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2010年6月27日 (日)

谷嶋早苗作曲~混声四部合唱「いわし雲」

先日、「死んだお母ちゃん」というものすごく音が悪い歌を紹介したが(ここ)、今日はそれに負けないくらいローカルな合唱曲を紹介しよう。
大谷浩之作詞、谷嶋早苗作曲の「いわし雲」という混声四部合唱の曲。

<混声四部合唱「いわし雲」>


「いわし雲」
  作詞:大谷浩之
  作曲:谷嶋早苗

いわし雲が流れて行くよ
サナトリアムの屋根の上を
ひしひしと身を寄せあってゆくよ

去年おれはあの雲を見たよ
死に近い母のかたわらで
おれの家と隣の屋根の
間の空に
うっすらと流れて来たのを見たよ

母は戦争の頃をうなされていたよ
食べものと病気の永い息子のことを

母は知らないんだよ
戦争を起こした奴を

おれは縁側に立って泣いたよ
いわし雲がきえて行くまで

いわし雲が流れて行くよ
サナトリアムの赤い屋根の
しずかな午後の光の中を

いわし雲が流れて行くよ

この歌は1957年(昭和32年)頃の作曲との事で、時代背景はまさに昭和30年代から40年代の、いわゆる「うたごえ運動」の時代である。某地方大学のあるサークルの部室で生まれた極めてローカルな曲。そして、その部屋で20年ほど歌い継がれ、そして消えていったという・・・・
この音源は、1966年(昭和41年)の冬、20人ほどの合唱で、地方放送局のスタジオで収録され、ソノシートに残されたもの。

前に「グリークラブの思い出」(これ)という記事を書いた。
ここで書いたように、合唱団には、自前で創作した「持ち歌」を持っている場合がある。一番有名なのは、「ウ・ボイ」という男声合唱曲。これは自前ではないものの、(ここ)で書いたように、「長い間、関西学院グリークラブの門外不出の秘曲であり、楽譜が出回らなかったという。」
この「いわし雲」もそれと同様に、楽譜が出回らなかったマイナーな曲、という意味では“秘曲”なのかも知れない。楽譜の公式な出版もない・・・

この曲がメジャーな合唱曲とならなかったのは、いわゆる反戦歌だったことにあるのかも知れない。確かにその当時は反戦歌で良かった。しかし時代が変わって、いわゆるマジメな合唱団にとって、「オレ」という表現や「戦争」という言葉が一般の合唱団では歌いづらかったのだろう。特に現代の合唱団では・・・

音楽は、(軍歌を代表例に)その当時の時代の要請によって作られ、そして忘れ去られていくもの。これは仕方が無いことではある。
でもそれぞれの心の中にいつまでも生き続ける旋律はある。その意味で、自分にとって、この旋律はいつまでも残っている名曲なのである・・・・。

最後に、同じ時に録音された「休暇中のトム」という曲を聴いてみよう。作詞・作曲は「いわし雲」と同じである(たぶん・・)。この歌も戦争がテーマ。当時のベトナム戦争だ・・・

<混声四部合唱「休暇中のトム」>
作詞:大谷浩之、作曲:谷嶋早苗(たぶん・・・・)

(関連記事)

グリークラブの思い出

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コメント

1947年団塊です
空をみあげると秋の空に いわしぐも。。

口をついてでたのが 
「いわし雲が 流れて行くよ・・」というフレーズ
気になって 検索をかけてみました さすがに インターネットです
見事に 歌詞を探し当て 音源まで提供してくれまして すっきり

大学のサークルで この混声四部歌いました ソロの少し下がり気味音程も 同じで 雰囲気までも思い出さしてくれました

どういう趣旨のボードかも知らずに 書き込んだしだいです

ありがとう ございました

後藤清(神戸市)

【エムズの片割れより】
この記事にコメントが入るとは思ってもいませんでした。
生まれが自分と同じなので、同じような時期に、オリジナルではない他の大学で歌われていたとは、知りませんでした。いつ頃歌ったのでしょう?
でもこの歌が、まだ消えていないことを知って、嬉しくなりました。ありがとうございました。

投稿: 後藤清 | 2013年9月22日 (日) 17:27

1951年生まれです。
 ふとこの曲が目にとまりました。懐かしいと言うより、今でも思い出しては一人フルコーラスを歌っています。どこかで歌いたいぐらいですが、この曲を歌う場というものはなさそうですね。
 私は1970年前後に関東の大学にいましたが、その大学で生まれた歌ということで、大学のグリークラブ「もずコール」というサークルが、学園祭や寮祭などでよく歌っていました。いつも感動して、私もすぐに覚えたものです。
 因みに、当時私は寮に入っていまして、関東甲信越の寮連の交流の機会があってよく参加し、私の大学はこの『いわし雲」、同じ関東の群馬大学は『赤い花白い花』を歌っていたように記憶しています。群馬大学の『赤い花白い花』は、NHKのみんなの歌で、ビッキーズという二人の女の子が歌って有名になり、その後女性の歌手たちが歌い継いできました。『いわし雲』はその後聴く機会もないですね。
 さらに余談ですが、『赤い花白い花』は、1番の歌詞が「赤い花つんで あの人にあげよ」となっていますが、世に出る前は「赤い花つんで あの娘(こ)にあげよ」でしたね。
 余談もすぎてすみません。あれこれ思い出すものですから。

【エムズの片割れより】
いやはやビックリ!
この歌をフルコーラスで歌える人がいるとは・・・
完全に過去の歌ですが、まだ生命を保っていたのですね。
今の現役生も、既に忘れてしまった歌だろうに、嬉しいことです。

投稿: 高橋虫麻呂 | 2019年3月26日 (火) 00:35

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