「どうして“大好き”は嬉しい?」~養護学校教諭 山元加津子さんの話
NHKラジオ深夜便「こころの時代」「身障者が教えてくれたこと 養護学校教諭 山元加津子」(2009/9/1~2放送)を聞いた。(自分は、毎週(日)に前の週の放送を通勤用MP3プレヤーに転送して聞いているので、聞くのが1週間遅れるのである)
このインタビューで、山元さんは養護学校での2つの事例を挙げて「どうして“大好き”は嬉しい?」について話をされていた。曰く・・・
高校2年のしょう君が食べるのは、肉だけ。決して野菜やご飯を食べない。周囲は、学校を卒業する前に何とか野菜を食べさせたいと思うが、無理強いすると発作で倒れてしまう。
「かっこちゃん(山元さんの愛称)、“大好き”は嬉しい?」「そうだね」「嫌いは悲しい?」「そうだね」「ボクがキュウリ食べたら嬉しい?」「嬉しいかな~」
ある日、しょう君が一人で頑張ってキュウリを一つ食べてくれた。「しょう君、キュウリを一個食べました。かっこちゃん、しゅう君大好きです」・・・・
どうして“大好き”は嬉しいのか・・・。大好きという気持ちは、たくさんの人がさせようと思っても越えられなかった事を可能にしてしまう力がある。人は生まれたとき、否、受精卵の時から「大好きは嬉しい」事が作られているのでは、と思った。
かおりちゃんは中学2年の女の子。言葉が話せない。会った最初の頃は、事情を知らなかったので話しかけた。しかし、「アと言って」と言ってもアの口の形だけはするが、息が漏れて声にならない。
そしてお母さんに言われた。「先生、私はかおりがしゃべれることは一切望んでいないんです。私はかおりが障害を持った時から、一言で良いからママと呼んでくれたら・・、それだけを願ってきた。けれども小学生までに言葉が出なければ、もう出ない。中学生になって出る事は無い・・。スクランブル交差点の真ん中で迷子になっても、誰を探すわけでもなくポツンと一人で立っているこの子を見たときに、しゃべるなんていう事はもう考えない、と思った。練習はこの子を苦しめるだけ。先生も、期待しても後でガッカリするだけなので止めて下さい」・・・
それから、かおりちゃんと一緒に居るうちに、かおりちゃんが私の真似をするようになってきた。私は髪の毛をクルクル遊ぶクセがあるがそれを真似たり・・。ある時、机の上に置いてあった本がドサッと落ちた。私が「アーアア」と言ったら、私の顔をじっと見て「アーアア」と言った。かおりちゃんがしゃべった! 「ママと言って!」「ママ・・」
お母さんに言っても信じてくれないと思ったので、「今日遊びに行っても良いですか」と電話した。・・・「今日かおりちゃんがしゃべったんです」と言うと、お母さんの顔が険しくなって、「先生に言いましたよね。私はかおりがしゃべるなんて一切望んでいないし、止めて下さいと言いましたよね」「本当にしゃべったんです。かおりちゃん!ママと呼んで!」そしたらお母さんの顔をじっと見て「マーマ」と言った。そうしたらお母さんの目から涙が溢れ出て、かおりちゃんをぎゅっと抱きしめて「かおり、ありがとう・・」と。
そしてお母さんは言った。「かおりが先生を大好きという気持ち、先生がかおりを大好きという気持ちが奇跡を起こした」・・・
それで「人が人に気持ちを伝えることは簡単な事ではない」と気が付いた。「相手の事が大好きにならないと気持ちは伝えられないし、相手が自分の気持ちを知りたいとか、聞きたいとか、そういう関係でないと気持ちは伝えられない」と分かった。
そして“大好き”という気持ちが人間になぜ備わっているのだろう、と思った。それは「私たちは、大好きが嬉しい」というものが生まれる前から備わっているのではないかと、養護学校で出会った沢山の子供たちから教えられた。・・・・
<かおりちゃんの話>
Netで見ると、山元加津子さんは大変に有名な方らしく、本もたくさん出されており、講演にも忙しい。そして映画も作られたとか・・・
自分はこの放送を聞いて初めて知ったが、何よりも障害児に自分の目線をキチッと合わせている姿に感動した。それに、その声も52歳とは到底思えない(失礼!)可愛らしさ・・・。
しかも、山元さんがここで言われていることは、決して障害者に対してだけではなく、親子・夫婦・恋人、その他の人間関係全てで言えること・・・。
この山元さんの姿は、到底努力して成るものではない。天性というか、それこそ生まれた時から備わっていたものだろう。(トンマな所もあるらしいが・・)だから我々一般ピープルはとても真似は出来ない。せめて、山元さんが目指している所を、どうバックアップできるか・・・、であろう。
テーマは重い。凡人の我々は、この山元さんのこの話に、どうコメントしたら良いか分からない。とにかく皆でこの「話を聞く」ところからスタート・・、だろう。
自分としては、今年の「こころの時代」の番組の中でも、ピカ一の話だったように思う。全体を聞かれたい方は下記でどうぞ。
<身障者が教えてくれたこと 養護学校教諭 山元加津子(1)>
<身障者が教えてくれたこと 養護学校教諭 山元加津子(2)>
最後にNetで見つけた幾つかのサイトを紹介して今日の記事は終えよう。(山元さんの“爪の垢を煎じて飲む”ために、どうしたらそれが手に入るか、誰か教えて欲しい・・・)
(関連サイト)
「山元加津子と仲間たちのページ」は(ここ)
山元加津子さんのblogは(ここ)
講演予定は(ここ)
映画「1/4の奇跡~本当のことだから~」の自主上映会の予定などは(ここ)
なおYouTubeには、たくさんの講演会や映画の関連動画がアップされている。
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コメント
おはようございます!
初めて、コメントいたします。
すばらしいですね~。
とってもよくわかるし、そして、詳しい、ラジオも聴ける。
お見事で、ほんんとに、感動しました。
ありがとうございます。
投稿: Olivia Candle Sunshine | 2009年9月10日 (木) 05:43
Olivia Candle Sunshine さん
コメントありがとうございます。
恐れ多いお言葉です。
当blogも始めてからもう3年にもなりました。だいたいパターンが決まってきた気がします。我ながら良く続くものだと思っていますが、最近は「趣味」と割り切っています。
あれも書きたい、これも書きたい・・という時期もありますが、書くことが無い、という時期もあります。まあ肩を怒らせないで、マイペースで・・と考えてはいますが・・
でも“本を読むにしても、TVを見るにしても、どこかに行くにしても”、今までの漫然と過ごしていたのが、「意識的」になった事は確かで、これがblogのメリットかなと思っています。
でも他の人のblogを見に行く時間は全くありません。いつも時間に追われていますが、ヒマより良いかな・・と思っています。何せ「毎日が日曜日恐怖症」なので・・・
またヒマがあったら当サイトにも寄って下さい。
投稿: エムズの片割れ | 2009年9月13日 (日) 12:54
はじめまして。
かっこちゃんの声を三年経った今でも聴けるようにして下さり、ありがとうございます。
大切なことをたくさん届けて頂いたように思います。
お礼まで☆
【エムズの片割れより】
このファイルがお役にたっているようで、何よりです。何処かから苦情を頂くまで、このまま置いておきますね。
投稿: はらちん | 2013年2月 3日 (日) 09:22