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2010年6月14日 (月)

小惑星探査機「はやぶさ」の回収成功・・・

今朝の新聞トップは、小惑星探査機「はやぶさ」帰還のニュースだった。
7年間、60億キロ(地球―太陽間の40倍)にも及ぶ大宇宙旅行の末、地球に帰ってきた100614hayabusa1 「はやぶさ」。この話題を分かり易く伝えていたのが、6月10日のNHKの「クローズアップ現代」。非常に分かり易い内容だったが、Netでは事実と違う点も指摘されている。例えば通信が途絶えた後、偶然に捕捉出来たとの放送内容だったが、実際には捕捉は60%の確率であり、決して偶然や奇跡ではなかったという。(写真はクリックで拡大)

「・・・「はやぶさ」探査機は、受動的にも安定となるよう設計されており、現在のコーニング運動は、最終的には +Z軸まわりの純スピン運動に収束していきます。・・・
「はやぶさ」の軌道の不確定性を考慮しても、むこう半年から1年間の間は、臼田局のアンテナをイトカワに指向させることで、探査機をビーム幅内に捕捉できるはずで、この間に探査機を見失う可能性はごく少ないものと考えられます。・・・・
累積確率が示すように、ほぼ2006年の末までに60% 以上の確率になることがわかります。・・・」
(JAXAの2005年12月14日付サイト(ここ)より)

しかし新聞やニュースでは「満身創痍の奇跡の帰還」とか、「離陸後に燃料漏れで制御不能になり、通信も完全に途絶したが奇跡的に復旧し・・・」(読売)とか、表現が華々しい。何よりも自分は「偶然」という表現に、違和感を覚える。そもそも開発費が127億円もかかった「はやぶさ」プロジェクト。そんな偶然に頼るようなプロジェクトではなかったはず。だから、宇宙科学研究所(JAXA)のサイトにも、国の金を使っているためか、このようなキチンとした説明責任を果たしている。それなのに、取って付けたようなマスコミのお祭り騒ぎはどうも頂けない・・・。

それに、このプロジェクトが惑星のサンプルを持ち帰る事がミッションだとすると、どんな苦労をしても、それは当然ではないか。むしろ、機器の故障等でサンプルを持ち帰る事が出来なかったら、それこそプロジェクトの大失敗で、税金の無駄遣いと言われても当然だ、と思っていた。そもそも、どの位の確率でサンプルを持ち帰れる計画だったのか・・・。そして今回は、その想定内のトラブルだったのか・・・。もっと言うと、発生したトラブルを想定していなかったこと自体が、設計ミスではないのか・・・?「予想外の・・・」は、まさに“想定しなかった”という設計ミス。
しかし、この自分の発想はどうも違うらしい・・・・。
100614hayabusa 同じJAXAのサイトに「ミッション達成度(ここ)」というページがある。
それによると、今日までに「カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収」まで達成しているので、既に400点。(「難易度の高いミッションが山盛りゆえ、通常の探査ミッションを100点満点とすると、「はやぶさ」のミッション合計点は500点満点になる」:川口PMここ)より)
つまり、このプロジェクトは、サンプルを持ち帰るだけの目的ではなかったのだ・・・。

この成功により、100億円で請け負ったというNECは名を挙げた。これは世100614hayabusamaker 界に誇れる。同時に日本の科学技術が名を挙げたということ。その意味では大いにお祭り騒ぎをして良いと思う。
でも帰還の立役者、イオンエンジンの担当及び全体取りまとめはNEC(NEC東芝スペースシステム)らしいが、左記のように、このプロジェクトや衛星には日本の多くの企業が携わっている。その意味では日本の技術の結集といえよう。(左図は2010/06/15付「日経新聞」p3より)

少しイヤらしいが、メーカーのミッション達成度はどうなのだろう。イオンエンジンのNECは、4基が全滅。そして知恵を絞って何とか1基を動かしたという。よって△? そして姿勢制御装置3基のうち2基が壊れたというので、NEC東芝スペースシステムは△、それに燃料漏れで化学エンジン12台も全損したというので、化学エンジンの三菱重工は×。サンプル採取では、弾丸を撃って砂を巻き上げる装置は動かなかったというので住重等は×・・・・。逆に話題が無かったメーカーは無事に動いたというわけで○。何とも、故障を起こし、満身創痍のメーカーが話題となり、無事に動いたメーカーが話題から取り残される・・・。良くある話だが、何か解せない・・・・。完璧に動いたメーカーをもっと話題にせねば・・・。
でもここで大きな問題がある。当初設計は4年で地球に戻るもの。それが燃料漏れの事故で帰還が7年に伸びた。重量に制限のある衛星では、冗長設計など出来ないはず。よって寿命で壊れたというイオンエンジンを筆頭に、どの機器も設計寿命を超える大変な力を発揮した事になる。その意味では、これら機器は皆○かも・・・・

一方、“何でこんな大金をこんな不要不急な事に使うのか?”という指摘もある。これは先の事業仕分けのスパコンの「何で2位ではいけないのか」という実に文学的な発想に似ている。(ゴルフのブービー賞ではないが、2位を狙う方が、(1位以下にコントロールしなければいけないので)よっぽど1位を狙うよりも難しいのに・・・) これは価値観の問題なので解はない。

でもせっかくの130億円。大いに国中でお祭り騒ぎをして、この成果を日本人全体で謳歌しようではないか?(W杯初戦でカメルーンに勝った日本チームの話題に負けるな!)
そうすれば、子どもたちもそれに刺激を受け、理科系に進む人が増えて、未来の日本の科学技術の底上げが可能になるかもね・・・・

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