英国人の目から見た日本の経済政策
先日の日経新聞の「知日派の見方」という囲み記事に、英エコノミスト誌 前編集長のビル・エモット氏の意見が載っていた。日本人とは違う視点がなかなか面白い。
「知日派の見方
エコノミスト誌 前編集長 ビル・エモット氏
Q:日本の新規国債発行額は来年度も44兆円近くと巨額にのぼりそうです。
A:深刻な景気後退を経たのだから、新規国債の増発は正しい。景気を下支えするための公的支出は必要だ。・・・・
・・・
Q:予算編成では何が重要でしょう。
A:公共工事から、子ども手当てや失業手当など福祉重視への転換を進めることだ。理由は2つある。まず、最低所得層の人々は政府から受け取るお金を全額使い切る可能性が高い。貯蓄する余裕がなく、100円支給すれば100円使う可能性が高いので、景気の下支えには有効だ。
第2は日本社会の格差が広がりすぎ、福祉政策が必要になったこと。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で貧困層が拡大しているのは日本だけだ。最低賃金も日本はOECDで最低レベル。かつてあれほど平等社会だった日本が今や英国以上の格差社会になったのは劇的な変化だ。
Q:格差はなぜ広がったのでしょう。
A:引き金は橋本政権下で始まった非正規雇用の弾力化だ。産業界の採算性を高めるために、賃金が低く低福祉で、法的にも守られない非正規雇用やパートを容認した。短期的には有益な改革だったが、長期的にはマイナスの方が大きかった。
Q:日本の民主党はマニフェスト(政権公約)に縛られ、苦労しているように見えます。
A:英国ではマニフェストに拘束力がない。書かれているからといって法案可決が保障されるわけではないし、政府が公約を破ることは日常茶飯事だ。民主党が高速道路無料化を実現させなかったとしても、英国では至極一般的なことだ。
Q:民主党はマニフェストを破ることを極度に嫌っています。
A:それは来年夏に参議院選挙が控えているためで、英国とは違う事情だ。英国で選挙は4~5年に1回ぐらいで、公約を守らなかったといって有権者からすぐに処罰されることはない。
議会制民主主義は一般人の政治への無関心を体現したものだ。政治にさほど関心がない市民は自分に代わって政治判断する代表を選挙で選ぶ。市民がそれほど政治に関心があるなら直接民主主義に転換し、高速道路無料化も子ども手当てもすべて国民投票で決めればいい。民主党は政治判断を委ねられた政党として、もっと自信を持って政策に優先順位をつけるべきだ。・・・・・」(日経新聞2009/12/2p5より)
日ごろ疑問に思っていた事の解(?)が載っていた。日本は累進課税の率が高いため、共産国以上の平等社会だと昔は聞いていたが、先日の記事のように(ここ)、現在は先進国で一番貧困率が高いという。それは、派遣制度がキッカケだったとは・・・。確かに正社員と派遣社員とは、同じような仕事をしていても、いわゆる「身分」が違う。まさに現実は、どの企業にも身分制度が存在している。
それに民主党のマニフェストの議論が面白い。確かに、選挙前に幾ら書いても、それはその時点での「方針」であり、時間の経過と共に周囲の状況が変われば、方針・施策も変わってくるのは仕方がないこと。議員一人ひとりも同じで、公約を掲げて当選したとしても、それを完全に守っている人がどれだけいるか・・・
それを現在の政権は、来年の参議院選怖さに、マニフェストの一字一句をまさに金科玉条のごとく守ろうとしている。それはそれで立派なのではあるが・・・。(でもさすがに、高速道路無料化は、国民の人気が無いといって、軌道修正するようだが・・・)
しかしよく考えてみると、そもそも民主党に票を入れた国民は、マニフェストに書かれた全ての項目に賛成して投票したわけではなかろう。例えば、5つ項目があったとすると、ある人は3つは賛成だが2つは反対。でもまあ3つのために民主党に投票しようか・・・、というのが現実では?
よって、民主党も書いたことに100%囚われるのではなく、よく国民の意見を聞きながら進めて行けば良いように思う。
「直接民主主義に転換し、高速道路無料化も子ども手当てもすべて国民投票で決めればいい。」という意見も面白い。そりゃそうだ・・・。“事業仕分け”で世論が盛り上がったのだから、まさに高速道路無料化も子ども手当ても、国民投票に付したら、これまた面白い結果が出るかも・・・
先日読んだ半藤一利氏の「幕末史」でも、明治維新の新政府は、外国の国作りを見るために数年に亘る大きな使節団を送り、その間、日本の政治は止まった、と書かれていた。現代でも各国は日本と同じような悩みを持っている。それらの対応を勉強して、少しヒントを貰うのも一法。もちろん国情は違うが、上記のような外国人の目から見た意見も、たまにハッとさせられることもあるので・・・。
せめて外国からバカにされないような鳩山政権の指導力を期待したいところだが・・・。
でもこの景気はどうにかならないものかね・・・・
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コメント
経済と言うものは全く予測のつかないものだと思います。経済学者が大金持ちになれないのをみればわかりますね。
ほどほどの金持ちになるのは病気をしない事が1番です。2番はコツコツ貯める事です。金融機関のお兄さんに毎月集金に来て貰い、積み立てをします。小額でも年数が経つとかなりの額になります。継続は力です。景気対策の政府案に協力して使ってしまうと、後で泣きをみます。誰も恵んでくれません。自分がブランドでもないのに、ブランド物を無理して買うのはモッテノホカです。会社が儲かるだけで本人は貧乏になるだけです。見栄を張らずにコツコツ貯めておきましょう。これが堅実な家庭経済だと私は思います。3度のご飯が食べられれば貧乏ではないのです。
投稿: 白萩 | 2009年12月 6日 (日) 00:38
白萩さん
まったくその通りですね。既に悟りの境地??
あの世へは何も持って行けない、と考えると気も楽ですね。
昨日、昔の仲間の飲み会があって、84歳の大先輩が、規則正しい毎日を紹介してくれました。朝6時に起きて、体操、散歩、写経、・・。
段々と欲しいもの(物質的なものだけでなく)が無くなるのも、年の功でしょうか?できれば健康だけは欲しいですが・・・
投稿: エムズの片割れ | 2009年12月 6日 (日) 22:47
エムズ様
悟りの境地なんてとんでもない事です。喧嘩大好き人間です。喧嘩は頭が活性化して脳に良い運動だと思っています。
節約は嫌いですし、エコなんてあまり考えていません。60歳になった時、決めた事があります。不味い物は絶対食べない。嫌いな親戚と付き合うのはやめる。家の電気は明るくする。目が悪くなりますから、怪我防止で普通の家より明るくしてあります。経済はどん底になれば上がってきます。昭和21年から24年ぐらいまでの貧乏を思えば今は天国です。あのころはご飯がなかった。お米の変わりにダニがわいたキザラが配給になり、カルメ焼きを嫌になるほど食べたので,歯や骨が悪くて困っています。それでも皆明るく元気に生きていました。皆平等に貧乏でしたからねぇ。本題と離れてしまってすみません。
投稿: 白萩 | 2009年12月 7日 (月) 13:59
白萩さん
ハハハ・・・。いやいや立派ですね。そう自分に素直になればストレスも溜まらない!
我が家も「いつも暗いのだから電灯くらい明るくなければ・・」がモットーでしたが、最近はカミさんに負けておとなしくしています。カルメ焼き・・・懐かしいですね。たまに買ったりします。
投稿: エムズの片割れ | 2009年12月 8日 (火) 21:59