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2011年3月22日 (火)

「男と女、どちらが強いか」

「文藝春秋」の今月号(2011年4月号)に、彼(か)の作家・渡辺淳一氏が「男と女、どちらが強いか」という実に“分かりきったこと”について一文を寄せていた。曰く・・・

男と女、どちらが強いか
     渡辺淳一(作家)
 表題のような質問をされたとき、読者の皆さんはどう答えるだろうか。
 もし男なら、「そりゃ、男だろう」と答える人が圧倒的に多いかもしれない。これに対して女性も、「男でしょう」と答える人が多そうである。しかし、男でも年齢(とし)をとるにつれて答えは微妙に変わってきて、六十歳あたりから上になると、「女性かも・・」と答える人が増えてくるかもしれない。そして女性も、この年代になると、「そりゃ、女性でしょう」と答える人が多くなりそうである。
 ではいったい、この正しい答えはどちらなのか。それは、このあとのことを読んでから、考えて欲しいのだが。
 もうずいぶん前、わたしが医師になりたての頃だから、今から四十五年以上も前になるけれど。
 当時、わたしは新人の整形外科医として、札幌の大学病院から北海道の阿寒町にあった雄別炭鉱病院に出張した。
 その頃はまだ炭鉱があり、落盤事故なども多かったので、各種骨折や外傷などに対する基本手技だけは一応マスターしていたが、出張するに当たって教授から、「無理してやりすぎないように、自信がなければすぐ医局に連絡しなさい」と注意をされていた。
 実際、わたしもそれを守るつもりでいたが、ある日、突然三十五歳の女性の急患が運び込まれてきた。
 彼女はどこにも外傷はないが、すでに顔面蒼白で意識がなく、血圧も測れない。一目見ただけで腹腔内に大出血がおきている、産婦人科系の疾患であることはすぐわかった。
 だが生憎、その日、産婦人科医は学会に出張していて不在で、外科系の医師はわたし一人しかいない。
 しかもこういう場合、ほとんどは山の下の釧路の大きな病院に転送するが、今から送つたのでは一時間はかかり、途中で絶命することは目に見えている。
 「どうしよう」と、外科の婦長にきくと、「すぐ開腹しましょう」という。
 しかし産婦人科はまったく自信がない。そういうと、「じゃあ、わたしのいうとおりやってください」というではないか。
 そこでいわれたとおり、お腹を切り開くと、おびただしい血液が一気に溢れ出す。それを見ただけで、足ががたがた震え出すが、とにかく懸命に膿盆(のうぼん)で血を掻き出し、ようやく出血点を探し出す。
 「ここです」と婦長にいわれるままに、そこをがんじがらめに縫合し、何とか出血だけはくい止める。
 むろんこの間、輸血と点滴だけは続けていたが、開腹してから止血するまで三十分以上かかり、相当の出血をしたことは間違いない。
 一般に、人間の総血流量は体重の十二分の一で、その三分の一が出ると失血死すると、医学の教科書には書かれている。
 だが彼女の場合、三分の一どころか二分の一近くはたしかに出ている。
 それから考えて、甦ることはまず難しい。そう判断して、患者の夫にも諦めてもらうように告げ、ともかく輸血と点滴だけは続けたまま、疲れ果てたので、医局へ戻って少し休んでいた。
 すると三十分後に手術室から、「至急来て下さい」という連絡があり、急いで行くと、意外なことに蒼白だった彼女の顔に軽く赤味がさし、低く呻いているではないか。「なになに、助かるのか・・」
 信じられないまま、さらに輸血を続けているうちに血圧も測れるようになる。
 ここまできたら、もはや命にかかわることはない。先程、諦めて欲しい、といったご主人に、「申し訳ないが助かりそうです」といって、病室へ移す。
 かくして、翌日戻ってきた先輩の産婦人科医に、患者さんを引き渡してから「信じられないことがおきたのです」と、手術の経緯を話すと、先輩がいうではないか。
 「君ね、たしかに三分の一が出ると失血死すると書かれているけど、教科書通りきちんと死ぬのは男だけ。女性は違う。女性はアナログだから、最後まで諦めてはいけないの」と。
 やはり妊娠して出産する性は強いのか。初めの質問にわたしがどう答えるか。
 もはや、それは書くまでもないだろう。」
(「文藝春秋」2011年4月号p79より)

