中村元の「般若心経」(7/7)
中村元先生の「般若心経の講義」を、7回に分けて聴いてみる。
この連続記事は、1985年4月から9月まで、NHKラジオ第二放送で行われた全26回の連続講義「こころをよむ/仏典」 (CDはこれ)の「第12回 空の思想-般若心経・金剛般若経」の部分を、『中村先生の声』と『読み下し文』、そして『中村先生の説明』を、この放送を活字化した、前田専学先生監修の「仏典をよむ3 大乗の教え(上)」(これ)を元に味わっていく。
「なお、ここで改めてサンスクリット原文から現代語訳したものを掲げておきましょう。
<中村元訳「般若心経」>
全知者である覚った人に礼したてまつる。
求道者にして聖なる観音は、深遠な智慧の完成を実践していたときに、存在するものには五つの構成要素があると見極めた。しかも、かれは、これらの構成要素が、その本性からいうと、実体のないものであると見抜いたのであった。
シャーリストラよ、この世においては、物質的現象には実体がないのであり、実体がないからこそ、物質的現象で(あり得るので)ある。実体がないといっても、それは物質的現象を離れてはいない。また、物質的現象は、実体がないことを離れて物質的現象であるのではない。
(このようにして、)およそ物質的現象というものは、すべて、実体がないことである。およそ実体がないということは、物質的現象なのである。これと同じように、感覚も、表象も、意志も、知識も、すべて実体がないのである。
シャーリプトラよ。この世においては、すべての存在するものには実体がないという特性がある。生じたということもなく、滅したということもなく、汚れたものでもなく、汚れを離れたものでもなく、減るということもなく、増すということもない。
それゆえに、シャーリプトラよ。実体がないという立場においては、物質的現象もなく、感覚もなく、表象もなく、意志もなく、知識もない。眼もなく、耳もなく、鼻もなく、舌もなく、身体もなく、心もなく、形もなく、声もなく、香りもなく、味もなく、触れられる対象もなく、心の対象もない。目の領域から意識の領域に至るまでことごとくないのである。
(さとりもなければ、)迷いもなく、(さとりがなくなることもなければ、)迷いがなくなることも無い。こうして、ついに、老いも死もなく、老いと死がなくなることもないというに至るのである。苦しみも、苦しみの原因も、苦しみを制することも、苦しみを制する道もない。知ることもなく、得るところもない。それ故に、得るということがないから、諸の求道者の智慧の完成に安んじて、人は、心を覆われることなく住している。心を覆うものがないから、恐れがなく、顛倒した心を遠く離れて、永遠の平安に入っているのである。
過去・現在・未来の三世にいます目ざめた人々は、すべて、智慧の完成に安んじて、この上ない正しい目ざめを覚り得られた。
それゆえに人は知るべきである。智慧の完成の大いなる真言、大いなるさとりの真言、無比の真言は、すべての苦しみを鎮めるものであり、偽りがないから真実であると。その真言は、智慧の完成において次のように説かれた。
ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ボーディ スヴァーハー
(往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ。)
ここに、智慧の完成の心が終わった。」(前田専学監修「仏典をよむ3 大乗の教え(上)」より)
ここに絵文字による「般若心経」を挙げておく。(写真はクリックで拡大)
これを読んでいると、何か涙が出てくる。その時代、文字を読めない人が、この絵を頼りに心経を唱え、暗唱していたのだろう。
それほどに般若心経には“力”があるらしい。
お経には、色々な付き合い方があるという。読む、唱える、見る、書く、等々。だから例え文字が読めない人でも、単に唱えるだけで御利益があるという。(具体的な御利益って何だか分からないが・・・・)
我々リタイア(間近かの)サラリーマンにとってみると、現役時代のような肩を怒らせての生き方は必要無い。これから必要なのは、平和なこころ、安穏なこころ・・。
それを我々の心から引き出すのに、これらのお経は役に立つように思う。何度も書くが、般若心経は難しい。でも良いのだ。単に唱えるだけでこころの平和が保たれるなら、上の絵文字のように、素直に唱えるだけで良いではないか・・。難しく一文字一文字を解釈しないで、その通りを黙って受け止める事も許されるような気がする。
幸いに暗唱は出来るので、これから何度口にするか分からない。まあそのうち、何かが分かって来るかも知れないので、黙ってそのまま受け入れることにしよう・・・。
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「般若心経」勝手帖-03 全文
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コメント
はじめまして。
実はこのたび「仏典」をテーマに文章を書く関係で
このキーワードで検索しているうちに、
こちらを覗かせて頂くことができました。
勉強させて頂きました。
ありがとうございました。
このブログも仏典がテーマでしたが、
面白かったですよ。
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http://ameblo.jp/kiku-tan/
【エムズの片割れより】
コメントありがとうございます。なかなか仏典の記事は読んで頂けないもの・・・。中には読まれる方もおられる事を知ってホッと(?)しました。
投稿: 千葉直樹 | 2010年6月12日 (土) 11:06