「都心のホームレス 3割超知的障害か~医師ら調査」
先日の朝日新聞に「都心のホームレス 3割超知的障害か~医師ら調査」という少しショッキングな記事があった。曰く・・・
「都心のホームレス 3割超知的障害か~医師ら調査
東京都心のホームレスの3割以上は知的機能に障害があるとみられていることが16日、精神科医や臨床心理士らで作る研究チームの調査でわかった。精神疾患4割以上にあった。知的機能を含むホームレスのメンタル面に関する専門家による初の実体調査という。ホームレス施策に障害者支援の視点も必要だと同チームは指摘する。
池袋駅周辺で路上生活を送る人たちを支援する研究チーム「ぼとむあっぷ」が、昨年末に調べた。本人の同意が得られた167人を対象に面接調査や簡易知能検査をした。平均55歳で全員男性。最終学歴は小学校が2%、中学校が56%だった。
その結果、軽度の知的障害がある人が28%、中度の障害の人が6%だった。知的障害が軽い人の精神年齢は9~12歳程度で、ものごとを抽象的に考えるのが難しい。中度では6~9歳程度で、周囲の助けがないと生活が難しい。
精神科医の診断で19%にアルコール依存症、15%にうつ病が認められるなど、41%の人に精神疾患があった。
チーム代表の精神科医・森川すいめいさんによると、周囲に障害が理解されず、人間関係をうまく結べないことで職を失うなどの「生きづらさ」が、路上生活につながった可能性があるという。知的障害により生活保護の手続きを自発的に取ることができなかったり、精神疾患により気力が下がったりして、路上生活から抜け出せない現状がある。森川さんは「障害に応じた支援策が必要」と指摘する。(岡崎明子)」(2010/05/17付「朝日新聞」p34より)
この記事を読んで、前に石井筆子の映画「筆子 その愛」を見に行った時、この映画を作った山田火砂子監督(78)が挨拶で言っていた言葉を思い出した。(ここ)
「このトシになると娘を引き取っても、とても世話ができない。だから絶対に障害者の施設は必要だ。親が生きているときは何が何でも世話をするが、親が死んだ後は、子供は誰を頼ったら良いのか? 今、刑務所に入っている人のうち、23%が知的障害を持っている人。このカネ・カネの世の中に、障害者が一人で生きて行く方法は無い。・・・・」
その時は、刑務所に入っている人の23%が知的障害を持っているという話にビックリしたものだが、この新聞記事はあの監督の話と内容は同じだ。
特に、「親が生きているときは何が何でも世話をするが、親が死んだ後は、子供は誰を頼ったら良いのか?」という言葉は重い・・・・。
頼れる人が居なくなった障害者は、社会に受け入れられなくなって、無銭飲食で(衣食住のある)刑務所に入ったり、またはホームレスになったり・・・・。まさにこの新聞記事通りか・・・。何とも、“世界に冠たる経済大国ニッポン”が泣く・・・・・
話は飛ぶが、先日、NHKラジオ深夜便で「絶望からよみがえるこころ~NPO法人JEN事務局長 木山啓子」(2010/05/11放送)を聞いた。その中で、木山さんが難民で貧困にあえぐ国から日本に帰ってみると、衣食住に不自由のない日本人が、何でこんなに不機嫌なのだろう、と感じるという。電車の中で、ちょっとよろけてぶつかっただけで怒られたり・・・。結局、こんな些細なことでも怒れるほど、日本人は豊かなのかも、と言っていた。
そう・・・、我々は、自分たちに与えられているこの環境が“当たり前”だと思って生活している。それに、今の日本では“食べることに困る”という感覚がない。でも、ちょっと外を見れば、年老いた知的障害者がホームレスをしている・・・。日々の食うことに困っている・・・。
日本の社会全体がこれら障害者に対して、もう少し温かい目を向ける事は不可能なのだろうか? そんな人たちに対して、我々はもっと何かする事は無いのであろうか・・・
何とも自省させられるショッキングなレポートではある。
(関連記事)
石井筆子の映画「筆子 その愛」を見て
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コメント
心が痛む話です。知的障害と認められるのはIQが75以下です。それも自分か家族が役所の福祉課に申請して、大変面倒な手続きをしなければ障害者年金が貰えません。
IQが75から90ぐらいでも親が早くに亡くなったりして、社会へ放り出されると仕事が出来ず、ホームレスになったり、盗みをして警察の厄介になったりします。いずれも自己申告しないと障害者年金も生活保護も貰えない為に起こる悲劇です。
中学卒業の時、就職先は世話をしてもらえますが、仕事も出来ず、人間関係も上手く結べないために辞めざるを得なくなります。
行き場の無い障害者を収容する施設が全く足りていないのです。自立支援法が出来て大きな収容施設は作らない事になってしまったのです。栄養が良くなって障害者が早死にをしなくなった為に足りないのだという人たちが居ます。グループホームを作って地域で普通の人たちと共に暮せばよいのだと、小泉政権は言ったのですが、グループホームも作られて居ないのが現状です。知的障害者は自分で声をあげられません。小泉さんも竹中さんも10日で良いから路上生活をしてみれば良かったのにと思います。健康で文化的な最低限の保障をする義務が政府にはあると思うのですが、鳩山さんも一度真冬に路上生活をしてみればよいのにと思っています。
投稿: 白萩 | 2010年5月20日 (木) 00:27
白萩さん
同感です。政治は勿論ですが、ユニクロを筆頭に、すかいらーくやオムロンなど、障がい者雇用に熱心な企業もあります。
社会全体のそれらへの理解が、底上げされると良いのですが・・・。
投稿: エムズの片割れ | 2010年5月23日 (日) 21:07