FM放送のマルチパス対策奮闘記
自分にとって、NHK FMは、色々なジャンルの日本の歌を放送するので、貴重な音源ソースである。その貴重な音源が、ピアノの音となると背後に「グジュグジュ」「ジュルジュル」というノイズが入り、せっかくの音楽を台無しにしてしまう。
原因はマルチパスというビルなどで反射した電波が一緒に受信される事による歪みなのだが、これが難物。
我が家は東京タワーからの電波にマルチパスが多く、今日はその対策奮闘のメモである。(使用チューナーは、メーカーホーバーホール済みのケンウッドL-02T)
当方は八王子なのだが、今日、今までの東京タワーに向けた5素子とは別に、NHK浦和局(85.1MHz)に向けて8素子のFMアンテナを追加した。結果、今までの浦和局の42dBの電界強度が専用アンテナにより52dBが得られた。マルチパスメーターの振れも、0~140目盛りで、30位振れていたのが、10位の振れに減った。(変調度によって変動するので読むのが難しいが)
問題のピアノを聞いてみた。確かに少しはマシだが、グジュグジュノイズは完全には無くなっていない。でもこれが限度・・・。
マルチパスノイズについて、色々と分かった事をメモしておく。
・マルチパスノイズはピアノの音が一番良く分かる。グジュグジュしていたら、それ。
・原因は、ビルや山などからの遅れた反射波。これが一緒に入ってくると、位相の関係で音がひずむ。
・受信する場所によって、状況は変わるが、一軒家の場合は場所を選ぶ事が出来ないため、アンテナでの対策となる。
・マルチパスを測る機械は、もうアンテナ屋では持っていない。2003年に来て貰ったアンテナ屋は測定器でマルチパスを調べてくれたが、今のアンテナ屋は電界強度計でレベルを測るだけ。
・チューナーにマルチパスの端子がついているものがあり、オシロでX-Yモードで小さい波形になるようにアンテナの向きを調整するのだが、今回やってみた結果、どの局も同じような波形で、アンテナの向きなどでは変化が無く、オシロでは追い込めなかった。
・マルチパス対策をしたチューナーは無い。いや、今月初めて出た。アキュフェーズからT-1100という35万円の製品。
・最近手に入れたケンウッドのL-02Tという、昔30万円もしたあまりにも有名なFMチューナーには、アンテナ信号レベルをdBf単位で直接目視出来る。併せて、マルチパスメーターで、マルチパスの量が一目瞭然。それにより局による電波の状況の良否が分かった。我が家では、東京タワーからの電波は全滅。浦和など埼玉の放送は良好。それで今回浦和を受信。
・そして結果は、マルチパスメーターの振れはなくても歪み感はある。53dBと、電波が弱いせいかも知れない。
・よって、少しでも電界強度を取りたい訳だが、我が家の場合、アンテナからチューナーまで同軸を直結した。ブースターを入れても確かにレベルは上がるが、それ以上に歪みが多くなり(マルチパスメーター)ダメ。具体的には、今TV用に使っているブースターを入れたら、20dBほどレベルは上がったが、マルチパスメーターのレベルも大きく上がってしまってNG。これは、ブースターを入れると、純S/N比的には増幅器のノイズ分が増えるため、かえって状態が悪くなる。納得・・・。(ブースターで物事が解決するのであれば、これほど簡単な事は無いが、それは原理的にあり得ない)
・直結で問題になるのが、ケーブルの質とコネクタ。当然ケーブルは低損失で、最短距離が望ましい。ケーブルの途中接続もロスが多くなるのでダメ。あくまで直結。そしてビックリしたのが、チューナーに接続する部分のコネクタ。今まではプラスチック製の90度方向に出る物を使用していたが、昨日、マジメなコネクタを買ってきた。同軸の心線を直接コネクタの心として使うF型コネクタ。(例:サン電子GR5-2P)これだとオープンな部分が無いので、原理的に捕まえた電波を逃がさない。これに替えたら、驚くほど状態が良くなった。メーターではわずかの差だが、昨夜のNHK浦和は、東京タワーに向けた5素子で、ギリギリの状態で受信していた為か、音の改善度は抜群。よってコネクタも重要。電界強度がギリギリの場合は、とにかくアンテナの信号を何とか“減らさない”ようにするしかない。
・それにしてもマルチパスの状況は刻々と変化する。確かに反射による影響なので、電波の伝搬状況が刻々変化するのは分かる。
昨日の会社の帰り道、高級オーディオショップに寄って話をしてきた。
