
論争はいくつかの点ていびつだ。第1に交渉に入ったとたん日本が要求をのまされるとの誤解。交渉への参加は、協定を日本の利益に沿う形に誘導する手段にすぎない。参加しないと協定づくりへの影響力を行使しようがない。
第2に交渉での合意がすぐ適用されるとの誤解だ。関税撤廃には10~15年の移行期聞か見込まれる。日本の農家の平均年齢は66歳と高く、人材不足が深刻。自由化は避けられず、長い移行期間は日本にとって悪くない話のはずだ。
TPPを「外圧」「米国の陰謀」とする声が多いのにも驚く。こうした解釈を広める人々の動機は何か。まず外国に小突かれるのはこりごり、との思い。農業保護などに関心があるわけでないが、米国に対し「ノー」と叫ぶことでナショナリズムをかき立てようとする人たちがいる。
他方で「米国の要求を拒否すれば日本は孤立する」とあおる人々もいる。“黒船症候群”とも呼ぶべきか。正反対の立場の人々が、ともに「米国」を自身の主張に都合よく利用している。
米国は日本が交渉に参加しないなら、どうぞご勝手に、という姿勢だ。医療機器や農産品、金融などの業界は日本の市場開放を喜ぶだろう。だが初代ブッシュ、クリントン両大統領が、対日貿易赤字を削るため産業界の代表と日本に乗り込んだような勢いはない。日本が動かないなら韓国との自由貿易協定(FTA)のように、規模は小さくても迅速に動く国と交渉するだろう。
一般の米国人がTPPなど聞いたこともないのに対し、日本で「TPPを知っているか」と聞けば9割の人はイエスと答えるだろう。だが本当に理解している日本人は多くないはずだ。政治もメディアも十分に説明していない。
本質は、日本がグローバル社会で生き残るため国内をどう変革するかという点に尽きる。だから実はTPPでも、日米FTAでも日中韓FTAでも世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドでもかまわない。要は日本がもつ勤勉さ、教養の高さ、規律や技術力などの潜在力にどう磨きをかけるかなのだ。
野田佳彦首相は党内に配慮した言いぶりながら、交渉に参加するとの決断を示した。今後のカギは政府内や党内の有力者が反対したとき、国民の支持を動員して押し切る戦略を首相が持っているか。審判の日は少しずつ近づいているようにみえる。(談)
改革遅れにいらだち
TPPをめぐる日本のテレビ討論には閉口するという。「何より退屈。そして毎度の、たわごと。狭い視野。日本はこの程度の国じゃないはず。残念だ」
「失われた20年」を迎える日本にいらだちを隠さない。東日本大震災後、抜本改革による日本の再生に期待し、何度も現場に足を運んだが、それも裏切られつつある。「日本が最後に自前の制度を打ち立てたのは400年以上前の徳川幕藩体制。新しいモデルが出ていいころだ」。TPPがその引き金になれば、と期待する。(ニューヨーク=西村博之)」(2011/12/19付「日経新聞」p5「グローバルオピニオン」より)
まあこの論が客観的かどうかは分からないが、少なくても日本の業界代表の話を聞くよりも、自分にとっては何か心に入ってくる・・・。
「本質は、日本がグローバル社会で生き残るため国内をどう変革するかという点に尽きる。」という指摘は、多分誰もが感じていること。それに「日本はこの程度の国じゃないはず。残念だ」という言葉も当事者の日本人にとっては重たい。
言うまでもなく、国会議員は国民の代表・代弁者。よって自分の選挙区の民の顔色をうかがってその言葉を代弁する。結果、既権益を守る事にのみ目が行ってしまい、なかなか思っていても大所高所での意見が言いづらい。選挙母体を怒らせたら、タダの人になってしまうので・・・
先日の新聞に、“代議士は官僚に強く、官僚は(許認可権を持っているので)民間(企業)に強く、民間は(選挙権を持っているので)代議士に強い”と言った記述があった。
その記事は、これは日本に民主主義が根付いている証拠だと言っていた。確かに、今日「金正日総書記死去」が報道された極端な国・北朝鮮とは比べるべくも無いが、逆にポピュリズムに陥りやすい面もある。氏に指摘されるまでもなく、とにかく現代日本の政治はひ弱だ。
震災・原発問題や沖縄の普天間基地移転問題も含めて、苦難の21世紀の日本を指導する“現代の徳川家康”はいったい誰なのだろう?
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