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2011年6月13日 (月)

「エネルギー政策 原発なき電力供給は目前」

昨日に続き、“ものごとを別の角度から見てみよう・・”という話。先日の朝日新聞「私の視点」というコラムに、原発が無くても電力供給は可能、という論が載っていた。曰く・・・

エネルギー政策 原発なき電力供給は目前
     国際エコノミスト 齋藤 進
 原子力発電所を全部止めれば、電気が足りなくなるし、電気代も上げざるを得ない――。これが現在のところ、大方の日本人が抱いている「常識」かもしれないが、私の解答は「否」である。原発を全面停止・廃止しても、電気は余るうえ、電気代も逆に大幅に下がり得る。
 日本のエネルギー政策の大本営である経済産業省資源エネルギー庁の統計情報や、総務省統計局の「日本の統計」「日本統計年鑑」などによると、日本全体の発電能力は、原子力を1とすれば、おおよそ水力1、火力4の比率だ。大震災前の操業率は、水力がほぼ100%、火力と原子力はそれぞれ50%前後だった。
 停止前の原子力の操業率が100%だったとしても、火力の操業率を75%以上にすれば済む。まして原発の操業率が50%なら、火力の操業率を65%以上にすれば電気は余る。したがって原発がすべて停止・廃止されても問題はない。
 原発が止まれば、電気代を上げないと電気の供給が足りなくなるというのもおかしな話だ。日本で発電される電気の20%近くは実は自家発電で、その90%が火力、10%が水力だ。大手企業などは、電力会社から電気を買うより安いから自前の発電設備を使っている。
 既存の発電設備だけでも電気は余るし、昨年の原子力発電実績を新型発電設備のガスタービン・コージェネレーション(熱電併給)に置き換えても、必要な新規投資額は8千億円程度で済む。この新規設備能力に30%増しの余裕をみても1兆円程度だ。しかもガスタ
ービン・コージェネレーションの熱効率は既存火力より30~50%も高く、同規模量の発電での二酸化炭素(CO2)などの排出量も大幅に下がる。この方式の大規模発電は大手のガス会社で、ここ10年近くも実施され実証済みだ。
 燃料の天然ガスは、原油と異なり、世界的に供給量が増えており長期的には安定供給が見込まれる。天然ガスを液化する段階で硫黄・窒素分などの有害物質は除去され、環境負荷は極めて小さい。しかも、日本の大手重工業メーカーには上記の設備を短期に製造・設営する能力がすでに備わっている。日本が得意とする国家総動員態勢で当たれば、早ければ1年、遅くても2年以内にすべての原発に代わる新規発電設備ができる。
 中長期的には、原発全廃を決定したドイツのように、再生可能エネルギー利用の拡大に注力すれば環境負荷はさらに小さくなる。
 要するに、安くて環境にも優しく、持続可能な電力供給は、原発に頼らなくても、国民の選択次第で目の前にあるのである。」(2011/06/11付「朝日新聞」より)

自分など、“素直なので”すっかり電力会社の言うこと、マスコミの報道に洗脳されてしまっている。しかしこの論は面白い。電力不足の話が、“自分たちに都合の良い情報、理屈だけで論じている”という状態が良く分かる。
裏に隠しているモノは、いわゆる“隠し球”?それとも“ヘソクリ”??
前に原発停止に伴う東電の電力不足が伝えられたとき、「揚水発電の活用が抜けているのでは?」という議論があった。先日の関電も同じように、本当は手段があるのに、それは隠しておいて「15%削減を!」などと喧伝する。だから大阪府の橋下知事が怒る!?

この論を読んで、「大震災前の操業率は、水力がほぼ100%、火力と原子力はそれぞれ50%前後だった。」という事実?を知った。発電能力の2/3を占める火力発電が、50%の操業率だとすれば、原理的には確かにその火力の操業率を15%アップするだけで原発の全面停止にも対応出来ることになる。
すると、先の関電発表に対する「・・・いきなり数字だけ出されて、15%削減? こんなの、府県民の皆さん、普通だったらできるわけないんです。できなかったらどうなるか。原子力発電所が必要でしょうという議論に持っていかせるためのブラフ(はったり)としか、今のところ見えないですね」 (ここ)という橋下知事の発言も真実みを帯びる。

広辞苑を引くと、【事実】=「事の真実。真実の事柄。本当にあった事柄。」。【真実】=「うそいつわりでない、本当のこと。まこと。」とある。
この定義からすると、電力会社の発表は、一つひとつが“事実”ではあるものの、電力が不足するという“真実”ではない・・・、ということか?

世の中で起きること全てに言えることだが、“事実”は確認出来ても、その“真実”を見極めることは難しい。つまり、報道される一つひとつの「事実」から物事の「真実」を見極めるためには、それなりの知識が必要であり、自分たちに、それらを“見る目”が無ければ、国の、そしてマスコミの扇動に易々と乗ってしまう、という事になる。
戦争の時によく使われた「プロパガンダ(propaganda)(=宣伝。特に、主義・思想の宣伝)」という言葉があるが、日々の報道に易々と乗っている自分が何とも情けない・・・・・

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コメント

日経ではなくて朝日ではありませんか?
国際エコノミスト斎藤進氏については全く存じ上げませんで,Google検索しましたところ,この投稿文が大反響になっていました.唯一,反論しているサイトがありましたので,URLを下記に示します.
http://www.yasuienv.net/ElwoNuke.htm
時恰も,イタリアでは国民投票で脱原発が94%とか.国民の一人は「ごみ問題すら解決できない我が国なのに,日本が手を焼いた原発など安全なわけないでしょう」.なるほど・・・
ECは送配電ネットワークが完成しているので,電力不足になれば他国の原発電力を買える.ドイツも原発廃止して,不足すれば買えるという安全システムが用意されている.風力発電で有名なデンマークのことを,或るスエーデンの人が「わが国に原発のリスクを負わせて,平然とその電力を買っている.不愉快な国だ」.日本は電力会社の独占市場を開放するところから始めるべきではないだろうか.

【エムズの片割れより】
そうでした。朝日の間違い。修正しました。スミマセン。
紹介頂いたサイトは、まだ詳しく読んでいませんが、理路整然と反論していてスゴイですね。それに比べて、自分は本当にミーハー。
何よりも、天下の(!??)朝日が載せているのだから・・という予断が良くない。反省します・・・

投稿: のりへい | 2011年6月14日 (火) 18:06

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