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2009年9月18日 (金)

「スウェーデン」高福祉国家の仕組み

昨日の日経新聞に「経済教室~安心確保 活力と両立を スウェーデンモデルの核心学べ」という日本総合研究所理事の湯元健治氏の記事があり、大いに勉強になった。曰く・・

「高福祉は高負担を通じて企業の国際競争力を弱め、国民生活をも貧しいものにしてしまう――。わが国ではこうした認識が一般的であろう。厳しい国際競争にさらされる企業経営者にとって、先進国の中で最高水準の法人税負担に加え、高福祉国家に向け今以上の負担がのしかかれば、日本を逃げ出すしかあるまい。
一方、高福祉で有名なスウェーデンは、今年の世界経済フォーラムの世界競争ランキングで4位(日本は8位)である。国民負担率70%を超える高負担と高い競争力を両立させる、「スウェーデンパラドックス(逆説)」ともいえる状況は、なぜ可能なのか。・・

(以下抄録すると・・・)
・スウェーデンは一般のイメージと異なり、倒産も解雇も当たり前に生じる厳しい資本主義競争社会である。
・企業は社会保険料負担が高い反面、労働者には賃金しか支払わず、仕事がなくなれば即座に解雇する。その賃金には通勤手当も扶養手当も無い。企業の健康保険組合もなく、ブルーカラーの解雇には退職金も支払われない。
・賃金体系は、連帯賃金政策と呼ばれる政策の下で企業の生産性格差にかかわらず同じ職種なら賃金が同じという「同一労働・同一賃金」が実現している。こうしたシステムは生産性の低い企業の整理淘汰を促す一方、平均より生産性の高い企業には超過利潤をもたらし高い国際競争力を生み出している。
・解雇された労働者には、他の業種・企業へ強力な転職支援を行う「積極的労働市場政策」が採用されており、教育・職業訓練、一時的雇用、就職支援、所得保障給付など次の仕事につくための多様なプログラムが提供されている。生産性の低い企業・業種から高い企業に積極的に労働移動を促すことで、産業構造の高度化と人的資本の質的向上が同時に達成できた。その結果、同国は高い国際競争力の下、高い生産性と持続的な経済成長を記録。税や社会保険料などの高負担と高福祉が可能になった。
・高負担の内訳は、法人税負担は26.3%(日本は39.5%)だが、企業は赤字でも支払い賃金の31.4%もの社会保険料を払っている。日本の3倍近いが、年功序列賃金や退職金負担がないため、労働コスト(賃金+福利厚生費+税・社会保険料)は日本と同程度で、国際的にも高くない。個人所得には31.4%の地方所得税と25%の付加価値税がある。これは日本の感覚では低所得者には重いが、スウェーデンでは社会保障給付が所得比例となっているため、労働市場に積極的に参加しなければ最低限の給付しか受け取れない。よって比例的な負担は逆に労働意欲を高めると認識されている。
・同国は19世紀の終わりから急速な工業化の過程で急激な出生率の低下に直面した。その時採られた少子化対策が、所得再分配を目的とする貧困対策ではないと位置付けられ、ミーンズテスト(資産調査)の排除を原則としたことが今日の制度の原点となった。
・この政策は、当初は人々を従来の生活基盤から切り離し転職を強制する非人間的発想の政策だと批判された。しかしその後のスウェーデンの現実が評価を一変させた。それは人々を職歴・学歴の拘束や失業の恐怖から開放する「人間中心」の政策だとみなされるようになったのである。
・最大の財源である地方所得税は、地方議会で議論・決定されている。受益の対価である負担を国民の選択の自由と責任に委ねる仕組みこそが政府への信頼を生み、安心と活力の両立を可能にするのである。・・・」(2009/9/17付 日経新聞より)

前に民放TVで、“スウェーデンの消費税25%がなぜ国民に受け入れられているか”について見た事がある。(ここ
それによると、男も女も、とにかく働く。そして税金は国家に貯金している感覚だと聞いた。老後は国がキチンと面倒を見てくれるから、貯金も必要無いし、安心して働ける社会・・・
確かにスウェーデンのGDPは日本の1/10だというので、そのまま適用・・というワケには行かないが、でも参考にはなるだろう。

新聞によると新民主党政権に国民の大きな期待が寄せられており、鳩山内閣の支持率は7割を超えるという。そして、TVでは新たな閣僚の新施策への動きが、次々に報道されている。
この湯元さんの記事を読んで感心したのは、スウェーデンでも、色々な制度が導入された“その時”は、必ずしも国民は受け入れてはいなかったという点。
もう選挙も終わった。来年の参議院選挙がもう始まっているとも聞くが、出来れば目先の人気取りに目を向けるだけではなく、数十年後の次の世代(子供たち)に、「あの時に出現した民主党政権が今の躍進国家日本を作った・・」ナンテ言われると良いのだが、期待し過ぎかな・・・?
(この記事は勉強になるので、全文PDFを(ここ)に・・・)

(参考記事)
「子ども1人に月10万円支給したら?」~大和証券 清田会長の話

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コメント

北欧の国づくりと、日本国憲法が目指しているものが同じと感じませんか。
それにしても愚民化教育を行い、国民を騙し盗んだ「自民党・官僚政治」の解体、実に痛快です。
新政権は、国民全員で応援し、支援してゆくべきです。
「『おバカ教育』の構造」(阿吽正望著 日新報道社)を読むと、前政府の無能と誤りが明瞭に分かります。まさに、目からうろこの本です。国民全員が読むべきです。
若者の学力を低下させ、不登校やニートにし、国家を衰退させた自民党・官僚政治の傲慢と愚かさは、許しがたいものです。
民主党が新しい日本を作るのではなく、マスコミを含めた国民自身が、民主党を支えて新しい社会を作る心構えが必要です。民主党の挫折は、国民の挫折です。

投稿: トム | 2009年9月18日 (金) 23:29

お蔭様で日経新聞の記事を読ませていただきました。基礎知識がないので理解できないところもありましたが、民主党を知る上で大いに参考になりました。
連帯賃金制度とは、業種別の最低賃金制のようなものでしょうから、当然生産性の低い企業が淘汰されるのはわかるのですが、その結果生じる失業者を、生産性の高い企業が吸収するというところが、いまひとつ分かりにくい所です。結果として、全体の生産性が落ちてきて、国際競争力は下がる・・・?
民主党のしようとすることに対し、財源がどうの、国際競争がどうのといっていたのでは、これまでと何も変わらないではないですか。
国際競争力のために、真っ先に人件費を削ることを考えたり、人件費の低い海外に出て行くことを考える日本は、スゥエーデンのやり方を参考にしてもらいたいと思います。
その意味でも、トムさんのご意見には大賛成です。

投稿: 周坊 | 2009年9月19日 (土) 11:08

たしかにそうですよね。生産性の低い企業の社員が失業者になって、生産性の高い企業が吸収すると、生産性が逆に下がってその企業が淘汰されて・・・、という悪循環になるような気がします。それとも、エリクソンのような生産性の高い企業は、国中のエースだけが結果として残る仕組みがあるのでしょうか?
企業間のレート(時間単価)が同じというと、従業員の待遇は企業によって変わらない?インセンティブは?・・・
もう少し他の資料で勉強しないとスウェーデンの仕組みは分かりません・・・。

投稿: エムズの片割れ | 2009年9月19日 (土) 20:36

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