「人を大切にする国 デンマーク」
前に「スウェーデン~高福祉国家の仕組み」という記事を書いた(ここ)。その続きで、今日はデンマークである。
当サイトのコンセプトは「へえ~~」。
先日NHKラジオ深夜便で放送した「人を大切にする国 デンマーク 社会評論家 小島ブンゴード孝子」(2010/11/01~02放送)を聞いた。
北欧の国・デンマークは、幸福度世界一だという。その幸福度とは、医療制度と健康、教育、環境、経済的な豊かさなど100件以上のデータをもとに表されるもので、デンマークは178カ国中1番。
デンマークに37年間住んでいる小島さんから、デンマークの福祉の仕組みを聞いた。小島さんの話を少しだけ文字にすると・・・・
<「人を大切にする国 デンマーク」社会評論家 小島ブンゴード孝子>
<「ひとりぼっちにさせない国 デンマーク」社会評論家 小島ブンゴード孝子>
小島さんの話を少しだけ文字にすると・・・・
「幸福度世界一の国 デンマーク」
・デンマークは、誰でもが安心して生活が出来る国。
・税金は高い。初任給位の方でも40数%の所得税がかかる。中年になって生活が安定すれば60%を越える。
・消費税は25%で、世界でも一番高い。全てのサービス、全ての商品に内税で25%入っている。教育活動だけはかからないが、それ以外は例外無し。
・税は高いが国民の満足度も高い。つまり払ったものが消えずに必要な所に回っている。必要な時には自分も社会から見捨てられなくてちゃんと支援してくれる。それがあるから払える。
・出産するとき学生だったので心配したが、当時の社会省のマザーヘルプというところが、収入の少ない所にはちゃんと支援してくれた。出産もタダ、1年分のオムツから赤ちゃんの洋服から乳母車、ベッドまで全て出してくれた。
・デンマークも10年位ごとに政権も代わったし変化もしてきたが、社会の理念は変わらなかった。つまり、人を大切にする、人の資源をフルに活用する、ひとり一人に自立した生活を送ってもらう、という社会制度は変わらない。
・日本国籍だと国会議員の総選挙には投票出来ないが、地方の選挙には国籍に関係無く投票出来る。国籍によっては差別されない。
・高負担は想像を絶する。安心は出来るが生活は厳しい。
・2006年の幸福度世界マップでは、日本は90位だったがデンマークは1位だった。
・日本と一番違うのは、女性がみんな働いていること。女性がオフィシャルに働くことは当たり前。それに、子どももお年寄りも皆が自立している。つまり自分で出来る事は自分でする。親から仕送りを受けるのが当たり前だと思っている学生はほとんどいない。奨学金で足りない部分は自分でアルバイトをして生活費を稼ぐ。女性も経済的に自立している。お年寄りも自分たちの生活は自分たちで。経済的に、親子の間で頼る・頼られるというものはない。
・年を取るほどに幸福度が増す国がデンマーク。
・病気になっても金はかからない。薬代の一部は個人負担があるが、治療・診察・検査・入院費は全て税金。だから“心配だから貯蓄を”というお年寄りはいない。ほとんどの医療機関は公的施設。
・デンマークの人口は551万人。昔は酪農国だったが、今では農業は全人口の4%。今のデンマークはスキマ産業で持っている。世界の大きな国の大きな会社と同じような製品を出しても絶対に勝てない。特殊分野で世界一を狙う。例えば糖尿病の治療薬のインシュリンの世界一の会社はデンマーク。昔は豚の膵臓から結晶を取っていた。それに風力発電のパイオニア。
・人間は一番大切な資源である。その資源は活用しなければいけない。
・1864年にデンマークはドイツ(プロシア)との戦争で、3日間で降参した。そこで一番大切だった豊かな農地を失った。お金や農地は無くなっても、人という資源がまだ残っていることに気付いた。人という資源を活用して国を復興する。そのためには教育が必要で、その時に皆が今後の国をどうするかを考えた。
「ひとりぼっちにさせない国 デンマーク」
・デンマークでは子どもは二十歳位で独立、親から離れる。それ以降は夫婦二人での生活になる。伴侶が亡くなれば一人で生活する、これは当たり前。
・子どもも親も一人での生活に慣れている。子どもは大学生で家を出る。夫婦は45~50歳台位で二人きりになる。子どもたちも近くに住んでいるのでひとりぼっちではない。一人でいることはひとりぼっちとは違う。自分が選択して一人でいるので・・。自分の時間を自分で自由に使えるし、経済的にも独立している。
・定年という言葉はない。元気であれば70歳で働いても良い。そろそろ潮時と思えば、別の仕事に替わっても良い。国民年金は65歳から支給。
・第二の人生(現役時代)でも結構自分の時間をつかって趣味を楽しんでいるので、第三の人生(老後)になったからと言って全く違う人生になるのではない。第三の人生ではボランティアも多い。
