小津安二郎監督の映画「麦秋」を観て
先日、NHK-BSで放送した、小津安二郎監督の映画「麦秋」を観た。なるほど、これが小津作品か・・・と改めて・・。(写真はクリックで拡大)
物語の詳細はWIKI(ここ)にあるが、28歳の娘(原節子)を中心に、ひとつの家族を描く。家族は老夫婦、長男夫婦とその息子二人、そして紀子という娘の7人家族。次男は戦争で亡くなっている。紀子が28にもなって嫁に行かないため、周囲が心配。一つの結婚話が進むが、相手は四国の名家の次男だが40歳の初婚。老夫婦の父親は何も言わないが、母親は40歳という年齢に不満・・・。近くに、家族同様に付き合っている戦争で亡くなった次男の友人がおり、現在は長男と一緒の病院に勤めている。数年前、その奥さんが亡くなり、小さな女の子が残されて、お袋さんが育てている。
その友人が秋田の病院に転勤になる前の夜、挨拶に訪れた紀子に、友人のお袋さんが 「虫の良い話だけど、あんたのような方に謙吉のお嫁さんになっていただけたらどんなにか良いだろうと、そんな事を思ったりしてね・・」と、つい別れの最後の言葉として言ってしまう。それを聞いた紀子は「私でよかったら…」と言い、後妻を受け入れてしまう。お袋さんは夢ではないかと、大喜び。しかし家に戻って報告を受けた長男は怒り、母親は「可愛そう・・」と言う。
しかし紀子の決意は固く、結婚に進む。「40までフラフラしている人より、子供があっても落ち着いている人の方が良い」と・・・。
“事件”は、友人のお袋さんから「本当は貴方が欲しい」と言われて、即断即決してしまう場面だけ。それ以外は、淡々と日常生活が続く・・・。
まあこれを映画の“味”として味わえるかどうかだ。先日の「アバター」がこんな映画の対極にある。
この映画が封切られたのが、昭和26年だという。出てくる場面が何もかも自分の子供の頃の風景・・。しかも映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のような“作られた画面”ではない。鎌倉の自然の風景。特に家の中の場面が何とも懐かしかった。昔自分が住んでいた家、そのまま・・。それに映画に出てくる幼い兄弟が、まるで自分と兄貴のような感覚で見た。昭和26年というと自分は4歳。まさに映画の下の子供と同じ年頃・・・。そして可笑しかったのが、大人3人で夜、ケーキを食べているシーン。そこに息子が寝ぼけてフラフラとやってくる。それっ、とケーキをちゃぶ台の下に隠して、皆んなそ知らぬ顔・・・。寝ぼけた少年は、ごまかされてトイレに・・・・。実に我が家でもあっただろう光景だ。実は自分の兄弟は、皆“寝ぼけ癖”があって、毎晩のようにフラフラとトイレにたっという。もちろん次の日にその記憶は無い・・・。
シルバー世代には懐かしいこんなシーンも、今の若い人は退屈に思うだろう。あまりにも動きが少ないと・・・。
60年も前の映画なので、音も悪く(滑舌(かつぜつ)が悪く)、最初はセリフを聞き取るのが大変。でも、何かあるとチョコッと顔を出す近所付き合いなど、都会では見られなくなったゆったりとした光景・・・。
まあゆっくりと、こんな映画を見ながら幼い頃を思い出すのも一興かな・・・、と思いながら見た。自分はまだ小津安二郎の作品は「晩春」「麦秋」「東京物語」しか観ていないが、「秋日和」も録画してあるので、後でゆっくりと観ることにしよう。
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コメント
小津安二郎、小生の出身高校の遥か先輩です。でも、時代が違う為か、彼の映画には、余り共感出来ません、世評高い「東京物語」も、どうもピンと来ません(あの、端正な画面には、それなりの美学があるとは思いますが)
先日観ました山田洋次「おとうと」は、少しカメラの位置などが「これは小津さんか?」と思わせるカットが幾つかあったように感じました。山田さんは、小津さんの遺髪を継ぐ映画作家だと思いますが、幾つになっても庶民目線を失わないという点で、小生はより共感できるのです。
投稿: リュウちゃん6796 | 2010年2月15日 (月) 22:50