原発コスト「安さ」の虚構
今日は震災から4ヶ月目。まだまだ落ち着かない。
少し前の朝日新聞だが、「原発コスト「安さ」の虚構」という記事があった。原発コストが実は高い・・という話は聞いていたが、具体的な数字があるので、読んでみよう。曰く・・
「原発コスト「安さ」の虚構
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ところが、その原発のコストに疑いの目が向けられている。
立命館大教授の大島堅一は、電力各社の有価証券報告書をもとに、原発のコス卜を調査。1970年から2007年までの発電費用に、原発開発を促進するための税金や、使用済み核燃
料の再処理費用なども加えて計算した。
結果は原子力10.68円、火力9.90円、水力7.26円。原発のコストは国が使う試算の約2倍になった。
大島によると、電気料金には、明細書に記されていない原発固有のコストが、月300円は入っているという。電源開発促進税や再処理費用だ。
電促税は、交付金として原発のある自治体などに渡る。原発1基で運転開始までの10年間、地元には449億円か落ちる。運転後も出るこの交付金が、全国に50基以上の原発を建設する原動力となった。
大島は、国の再処理費用は実際よりも少なく見積もっているとみており、「原発の本当のコストはもっと高い」と疑っている。
賠償も上乗せ?
「国民負担をお願いするとき、政治家は税金と電気料金のどちらを選ぶか。間違いなく電気料金だ」
エネルギー行政を担ってきた経産省の元幹部は打ち明ける。実は電気料金には負担を転嫁しやすい秘密がある。「総括原価方式」だ。
人件費や発電所の建設費、燃料費など、電気事業にかかるコストに利潤(報酬率)を加え、電気料金をはじき出す。東電の報酬率は現在、3%。電力業界は、この方式を利用し、1基3千億~5千億円という原発建設に邁進してきた。
独占的な電力体制に異議を唱える自民党衆院議員、河野太郎は自身のブログで「究極のぼったくり商法」と、この方式を批判する。
今回の原発事故に伴う損害賠償費用も、電気料金の中に入れられる可能性が高い。菅政権は、賠償負担を東電以外の電力会社にも負わせる方針で、電気事業連合会会長の八木誠(関西電力社長)は記者会見で、負担は「(事業コストに)織り込めると理解している」と、料金転嫁は当然という認識だ。
原発のコストは東電の原発事故を受け、ますます膨らみかねないが、もはや原発を止めても電気料金が安くなるとは限らない。
原発の廃炉には30年以上かかり、1基数百億円ともいわれる。核燃料のごみである「高レベル放射性廃棄物」を地中深く埋める事業には最低でも100年の歳月がかかる。費用は兆円単位、生命に害を及ぼさなくなるのは数万年単位といわれる。肝心の最終処分場の場所選びも進んでいない。・・・・」(2011/06/30付「朝日新聞」p3より)
一方、7月3日付の日経新聞には「「電源迷惑料」年1660億円~電気料金に上乗せ」という記事があった。曰く・・・(写真はクリックで拡大)
「「電源迷惑料」年1660億円~電気料金に上乗せ
原子力発電所などを立地した地方自治体が受け取る電源立地交付金などは、1973年の第1次石油危機を受けて74年に制定された電源3法が根拠だ。財源は電力料金に上乗せしている電源開発促進税(国税)。税収が乏しい地域に財源を配分する形で、原発立地を後押ししてきた。 電源3法とは電源開発促進税法、特別会計法、発電用施設周辺地域整備法。電源開発促進税の税収は国のエネルギー対策特別会計を通して、関係自治体などに配分する。2011年度予算では主に地域振興に充てる電源立地対策費として1660億円を計上した。このほか電促税の税収は原発関連の独立行政法人の運営費などにも充てられている。
政府試算によると、出力135万キロワットの原発を新設する場合、運転開始までの10年間で481億円、その後40年間で903億円の交付金が自治体に配られる。原発着工前からの手厚い配分で、自治体は交付金なしでは財政運営できない体質に変わってしまう。
交付金の使い道はハコモノ建設や一般家庭への給付金など多様。このため無駄遣いの温床にもなってきたとされる。 07年度から電促税の税収は国の一般会計を通じて必要分だけ特会に繰り入れる仕組みに改めたが、効率化の効果は不透明だ。」(2011/07/03付「日経新聞」p9より)
今回の福島第1原発の事故で、原子力発電の、今まで日が当たらなかった部分が白日の 下にさらされている。福島原発だけでなく、全国の原発まで・・・。でもそれはそれで良い事だ。原発コストや、電源3法についても、勉強する良いチャンス。これらの報道を、自分でどう捉えるのかは、読み手の実力次第・・・・!?(写真は2011/07/03付「朝日新聞」p2より)
一般的に、“権力”は自分の都合の良いように世論をコントロールしようとする。原発コストについても、これから進めようとする施策に都合の良い面だけで論じようとする。そこは“超優秀な人”が考えるので、抜かりはない。しかし今回のようにひとたびボロが出だすと、虚構の理屈は崩壊の一途??
しかし、参加住民を7人に絞った玄海原発の説明会や、九電の“やらせメール”など、どうも最近の動きは、世論コントロールの“プロ”としては拙い。
今日のNHKニュースによると、菅内閣の支持率は9%下がって、16%だという。逆に“支持しない”は11%増えて68%だという(ここ)。
しかしここまで打たれ強い首相も珍しい。ストレスで(?)リタイアした安部さんが懐かしい・・!? 捉えようによっては、歴史に残る“大物首相”なのかも・・。
連日、政治や原発や震災復興など、平常時にはないビッグな報道が続く。
4ヶ月目の命日に際し、政治や国民の目線が、ぜひ被災者に向くよう、監視を強めていこう。
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コメント
原発の問題は根が異常に深く、切り口がなかなか見えなかったのですが、今回の内容で切り口が見えてきました。心から感謝します。それと、国際的な枠組みの中で、仕組まれて日本が取り込まれてきたようですね。
米・英・仏のかっての連合国の核戦略に組み込まれていたのでしょう。具体的には、日米安保の仕組みからも日本は縛られているのではないかと思われます。核廃絶という立場で考えていきたいと思います。
【エムズの片割れより】
原発問題は、連日報道されていますが、どうも着地点が見えませんね。原発の国営の話まで飛び出して・・・。本来は原発建設のスタートの時点で議論しておくべき問題だったのでしょうが・・・
投稿: 金子次郎 | 2011年7月12日 (火) 04:26