・体が不自由になっても、市が高齢者住宅を提供して自立を支援。在宅ケアも完備。市が必要なサービスを提供。ターミナルケアも提供。
・医療との関わりはドライ。医療は治療。それ以上はしない。つまり療養型の病棟などは無い。そこは福祉がカバー。病院は予約を取って行くところ。日常の健康面で頼りにするのは、家庭医。
・介護については、デンマークでは三つの原則がある。「自己決定」=自分らしい人生を最後まで生きるには自分の人生は自分で決める。「継続性」=自分の家でなるべく長く生活出来るように。ライフスタイルの継続性。「残存機能の活用」=残っている体の機能は全部使う。
・デンマークの平均寿命は、日本の場合は女性で85.9歳だが、80.5歳くらい。これはどういうことか・・・。女性は、満足度は高いが家庭や仕事の両立でストレスが多い?決してスローライフではない。
・最近やっと国民が健康に注意するようになってきた。前は、人生一回だから楽しまなければ、と好きなものを食べて、好きなものを飲んで、人生エンジョイして、という人が多かった。だから死因もガンよりも循環器系が多かった。最近は健康に気をつける人が多くなってきたので、これからは寿命が延びるのでは?日本とは健康への意識が違う。
・デンマークでは、長生きしたいという人はまずいない。大切なのは、自分らしい人生を最後まで送ること。
(NHK「ラジオ深夜便」2010/11/01~02放送より)
このインタビューは、司会のアナウンサーまでが、「それでどうなっている?」と身を乗り出して?聞いているのが面白い。小島さんは、日本の事情もデンマークの事情も熟知されて話されているので、話が分かり易い。
デンマークでの生活が、決して羨ましとは思わないが、こんな国もあるということ。しかし「人間が資源」という捉え方は面白い。それにスキマ産業狙い、という国のスタンスも面白い。まさに551万人の“デンマーク株式会社”が、世界の大会社を相手にどう闘うか・・、とも聞こえる。
キーワードは「人が資源」をベースに、「女性が働くのは当然」「自立」・・・
画一的とも見えるが共催主義とも違う。その150年の国の歴史には、色々な議論があったのだろう。1860年代という時期は、日本でいうとまさに明治維新の頃。日本は人口も多かったので明治以来“世界の一等国”を目指した。それでこんなになった・・・!?
まあ目から鱗とは言わないが、北欧諸国の仕組みが段々と分かってきた。勉強になった放送ではあった。
(関連記事)
スウェーデン~高福祉国家の仕組み
| 0
コメント
はじめておたよりしす。
いつも拝見しています。
何故か同感することばかりです。
私自身も毎月約600部くらいのレターを発信している立場にいますが、ヒントをいただくことが多いです。年齢は69歳。パソコンも仕事で使う程度にしかできないので、感心しています。今夜はいろんなことがあって落ち込んでいましたので、禁じられた遊びの曲に昔を思い出して、ゆったりできました。ありがとうございました。
【エムズの片割れより】
コメントありがとうございます。勝手気ままに書いていますので・・・。
でも「禁じられた遊び」は、昔ギターでも弾きましたが心が癒されますよね。
投稿: yu-min | 2010年11月 9日 (火) 03:36
こんにちは デンマークの話興味深く拝読いたしました。日本の消費税は5%と国際的には極めて低いですね。菅総理が改革を実行する度量があるか今試されているようですね。
いわゆる北欧3国は理想郷に見えますが、必ずその国の抱える危機はあるのではないでしょうか。まあ日本のいい点もどんどん評価していきたいですね。
ところでT-1100ですが個別アンテナ(2素子AF320だったかな)をたてて85.1MのNHKさいたまで音のにごりが解消されました!うれしいです!
ただ少々ブリージングがピアノにまとわりつきこれをなんとかしようと思っています。
自宅には週末しか戻れないので帰宅したら
東京タワーにむいているアンテナを少し左
にふって調整しようと思います。
(ベランダなので角度制限があるのです)
深夜便の音はL-02Tですか・・・
非常にSNのよい印象です。アンテナの調整が万全なのですね。うらやましい限りです。
また変化ありましたら連絡いたします。
【エムズの片割れより】
どんなに小出力でも、地元にアンテナがある方は羨ましい・・・。全てはアンテナ入力の質ですね。
この番組はあまりS/Nは良くありません。昼の放送は、57~58dB位取れますので、OKです。でもこれがあまり長続きしない・・・。地元が一番なのですが、当方は近くにアンテナが無い・・
投稿: 風鈴崋山 | 2010年11月 9日 (火) 18:40