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2010年1月31日 (日)

韓国映画「母なる証明」を観た

カミさんのリクエストで、韓国映画「母なる証明」(これ)を観た。見終わったとき、何とも言葉が出なかった。軽々しく感想など言えない雰囲気・・・・

Image01971 物語は、韓国のある村の貧しい母と一人息子。その息子には知的障害がある。(ただし映画にも買ったパンフレットにも、「知的障害者」という言葉は出てこない) それだけに純粋無垢で、“小鹿のような目”と言われている。その息子がある晩、殺人事件の現場に居合わせたことから、逮捕される。物証は近くに落ちていたゴルフボールただ一つ。でも知的障害のため、警察官の敷いたレールにそのまま乗ってしまい、供述調書に拇印Image02772 を押してしまう。警察は“100%終わった”と・・・。しかし息子は殺人など出来る人間ではない・・・と、母親が真犯人を追って村の中を探って行く・・・・(写真はクリックで拡大)

これ以上は(ネタバレになるので)書かない。確かにこの映画はサスペンスドラマではあるが、“韓国の母”と称されるほどの大女優だというキム・ヘジャの存在感が大きい。
映画のキャッチフレーズは、「最も“謎”に満ちているのは、人間そのものである――。「この子を守るのは私しかいない・・・」 殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追っていく母親の姿を極限まで描き出す“ヒューマン・ミステリー”の最高傑作が誕生した!」
なるほど・・・。そしてポン・ジュノ監督からの言葉として、
「誰にでも「母親」がいます。そして誰もが、母とは何かについての確かな考えを持っています。母とは、私たちを最も大切にしてくれる人間であり、私たちに対して、最も優しい存在であると共に、愛情故の苛立ちも感じさせる存在なのです。息子を母の関係は、すべての人間関係の基本です。・・・・」と、パンフレットにあった。
そしてポン・ジュノ監督はこうも言う。「・・・脚本を読んだキム・ヘジャさんも、こうおっしゃっていたんです。「この映画の中の母親は、まるで動物の母親のようだ。向かってくる相手に対して牙をむき、威嚇して子どもを守ろうとしている」と。・・・・・」

なぜ母親がこれほどまでに息子をかばうのか。それは普通の社会生活を営めない、言われても反論できない知的障害者という弱い立場だから・・・・。だから小さいときから教え込んだ。「バカにされたら反撃」「一度殴られたら、二度お返しをしろ」。これがドラマの地下に深く流れる・・・・

その弱者ゆえ、警察に捕まっても、言われた通りの供述書が出来てしまう。警察の誘導尋問通りになってしまう・・・。
ふと、映画「筆子 その愛」の記事で書いた山田火砂子監督の話を思い出した。(ここ
「このトシになると娘を引き取っても、とても世話ができない。だから絶対に障害者の施設は必要だ。親が生きているときは何が何でも世話をするが、親が死んだ後は、子供は誰を頼ったら良いのか? 今、刑務所に入っている人のうち、23%が知的障害を持っている人。このカネ・カネの世の中に、障害者が一人で生きて行く方法は無い。だから仕方なく、無銭飲食をしたりして、刑務所に居場所を求める。高齢者も同じだ。それなのに、何だ!今の障害者自立支援法は!・・・・」

この映画は確かにサスペンスだが、一方では韓国の知的障害者の問題、そして犯罪で、いとも簡単に障害者が犯人扱いにされていく事を指弾しているようにも感じた。実は日本も全く同じではないか、と思うが・・・。
非常に奥が深い映画で、「韓国では、公開10日で200万人を超える今年最高の大ヒットスタートを記録!」というコピーも分かる。

このような映画なのに、館内はガラガラ・・・。世は未だに韓流ブームが続いている。それなのに、映画館はガラガラ・・・。これ、何かヘン・・・
先日観た3Dの「アバター」(ここ)のような映画の、ちょうど逆側にこのような映画がある。つまり、一度見て「ああ面白かった・・」で消えていく映画と違って、心の奥深く入り込む映画・・・。
もちろん人によって、“自分にとっての名画”は千差万別。問題は“自分の名画”をどう見付けるか・・だ。今回もカミさんの“勘”が当たった・・・。仕方が無い。今後もしばらく、カミさんの“勘”に頼って観る映画を選ぶことにしようか・・・。

(関連記事)
石井筆子の映画「筆子 その愛」を見て

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コメント

片割れ様へ
私の少年時代に久子ちゃん殺し通称島田事件」という殺人事件があり知的障害に近い赤堀被告が冤罪にあったことがありました。
そのときの私の立場は、被害者の姉と同じクラスだったので複雑な心境でした。

投稿: wolfy | 2010年1月31日 (日) 21:20

wolfy さん

日本でも現実に有り得るのですね。しかし、この映画のように、母親がかばってくれるならまだしも、誰もいない場合は、即刑務所です・・・。それをこの映画は指摘していました。

投稿: エムズの片割れ | 2010年1月31日 (日) 23:02

片割れ様へ 続きで失礼します。
アマゾンを調べていたら本がありました。
不在証明―島田幼女殺害事件 佐藤 一 (著)
興味があったらどうぞ!


投稿: wolfy | 2010年2月 1日 (月) 12:19

先日、山田洋次監督の「おとうと」を観てきました。
この映画、市川昆の同名の映画に因み、彼に捧げられているらしいのですが、小生は、山田さん自身の「男はつらいよ」へのオマージュのように思われました。
寅さん=釣瓶、さくら=吉永小百合、博=小林念持、結婚式での失態=第1作のさくらの見合いの席での失態、博の愛の告白=蒼井優への大工さんの愛情表現、、、

山田さん、まだま感性は瑞々しいと思いました。

投稿: リュウちゃん6796 | 2010年2月 2日 (火) 23:22

wolfy さん
ありがとうございます。

リュウちゃんさん
そうですか。機会があったら見てみます。

投稿: エムズの片割れ | 2010年2月 3日 (水) 22:12

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