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2011年8月25日 (木)

「豊かさの競争」~視点の違い

カバンの中から、少し古い新聞の切り抜きが出て来た。(通勤電車の中で、気になる記事があると、新聞をビリビリと破いてカバンの中に入れておくのだ)。
またまた日経新聞の「大機小機」」なのだが、なかなか勉強になる・・・・。曰く・・・

豊かさの競争
 (2011年)7月22日に「経済財政白書」が公表されたが、その中に印象的な一文がある。それは「輸入が増えて『国際競争に負ける』のではなく、輸出と輸入が両建てで増えて『豊かさの競争に勝つ』のである」というものだ(152ページ)。この文章は、我々に次のようなことを考えさせるものとなっている。
 第1は、輸出入を勝ち負けで論じてはならないということだ。
 一見すると、国際競争に勝てば輸出が増え、負ければ輸入が増えるようにみえる。これは個々の市場における企業間の競争については成り立つ。しかし、経済全体にとって輸出が増えることが「勝ち(良いこと)」で輸入が増えることが「負け(避けるべきこと)」ということにはならない(その理由は後述)。
 第2は、輸出と輸入の両方が増えることこそが自由貿易のメリットだということだ。グローバル化を推進して貿易を盛んにする最大の理由は、国際分業を推進して経済を効率化することにある。限りある国内資源を得意な分野に集中して輸出を増やし、不得意な分野は輸入に委ねる。こうして輸出入が並行的に拡大することによって経済が効率化し、生産性が高まる。これがグローバル化のメリットである。輸出が増えることは大切だが、それと同じように輸入が増えることも大切なのである。
 第3は、経済の最終目標は国民生活を豊かにすることにあるということだ。
 例えば、環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる議論を聞いていると、農産物の輸入が増えることが反対理由として指摘され、工業製品の輸出を増やせることが賛成理由として指摘されることが多い。しかし、これは生産者の視点に立った評価である。生産者の視点に立てば、輸入品との競争にさらされることは避けるべきことであり、輸出機会が増えることは歓迎すべきことになるからだ。
 しかし、経済の最終的な目標は、生産者の利益を守ることではなく、国民の生活をより豊かにしていくことである。輸出を追求して輸入を防ぐことは、消費者の選択の機会を狭め、また経済全体の効率化を妨げることによって結果的に生活の豊かさを損なうことになる。
 白書が指摘するように、我々の究極の目標は「豊かさの競争に勝つこと」なのである。(隅田川)」(2011/08/10付「日経新聞」p17より)

なるほど・・・・
この論は、ある事象を捉えるとき、その事象を判断する(見る)“立場”の違いで、その価値(意味)は大きく変わってくる(変動する)、と言うこと。
視点という意味では、学生の頃、「朝日ジャーナル」という週刊誌があった。我々が学生だった1960年代の終わりの頃は、まさに学生運動華やかなりし時代。よくデモ隊と機動隊がぶつかったという記事やテレビを目にしていた。そんな中、朝日ジャーナルで、「テレビの画面で、学生が機動隊の警棒で打たれている場面を写すと、視聴者は“学生が可哀想”と思い、学生の投げた火炎瓶に逃げ惑う機動隊の姿を写すと“機動隊が可哀想”と思う。」という記事があった。
そのとき、事実は色々あるが、マスコミの報道如何で、世論は誘導される、という事を知った。
つまり、報道を鵜呑みにせず、自分なりの見識で判断せよ、ということ。

福島の原発事故。そのマスコミの報道ぶりを「戦争での大本営発表と同じだ」との非難が多いらしい。マスコミが、自分の目で確認せず、政府・東電の発表をそのまま鵜呑みにして報道していた・・、というもの。
確かに相手が放射能という目に見えないものが相手。それに避難命令が出ている原発に近付くことも出来ない。そんな状況下では、自分の目で確かめよ、というのは無理だったかも知れない。
すると、それらの報道は、結局、それを捉える視聴者側の見識に頼ることになる。疑えば良いというものでもないが、ニュースのNHKばかり見るのではなく、民放も見ろ、とはカミさんが良く言うセリフ。確かに、週刊誌の見出しだけを見ても、まあ色々な見方があることは分かる・・・。

さてさて、次期首相を決めるために、政界は大騒ぎ中。しかしこれだけは、我々一般ピープルの見識で決めることが出来ない。何とも歯がゆいものだ・・・。

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コメント

アメリカやドイツの経済白書を見た事が無いので,独りよがりの感想です.日本の政府高官がこんな極楽トンボみたいな机上の論理を堂々と述べているのには驚きです.
国際分業が経済効率化とは恐れ入りました.中国のレアメタル輸出制限はどうなのですか.ロシアは言うことを聞かない過去のソ連邦国へのNGパイプラインの封鎖は何なのですか.わが国の安全保障の件は農水省と防衛省に任せておけばOK?
輸出企業がどんなに苦しんで世界経済戦争を戦っているのか知っているくせに,高級官僚というのは,げに恐ろし.
ところで国別名目GDPはアメリカ・中国・日本・独・仏ですが,国民一人当たりは,ルクセンブルグ・ノルウェーで日本は
16位.いつのまにかこんなになってしまった・・・・・
さて,大本営発表の意味は,情報部はしっかりしていても,政府がNegative Dataを隠して,放射性物質飛散は局地的と言っている事.最近ようやく東北電の女川原発が
震災を切り抜けて,福島第一原発が完璧にやられたかがNHK特集でわかりました.

【エムズの片割れより】
・・・・・・

投稿: のりへい | 2011年8月25日 (木) 23:40

自らの見識で物事を判断せよとのお言葉痛み入ります。但しこの見識が曲者なのであろう。我々が仕入れる事ができる情報は限られている。しかも、今回の原発事故では、有識者という無識者により、相当だまされもしたし、また無知な政府高官の輩の言う事を嫌と言うほど聞かされた。3・11より6ヶ月が経とうとしているときでさえ、まだ騙されていると思いが生じる時がある。原発が政財官学の癒着構造で成り立ったということが実に良く解ったことが収穫であった。だからどうするのか?これが国民に突きつけられたことだ。見識と言う言葉では突きつけられたものを跳ね返す事ができるであろうか?

【エムズの片割れより】
何とも重たいコメントで・・・。
先日、大震災3.11の4日前に、10mを越す津波の試算を東電が国に報告したとの報道がありましたが、どんな予測も全て無視されるのが常・・・ですよね。つまり、事件が起きて初めて正気で読む・・・

投稿: 金子 次郎 | 2011年8月26日 (金) 18:27

仏教の教えの話になりますが、皆様は色即是空、空即是色を良くご存知だと思います。この文の意味は色と空が同じであるという意味に捉えがちでありますが、実は時間の変移で色は空にもなり、空は色にもなると解釈すべきと思います。即ち、時の移ろいで目で見えるものも見えなくなり、目で見えないものも見えるようになるという意味に取ることを
中道と呼びます。仏教が中道と言われる所以であります。物事の真実は時間の経過とともに明らかにされると言う最もなお話になります。私はこれを見識と呼ぶべきであると思います。どんな事柄も時間をかけていけば真実が現れてくる。勿論その努力を怠ってはいけませんが・・。

【エムズの片割れより】
確かに全ては、時間の経過とともに明らかになる事は多いですね。でも色即是空は難しい・・・

投稿: 普賢 | 2011年8月27日 (土) 11:35

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