少年少女合唱団みずうみの「小さな木の実」
先日ラジオで吉村南/牛島敦子/“少年少女合唱団みずうみ”が歌う「小さな木(こ)の実」という歌を聴いた。良く聞く旋律だが、この二重唱が何とも心地よい。
調べてみると、原曲はビゼー作曲のオペラ「美しいパースの娘」の第2幕と第4幕で歌われるアリア「セレナード」だという。それを元に、海野洋司が作詞、石川皓也が編曲をして、NHKの「みんなの歌」で1971年(大庭照子)、1983年(斉藤昌子)、1995年(蒲原史子)に放送された有名な歌らしい。それに、今でも教科書に載っているらしい・・。少し聴いてみよう。
<吉村南・牛島敦子・少年少女合唱団みずうみの「小さな木の実」>
「小さな木(こ)の実」
(歌劇「美しいパースの娘」から)
作詞:海野洋司
作曲:ビゼー
編曲:石川皓也小さな手のひらに ひとつ
古ぼけた木の実 にぎりしめ
小さなあしあとが ひとつ
草原の中を 駆けてゆくパパとふたりで 拾った
大切な木の実 にぎりしめ
ことしまた 秋の丘を
少年はひとり 駆けてゆく小さな心に いつでも
しあわせな秋は あふれてる
風と良く晴れた空と
あたたかいパパの思い出と坊や 強く生きるんだ
広いこの世界 お前のもの
ことしまた 秋がくると
木の実はささやく パパの言葉
なるほど・・。ビゼーか・・・・。自分のMP3プレヤーの音源を調べてみると、上記の他にペギー葉山、蒲原史子、大庭照子、鮫島有美子の4つがあった。それでつい、今日の帰りの電車の中で、それらを“比較研究”してしまった。
それで大発見!? 鮫島有美子の旋律が、他のものと違う・・。
<鮫島有美子の「小さな木の実」>
「パパとふたりで 拾“っ”た
大切な木“の実” にぎりしめ」
この2箇所の音程が低い。自分が持っている音源の中で鮫島有美子ただ一人が・・・。
楽譜がないのでどちらが正解か分からないが、鮫島旋律は歌うのが難しい・・・
(追:石川皓也編曲の楽譜は下がらない。皆が歌っているもの。しかし原曲及びフランク・チャックスフィールドの編曲は、鮫島さんと同じらしい。つまり鮫島さんは原曲に近い歌い方。何れにせよ、「小さな木の実」は石川“編曲”である)
ともあれ、先の二重唱が何とも耳に優しい。しかも原曲はどうあれ、この歌詞がこの旋律にぴったり・・。
そう言えば、母を歌った歌は幾多あるが、パパを歌った珍しい・・・
パパを歌ったものとして、前に森山良子の「愛する人に歌わせないで」(ここ)を取り上げたが、これはそれに続く2つ目??・・・
それにしても、この2つとも“死んだパパ”を歌っているのが特徴。どうもパパは死なないと歌ってくれないらしい・・・・(←これオトコのひがみ・・)
しかし、原曲を知るとそれを聴いてみたくなるのも人情・・。そして探した音源がこれ・・・。
<ビゼー「美しいパースの娘」から「セレナーデ」>
Bruce Ford /David Parry - Conductor/Philharmonia Orchestra.
「小さな木の実」の旋律と少し違う・・・。おっと間違った。オリジナルのビゼーに対してこの歌の旋律が違うのだ・・・。アリアではなく、歌唱として歌いやすいように編曲している。これがまた絶品・・・・。
独唱で色々と聞いていた時は聞き流していた歌だが、今回聞いた二重唱でハッとした歌ではある。
(2010/07/11追)
Oさんからこの曲にまつわる情報を頂いた。それによると、原曲の「美しいパースの娘」の盤には、このセレナーデはほとんど入っていないという。そして、1958年にフランク・チャックスフィールド・オーケストラが「美しいパースの娘のセレナーデ」という曲名で録音していたという。これが素晴らしいので聞いてみよう・・・。
<フランク・チャックスフィールドの「美しいパースの娘のセレナーデ」>
もしかしたら、この曲を聴いて、「小さな木の実」が出来たのかもね・・・・
なお、この曲が収録されている「学生王子のセレナーデ」というCDの解説にこうある。
「(「美しいパースの娘」は)ビゼーが書いたオペラのひとつです。オペラは1867年にパリで上演されましたが、きわめて不評で、その後、上演されることがありませんでした。しかし、そのまま忘れられてしまうのを残念に思ったビゼーは、そのオペラ「美しいパースの娘」の第2幕の中から5曲を選び、コンサート用に作り直したのです。この「セレナーデ」は第3曲にあったものです。パースはスコットランドの地名で、ビゼーは、スコットランドの詩人ウォルター・スコットの小説を題材にした4幕もののオペラ「美しいパースの娘」を作曲しました。メロディの美しさをストレートに打ち出したチャックスフィールド・オーケストラの演奏が見事です。」
