「常に観察すべき五つの真理」(2/6)~「病気」~ジョブズ氏の逝去と残されたスピーチ
前回(ここ)に引き続き、日本テーラワーダ仏教教会から出ている「常に観察すべき五つの真理」という冊子を読んで行こう。
「常に観察すべき五つの真理
アルボムッレ・スマナサーラ長老
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○病気
「私は病気になるものであり、病気という性質を乗り越えていない。このことを女性も男性も在家も出家も常に観察すべきである。」
人間は肉体を持ったら、必ず病気になります。病気といいましても、仏教の病気の定義は世の中のものとは異なります。ふつう私たちが病気だと思っているものは、高熱が出て寝込んだとか、癌や糖尿病などの病気のことを指しますが、仏教では「手当てしないと死ぬ」ことを「病気」というのです。手当てしないと死ぬならば、その状態が病気なのです。
ということは、仏教的に見ますと、お腹がすくことも、のどが渇くことも病気です。お腹がすいたとき、もし手当てをせずに何も食べなかったらどうなるでしょうか? のどが渇いているのに、一滴も水分を摂らずにいるとどうなるでしょうか? その状態が続くと、死んでしまいます。ですから、これを病気というのです。
しかし世の中では、その状態を「元気」とか「健康」などと言っています。お腹がすいた、食欲がある、などと言うと、「元気で健康だ」と言うのです。
仏教では、これらのことは何か手当てしないと死にますから病気です、と見ます。仏教の病気の定義は、幅広くて論理的です。「手当てしなかったら死ぬ」なら、お腹がすくことも、のどか渇くことも、排便も病気です。それから、呼吸することも病気です。常に酸素を入れないと死にますから。
そこで「呼吸=病気」なら、私たちは「病気がなければ生きていけない」ということになります。矛盾していますが、病気が命を支えているのです。日本的に言えば、病気のおかげで元気で生きている、ということでしょう。私たちは、病気であるがゆえに生きているのです。
息を吸ったり吐いたり呼吸をし、お腹がすいたら食べ、のどが渇いたら飲み、消化や排泄もスムーズにして、適切なときに汗をかいたりするから、私たちは生きています。もしいくら運動しても汗が出ないなら、それは問題です。汗がまったく出ないと体内の熱が放出できなくて脳がいかれてしまい、とても危険な状態に陥りますし、反対に、汗ばかり出ると脱水症状になって、ひどい場合は死ぬこともあります。汗が出ることも出ないことも病気なのです。
このように、生きること全体が病気でできています。身体の細胞一つ一つが呼吸をして栄養を摂らないと、生命は生きていけません。私たちの命は病気で組み立てられて成り立っているのです。なのに「私は健康だ」などと高慢になって威張るのは、とんでもない無知でしょう。」(日本テーラワーダ仏教教会「常に観察すべき五つの真理」より)
我々が見つめなければいけない第二の真理は「病気」だという。
話が変わるが、今日のニュースで、米アップルのジョブズ氏死去の報が大々的に流れていた。アップルの時価総額で、一時、世界一に導いたジョブズ氏の健康問題はアップル社最大のリスク、と長い間言われてきた。そして、8月のCEO退任で、世界中が懸念してきたことが、とうとう現実になってしまった。しかし、56歳とは早い・・・
さっき夜9時のNHKニュースで、スタンフォード大学の卒業式でのジョブズ氏のスピーチが流れていた。さっそくNetで探してみると、これは「スタンフォード大学2005年卒業式で行われた伝説のスピーチ」だそうだ。
NHKのニュースで流れていたテロップを再確認した・・・。
「私は17歳の時、こんな感じの言葉を本で読みました。「毎日を人生最後の日だと思って生きてみなさい。そうすればいつかあなたが正しいとわかるはずです。」これには強烈な印象を受けました。それから33年間毎朝私は鏡に映る自分に問いかけてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だしたら今日やる予定のことは私は本当にやりたいことだろうか?」それに対する答えが「ノー」の日が何日も続くと私は「何かを変える必要がある」と自覚するわけです。・・・・」(ここ)より
確かに人は必ず病気になる。そして肉体は必ず滅びる。それが“いつか”は誰にも分からない。しかし、その必ず来る滅びの日が、例えいつ来ても後悔しないような生き方を・・・。
ビジネスで世界を変えた天才は、この56年間をこのスピーチで言っている通り、思うままに疾走して“ゴール”したのだろう。
確かに、56歳というあまりに若い急逝は、ある意味、大いなる人類の損失。
しかしフト見かけたジョブズ氏のスピーチは、何度も何度も聞くに値するもの。それを残して、ジョブズ氏は逝った。
この病気と闘っていたジョブズ氏の歴史的スピーチ。まだ見ていない方は、ぜひ一度、(ここ)で15分間聞いてみて下さい。
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