「ファナックの国産宣言」
今朝の日経新聞のコラム「企業 強さの条件~ファナックの国産宣言」を読んで、なるほど・・・と納得した。曰く・・・
「企業 強さの条件~ファナックの国産宣言~全てを決める研究開発
工作機械の頭脳となる数値制御(NC)装置で世界シェア6割を握るファナック。富士山のふもと、山梨県忍野村に本社を置く同社は有価証券報告書の事業リスクの項目に「富士山噴火」を挙げる。よほどの天変地異でも起きない限り、この地を、そして日本を離れるつもりはない。
・・・「少ない部品でつくればコストは下がり、信頼性は上がる」。実質的な創業者で名誉会長の稲葉清右衛門(85)はこの言葉にもの作りの基本方針を込める。
まず価格を決定
清右衛門は「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」と言い切る。円高を乗り切るために、多くの日本企業が工場でのコスト削減に血道をあげる。対するファナックの発想は「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」。
ありきたりではない製品をどう生み出すのか。決めるのはまず価格だ。内外約200カ所に置いた保守サービス拠点を通じて市場の変化や顧客の要望を吸い上げ、競合他社に負けない価格を探る。価格から一定の利益を引いて製造原価を算出する。この原価に収めるのが設計の絶対条件。原価に利益を上乗せし価格を決定する手法の逆を行く。
・・・「同じ性能なら世界2位の独シーメンスより1割ほど安い」
・・・・
ファナックの海外売上高比率75%を超えるが、円高の逆風下でも昨年7~9月期の売上高営業利益率が43.8%と過去最高を更新した。
生産も国内に集中する。・・・・清右衛門の長男で社長の稲葉善治(62)は「1カ所でつくるのが一番いい」と強調する。・・・・
価格、開発期間、仕様――。様々なハードルを越える研究者には重圧がかかる。昼夜を問わない研究者の働きぶりは業界の誰もが知る。・・・・
国内でのもの作りを宣言するファナックの姿はむしろ日本企業の一つの可能性を示す。・・・」 (2011/01/12付「日経新聞」1面より~オリジナル記事のPDFはここ)
ファナックという会社は、昔の本社や寮が近くにあったせいか、何となく身近な会社。数年前に山中湖に行ったとき、富士山麓の森の中に黄色いビル群を見たこともある。(ここ) ・・・でも実は何の縁もない。
昔、日経ビジネスという雑誌にファナックの特集があった。もう20~30年も昔の話。その中に、ファナックは新入社員が入社すると徹底的な残業をさせ、個人的な時間を取らせないようにして、今までの人的なつながりを断ち切らせる、という怖い言葉があったのを、今でも覚えている。本社が富士山麓に移ったのも、その延長線上か・・と想像した。つまり会社の業績は素晴らしいが、この会社ほど社員が働く会社、いや働かされる会社は無いのではないか・・・? 要は、この“働く”ということをどう捉えるかだ・・・
給料を貰っているのだから働くのは当然。要はその密度・・・。よく揶揄されるのがお役所。給料は安いが仕事の密度は薄いと・・・。
先端会社の社員は良く働く。だから業績も良い。だから給料も高い・・・。それを良しとする人に取っては理想的なサラリーマン生活。しかし、ほどほど人生を楽しみたい人に取ってはツライ・・。つまり、世間から隔絶された企業村に閉じ込められた、と思う人は勤まらない。
かくいう自分も、昔は同じような境遇にあった。独身時代は工場の敷地内にあった独身寮に住み、食堂が無かったので、休日は社員証をもって工場内に入って工場の食堂で食事をとったもの。そのうちに、工場の敷地内にクラブが出来、帰りにそのクラブで一杯飲んだもの。だから、まさにファナックの忍野村と全く同じだった。
日立製作所も昔は同じだった。日立市の山の手に社宅群が並び、兎平供給と称する会社のスーパーマーケットに家族が日常品の買い物に行った。昔は企業丸抱えが多かった。それを羨ましがられたもの・・・。
でも今の人は・・・・?
話をファナックに戻すと、ファナックはまさにカリスマ創業者・稲葉清右衛門氏の思想が脈々を受け継がれているようだ。そしてそれが活きて業績につながっている。だから会社のリスクは「富士山噴火」と豪語できる。この事は、普通の会社の感覚からすると、信じられないくらい“飛んでもない”ことだ。それほど、事業リスクが無いとは・・・・。
ファナックは普通の会社と何が違うのか?それはリーダーの強さだろう。前に、社長の世襲についてマスコミにたたかれた事があった。でも結果オーライ・・。実績が出ていると、そんな話は吹っ飛ぶ・・・。鳩山さんや小泉さんとはそこが違う・・・?
民主党が相変わらず揺れている。NHKの会長人事も揉めているとか・・・。どれもリーダー不在の典型だ。北朝鮮のようなリーダーも困るが、日本のカリスマ・リーダーの不在・・・。
先のファナックの“有価証券報告書の事業リスク”ではないが、それが現在の日本の最大の“事業リスク”ではないだろうか?
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