「アキュフェーズから“マルチパスを低減する「マルチパス・リダクション」”搭載の「DDS FM STEREO TUNER T-1100」(これ)が今月(2010年9月)から発売されるという。定価は346,500円だが幾ら?」
「82掛け」
「マルチパス・リダクションの性能は?」
「今まで受信出来なかった近くのコミュニティ放送局が受信出来たので、効果はある」
「音は?」
「L-02Tを持っているのなら、そっちのが上だと思う。そもそも原理が違う。T-1100は波形をデジタル化して色々やっているので音が変わる。良くも悪くもアキュフェーズの音」
「NHK FMもIPによるサイマル放送が始まるとそっちの方がS/Nが良くて、全て解決?」
「ネットによるサイマル放送は、MP3でいうと128bpsの音、15KHzできちっと切れている。それにサーバーの影響で時々放送が途切れる」
最終的にマルチパス対策チューナーはこれしかないので、検討対象の一つかとも思ったが、それはないな・・・
さっき、無音状態(音楽の始まる直前の数秒)のノイズレベルを測ってみた。(「MP3Gain」で音量を分析しながら、チューナーから出力される放送全体のレベルを基準の89dBに合わせておいて、「mp3DirectCut」で音楽が始まる直前=アナウンサーのスイッチが切れてから音楽が始まるまでの瞬間の数秒間だけのMP3ファイルを作り、「MP3Gain」で分析して89dBへの増幅度=ノイズレベルを見る)
もっともこれは、ほんの一つのサンプルで、刻一刻変わってはいるが・・・
NHK FM東京(アンテナ入力58dB) -58.7dB
NHK FM浦和(アンテナ入力53dB) -55.7dB
(自分が録音に使っているオリンパスのVJ-10の無音入力でのノイズレベルは-64.2dBなので、実に良いバランス・・)
まあ贅沢レベルの話ではあるが、「残留ノイズを気にして電波状況の良い東京タワーを取るか、マルチパスを優先して、多少のノイズは諦めて浦和にするか・・・」。ハムレット・・?
ま、当分は浦和局を受信するけど・・。
しかし電波状態が良いところに住んでいる方は羨ましい・・。ケンウッドのカタログからすると、規格での最高のS/Nを得るには60dBの入力が必要。でも我が家ではそれは無理・・・。しかしこんな受信環境でも、ニュースをじっくり聞くと、ニュース原稿をめくる音が、こんなにもウルサイとは知らなかった。それに体を動かす音もする。アナウンサーは、こんな音は聞こえないだろう、と紙をあちこち動かしているのだろうが、へへへみんな聞こえているのさ・・・・
(例)
今回の“趣味のチューナー問題”だが、そろそろ卒業だな・・・。なぜって、電波の状態が全てなので、もう打つ手がないから・・・。
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コメント
エムズの片割れ様へ
私もアナウンサーまわりの雑音には気になっていましたが、それより音を送り出す裏方のいい加減さに閉口しています。特にミキサーかな?
【エムズの片割れより】
FM放送を良い音で聞こうと思い立ってから、結果的にFM放送のあら探しばかりしています。
グチですが、先日、NHKにお願いしたのですが、なしのつぶては「音楽の前後の各1秒間は黙っていて!」。つまり、音楽が終わらないうちにアナがしゃべり始めるので、音楽を録音した時に困っています。音楽の終わりに、毎回アナの咳払いを聞かされて・・・。
コンサートでは、演奏が終わって余韻(残響)が残るのに拍手する人はいませんが、NHKの数多くのアナは、それと同じ事を繰り返しています。
“なしのつぶて”で実行されない、という事は、何か必要性があるのかな?アナによっては、間を置いてくれる人も居るので、それが救いではありますが・・・
投稿: wolfy | 2010年9月19日 (日) 10:24
23区内で信号レベルも高いのにジュルジュルという音が混ざる
原因がよくわかりました。
自分のはケンウッドのKT-1100Dで、
平屋に住んでいた頃は本当にいい音だったのに
8Fのマンションに越したら全然だめです。
FMって本当はすごくいい音だという事を
知っているだけに残念です。
とても参考になりました。
チューナーの故障じゃないという事がわかっただけでもよかった。感謝します。
【エムズの片割れより】
そうですか・・。2010年9月23日の記事も参考にして下さい。マルチパスの実例をアップしてあります。
対策は、有料の「フレッツテレビ」しか無いですね。光で送られてくるFM電波は、さすがにマルチパスはありません。
投稿: DE | 2011年12月25日 (日) 16:16