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2009年11月10日 (火)

「人間の狂気と平和」

雑誌「大法輪」の今月号(2009年12月号これ)、コラム「仏教の眼」に「人間の狂気と平和」という記事があり、心にズシンと応えた。曰く・・・

人間の狂気と平和
   寛永寺一山円珠院住職 杉谷義純

今年は第二次世界大戦がヨーロッパで勃発してから70年を迎えた。・・・
・・・・(中略)
ユダヤ人であるというだけで、ナチスドイツによってこのアウシュビッツに収容され、命を奪われた人々は110万人に達するという。想像力に乏しい私には、聞いただけでは実感としてとらえられないほどの大きな数字である。ところが、収容所に展示されていた5万を超える遺品の靴の山を見た途端、その膨大な量にホロコーストのすさまじさが迫ってきた。
アウシュビッツ展示博物館は、戦争の悲惨さと人間の狂気の記憶の場として整備されたという。そして誰れもが、このような残虐行為が20世紀の半ばに行われたことに驚き、同じ時代に二度と起り得ないことと思ったに違いない。ところが1970年代のカンボジアでは内戦が起り、実権を握ったポル・ポト政権は、反政府行動を起こす危険があるとして、インテリ層、技術者、資本家、僧侶など300万人を殺害した。一方、アフリカ中央部に位置するルワンダでは、1990年にやはり内戦が勃発、フツ族よるツチ族の大量虐殺が行われ、100日間で100万人もの人々が命を壊れたのである。
さらには1993年、ボスニア・ヘルツェゴビナで内戦が勃発、20万人に及ぶ犠牲者を出した。この紛争では、セルビア人による非セルビア人殲滅作戦、いわゆる民族浄化が明るみに出た。ナチスドイツが行った民族浄化を、忌わしい人間の狂気として二度と蘇ることのないよう「記憶の場」として、アウシュビッツが発信し続けてきたのにもかかわらず、今、この我々の時代にこの殺戮が起きたのである。
・・・・・・(中略)
広島・長崎への原爆投下は、ホロコーストと同様、人間の狂気の仕業ではないかと思う。いくら戦争の早期終結のためとか、自国兵士の犠牲を少なくするためとの弁明があっても説得力に欠ける。それゆえ異なる構造の原爆を矢継ぎ早に投下した、隠された意図に戦慄を覚えるのである。
・・・(中略)
法華経の中に「十界(じゅっかい)」という、人間の心の実相を説明している言葉がある。「十界」とは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天、声聞(しょうもん)、縁覚(えんがく)、菩薩、仏の十の世界をいう。私たちは通常人間の心を持ち、思い悩んだり喜んだりしているが、怨みを抱けばたちまち修羅と化して暴力を振る。空腹になって自制心を失えば畜生も驚く行動も取りかねないのである。しかし地獄界に堕ちたといえども、これらの十界にはそれぞれ他の九界も具わっているので、救われる一縷(いちる)の望みもあるという。これを十界互具(じゅっかいごぐ)という。まさに私たちの心は正気と狂気の境を常に彷徨(さまよ)っているといわねばならない。
いくら科学技術が進展しようと、また人権思想が浸透しようとも、人間の本質は少しも変っていない。その行動を自制する「愚者の自覚と懺悔の心」をいかに保てるか。平和は決して他人事ではないのである。」(「大法輪」2009年12月号p36より)

ルワンダやサラエボについては、前に映画を見て記事を書いた(下記)。その記事を改めて読んでみると、確かに100万人の虐殺、20万人の虐殺・・と書いている。しかし、何と実感が伴っていないことか・・・。上のコラムの筆者と同じように、あまりに多い数にピンと来ない。でもそれは単なる星の数ではない。人間の命の数なのだ・・・・(ポル・ポト政権についてはまだ不勉強・・)

半藤一利氏は「昭和史」で、日本の太平洋戦争への道は「国民的熱狂」が一因だと指摘している(ここ)。よって、日本人だって他人事ではない。その結果、太平洋戦争の日本人の犠牲者は310万人・・・。
それに対してアウシュビッツでの犠牲者110万人、カンボジア内戦300万人、ルワンダ内戦100万人、ボスニア内戦20万人という規模・・・。これらは日本人の310万人とは違い、戦って死んだのではなく、殺戮された数・・・・

人間はもともと狂気を持ち合わせている。しかしそれを自分の意思で抑えられるから「人間」なのだ、と良く言われる。しかしそれは一応「満ち足りている」状況下でようやく保たれている平静であり、パニックなどの状況下にあっては意外と脆いかも・・・・
我々も残された人生、そのような狂気を出さずに済めばそれに越した事は無いのだが・・・。
そのために、年金は大切にせねば・・・(←ン?? ←人間、金が無くなると人間性を失うので・・!?)

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