| 0
コメント
エムズの片割れ様
「小さな木の実」はNHKの「みんなの歌」で流されたときから、メロディの美しさに引かれて好きな曲です。鮫島有美子による歌や原曲のアリア、「引き潮」で有名なフランク・チャックスフィールドの曲を聞いても、まるで「みんなの歌」で流された「小さな木の実」が原曲であるかのように思えてしまうのは、最初に聞いたときのメロディが「刷り込まれて」しまうのかも知れません。「みんなの歌」でも元の曲はビゼーの「美しいパースの娘」だと画面に出ていましたが、今回そちらのメロディも聞かせて頂き、また鮫島有美子の一部音程が低いことがわかるというご指摘も、聞いてみるとよくわかりました。いつもながら、面白くかつためになるものと思いました。どうも有難うございました。
【エムズの片割れより】
その通りで、自分も「小さな木の実」をベースに考えてしまいます。でも、単なる1曲の歌ですが、Netで検索してみると、それぞれの楽曲には色々な背景があり、なかなか奥が深いですね。
投稿: 水戸のミッキー | 2010年7月12日 (月) 22:19
エムズの片割れ様
この曲の演奏版を50年間探していました。(たぶんそれくらい)これがフランク・チャックスフィールドだって知り感激しています。
当時私は小学生でしたが、この曲はよく夕方になるとNHKのテレビから、番組の紹介やお知らせの時間帯に流れていたのを覚えています。今回これを聞いて、演奏スタイルや楽器の使い方からすぐにこれが当時聞いていたのと同じものだと分かりました。その瞬間、当時の自分にすぐに戻ることができ懐かしさでいっぱいです。
実は大きな勘違いをしていました。
この演奏は、マントバーニ・オーケストラがやっているものだと思っていました。いつかはまた聞いてみたいと思っていましたので、機会あるごとに調べてみるものの分かりません。彼のおびただしいレコーディングを見ても見つけることができませんでした。彼の演奏する”グリーン・スリーブス”のように緩やかに流れる旋律は、まさにそう思わせるに足るものでした。そして、半ば諦めていたところ、この出会いです。
「美しきパースの娘」の組曲版のレコードを買ってもこの曲はどこにも入っていません。これってほんとうにビゼーの曲?でも、旋律からするとそう思えるし・・・。どうもいまひとつこの曲については何かいままでしっくりとこなかったのです。
でも、ようやくこれでのどに刺さっていた棘が取れました。すっきりしました。
思い込みってほんとうに恐ろしいですね。
つくづく思いました、この50年間。
どうもありがとうございました。
【エムズの片割れより】
素晴らしいフランク・チャックスフィールドの演奏は自分も知りませんでした。これは追記にある通り、ある読者から教えて頂いたもの。
Netは、色々と情報が得られ、素晴らしいですよね。
投稿: ノボコジ | 2011年9月26日 (月) 17:04
この歌には泣きました。歌詞が泣かせます。
旋律も琴線に触れます。
30数年前に大庭照子さんの歌を聴きました。
深い声で心に染みました。
N響の小林研一郎コンサートの折でした。
聴くたびに坊やの身の上が切なくてなりませんでした。今、私の娘たちはともに40代ですが。「父の日の」など幾ばくかの寂しさを託つのではと忖度しております。
亡夫もまた二十歳そこそこで父を失っています。まして幼い日に父を失った方々の寂しさは察するに余りあります。
【エムズの片割れより】
たぶん原曲は、この詞とは内容が違うのでしょうね。でもこの切ない旋律に、このような歌詞を付けた作詞家もさすがです。
投稿: りんご | 2016年6月28日 (火) 11:06
いつも拝見させて頂いております。
時々「みんなのうた」のテキストを購入していたので、もしかしたらこの曲の譜面あるかもしれない?と探したら偶然ありました。
2001年10/11月号に再放送曲として掲載されており、目次に次のように書かれています。
作詞 海野洋司、
作曲 ビゼー(補作曲 石川皓也)
うた 蒲原史子
訳詞ではなく作詞とあること、補作曲と書かれていることから、原曲を少し変えて「小さな木の実」という曲したのではと小生にも思えます。
尚、楽譜の右上には「石川皓也 編作曲」とあります。
また「二重唱」の楽譜も偶然見つかり、ソプラノパートは「みんなのうた」と同じで、ここには「編曲」としか書かれていませんでした。
何かの参考になるかと思い書かせていただきました。
【エムズの片割れより】
貴重な情報をありがとうございました。この歌の原典について、後の人の役に立つと思います。
投稿: 大手街 | 2016年6月28日 (火) 23:20