ボニージャックスとダークダックスの「ちいさい秋みつけた」
昨日が雨だったせいか、散歩に出ると今日は真っ青な空。林の紅葉が美しい。(我が家の北側には林が広がっており、その向こうに多摩川が見える・・・)
毎週、朝日新聞の土曜版に載っている「うたの旅人」という記事。今週はサトウハチロー作詞「ちいさい秋みつけた」だった。この記事は、かなりの取材をしているらしく、歌の生まれた背景、裏話が聞けて楽しい。
「誰かさんって私のこと
・・・1955年(昭和30年)の秋、ハチローは1階の書斎の床に敷いた万年床に寝そべったまま西向きの窓を見上げた。目に映ったのは、夕日を浴びて深紅に染まる高さ8㍍のハゼ木の葉だ。この年の秋は寒気の訪れが早く、陽光に透けた葉の赤色が鮮やかだった。
ハチローは、NHKから11月3日の放送芸能祭に発表する歌の作詞を依頼され、「大人も子どもも歌える抒情歌を書きたい」と考えていた。「全山紅葉の秋でなく、我が家の小さな庭にしのびよる秋を書こう」とも思っていた。そのとき、このハゼを見たのだ。完成作でハゼは3番の歌詞にあるが、最初の草稿には1番に出てくる。
中田喜直が曲をつけ、文化の日、13歳の少女歌手伴久美子の声でラジオに流れた。放送はこの1回きりだ。歌はそのまま忘れられた。
だが、ラジオを聴いて「背筋に電流が走った」ほど感激した人がいた。キングレコードのディレクターだった長田暁二さん(79)だ。「ヒットがなくクビになる寸前だった」だけに飛びつこうとした。だが、ハチローはライバル社のコロムビアの専属だ。長田さんは以後の7年をやきもきしながら待ち、ハチローがフリーになった62年にレコード化を持ちかけた・
ところがハチローは、この歌のことなど全く忘れていた。長田さんが歌詞を書いて見せると、「あ、これはこれの詩だ。なかなかよくできてるな」と言った。同年、この歌を含むLP「サトウハチロー童謡集」じゃ発売された。・・・
LP向けに長田さんが声をかけたのは、早稲田大学グリークラブから生まれた4人組ボニージャックスだ。トップテナーの西脇久夫さん(73)もラジオでこの歌を聴いて感動し、自分たちで編曲してレパートリーに入れたという。録音現場に居合わせたダークダックスも「おれたちにも歌わせて」と言って吹き込み、競作となった。
ソロでつなげる形で歌うボニーの「ちいさい秋みつけた」は、同年のレコード大賞童謡賞を受賞した。西脇さんは「これでボニーはジャズから日本の抒情歌に方向転換した。ぼくらの運命を変えた歌です」と告白する。この半世紀以上、ボニーがこの歌を歌わなかったステージはない。
ハチローを見て長田さんは「悪ガキがそのまま大人になったような人」と感じた。西脇さんが「うつろな目の色って何ですか」ちハチローに聞くと、「おれだってわかんないよ」という答えだった。長田さんも西脇さんもハチローの書斎を訪れ、ハゼの木を見た。・・・・」(朝日新聞2009/12/5 e1ページ「うたの旅人」より)
上記のように、この歌はサトウハチローの自宅にあったハゼの木がモデルという。そして、記者 が文京区弥生のハチローの旧宅を訪ねたとき、隣の水野陽一さん(68)が「誰かさんとは、私です」「北向きの部屋で『曇りのガラス』からハゼが見えるのはうちしかありません」と言ったとか・・。
「この詩はハチローが子どもの目で見た風景と言われるが、水野少年を 見て着想したのかもしれない。ハチローの没後、亡くなった妻房枝さんから「誰かさんってあなたのこと」と言われたという。」
そして樹齢80年のそのハゼの木は、8年前に文京区の礫川(れきせん)公園に移植されたという。(写真はクリックで拡大)
なるほど・・・、詩は何も無いところからは生まれない。何かモデルが無ければ・・・
でも曲は幾ら調べてもその素性はなかなか分からない。この名曲「ちいさい秋みつけた」は、詩と同様に、中田喜直の曲が素晴らしい。何ともいえない素朴さが・・・
調べてみたら、自分のこの曲の音源は17つあった。そのうちボニージャックスが4つで、ダークダックスが2つ。もちろん自分が一番好きなのはボニージャックスのオリジナルの音源。これは、前に「中西龍の「にっぽんのメロディー」と「ちいさい秋みつけた」」(ここ)という記事を書いた。その記事の中西龍の放送に埋め込んである。なおこの歌のタイトルだが「ちいさい秋みつけた」「小さい秋みつけた」「小さい秋見つけた」と3種類ある。しかしJASRACの登録は「ちいさい秋みつけた」である。
今日は、競作となったというダークダックスと、ボニージャックスの別の編曲で聴いてみよう。
<ダークダックスの「ちいさい秋みつけた」>
<ボニージャックスの「ちいさい秋みつけた」>
「ちいさい秋みつけた」
作詞:サトーハチロー
作曲:中田 喜直
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
めかくし鬼さん 手のなる方へ
すましたお耳に かすかにしみた
よんでる口笛 もずの声
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
お部屋は北向き くもりのガラス
うつろな目の色 とかしたミルク
わずかなすきから 秋の風
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
むかしの むかしの 風見の鳥の
ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ
はぜの葉あかくて 入日色
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
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