ここで「女性はアナログだから」という視点が面白い。そうなのだ。男はロジカルに考える。我が家でも、自分は必ず「原理的には・・」と言う。しかしカミさんは違う。何事も“カン”に頼るところが多い、という。料理の味付けにしても、道順にしても・・・。男には到底信じられない・・・。でも実はそっちの方が良く当たる。

話は飛ぶが、昔息子の幼稚園の運動会でのこと。お遊戯でも駆けっこでも、自分は息子が見付けられず、「どこだ?どこだ?・・」と言っているうちに終わってしまった。
カミさんは“動物的カン”で、直ぐに息子の姿を見付け、「あそこでしょう!」と言うが、我々男には(自分だけかも知れないが)、子どもが皆同じに見えてしまう・・。
これらも、女は“生む性”だから、より“動物的”なのだろうと思う。
こんな事もあった。昔息子が赤ん坊の時、急病のため救急車で運ばれたことがあった。その時、自分は腰が抜けて・・・。でもカミさんはしっかりしていた。エライ・・!

だから自分は昔から、女性には到底かなわないと思っていた。男なんて、いざとなったら弱い動物・・。偉そうにしているが、いざとなったら尻尾を丸めて、ただ逃げるだけ・・・

昨日、震災を受けた石巻市で80歳のお婆さんが9日ぶりに救助された。もちろん孫の少年の働きが大きかったことは言うまでもないが、それにしても素晴らしい。
強い女性。震災で壊れた建物のどこかで、また“女性”が発見されないだろうか??

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コメント

 こんにちは。
あのおばあ様とお孫様の救出劇は、
素晴らしかったですよね。

 気丈なおばあ様の受け答えも、本当に好きです。それに不謹慎かもしれませんが、
可愛い男子の孫と9日間も二人だけで過ごすなんて、不幸の中にも、どこか幸せな香りがします。

 女は確かに強いところも沢山あります。
否定しません。
だけど、女だって弱いんです。
強い心で抱きしめてほしい時だってあるんです。
それをお忘れなく。

 男性の存在は、時に大変心強いものです。
それも本当です。
ぜひ奥様に確かめてみてくださいね!

【エムズの片割れより】
ゾクゾクッとするコメントをありがとうございます。
確かに男が強い面もありますが、“いざ”という時は、女性の方が腹が据わっている・・。そう思えるのですが・・・

投稿: elinor-marianne | 2011年3月23日 (水) 10:22

男の視野は時間的には短くて一年、長いと十年、場合によっては数十年。空間的には狭くて居住する市町村広くて県乃至国、人によっては世界、度が過ぎると宇宙。女の視野は時間的には長くて一年短いと明日。空間的には広くて町内。だから概して政治家や宇宙物理学者には男が多い。しかし男に家庭の管理をやらせると落第であることがすぐに露見する。女に政治をやらせると台所の視点からなどと馬鹿な事を言う。しかし勿論規格外の女も居る。例えば芸術家や企業家で概してそういう女性は一人で生きる。人に長所とか短所と言うものはない、有るのは個性。個性が時と場所とに適して発揮されると長所と見做されその反対だと短所と言われる、不都合なことだ。従って強い弱いを一概に論ぜられない。

【エムズの片割れより】
なかなか面白い観点で・・・
しかし女性の“カン”には脱帽します。

投稿: yakata1578 | 2011年4月 3日 (日) 11:40

yakata1578さんのコメントを読んで、肩の力が抜けたといいますか、気持ちが楽になりました。 うちの人、真面目、几帳面、倫理観が高いのですが、一つだけ、父親譲りらしいのですけど 色々なことに、怒りっぽいのですよ。周りがちゃんとしてないことって、多いので、イライラするのです。短気を起こしているとストレスがたまり、病気になるのではと、そこを 妻としては悩んでいました。 でも、考え方なのだなぁと思ったら、 私は ほっとして、まあしゃあないかと思っています。
体に良い、おいしいものを作るようにして、ストレスに強くなりように 心がけでいます。 家庭団欒ですね。 yakata1578さん、感謝です。

関係ないのですけど、NHKFMは インターネットを通して 海外では聴けないのですよね。どうも分かりません。  

【エムズの片割れより】
ホホホ・・・。どなたもお悩みのようで・・・
NHKのラジオが10月からNetで流れますが、アクセス制限があるのかな?日本だけ??

投稿: むべ そよ風 | 2011年4月 7日 (木) 09:01

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