村上たかし著「星守る犬」というマンガを読む
カミさんから宿題を出された。Blogネタも兼ね(?)、村上たかしの「星守る犬」というマンガ(おっと、これはコミック?)を渡されて、感想を言えという。
自分は日ごろ殆どマンガは読まない。でも仕方なく(?)読んだ。今日はその話・・・
「星守る犬」とは“犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表す”という。(巻頭から) 物語は、林道わきの放置車両内で、遺体発見。男性の遺体は死後1年~1年半、足元の犬は死後3ヶ月。このずれは・・・?
夫婦と女の子のごく普通の家庭。そこに犬は拾われる。時が経つとともに、最初は可愛がってくれた女の子もオトナになって不良化してしまい、いつも散歩に連れて行ってくれた「おとうさん」も、散歩の時間が「ひるま」に変わる・・・。
そして、おかあさんから「本気で分かれてほしいの・・」「持病をかかえて職を失ったあなたをね、支えていくほどの強い想いが無いの」「いつもみたいに“おまえの思うようにしろ”と言って」と言われ・・・・
そして残されたおとうさんは、全てを引き払って犬と一緒に、車で故郷への放浪の旅に出る。そして何もかも無くなったあと、おとうさんはガソリンが無くなるまで車を林道を奥まで進め、そして死を覚悟した時、「そうそう、体が動くうちに・・・」と犬が出られるように車のドアを開ける・・。
おとうさんは死ぬが、犬はそれが分からない。それから1年、犬はおとうさんに話しかけ続けるが、おとうさんは答えない。そして、犬が力尽きた時、おとうさんが現れる。
「おとうさん!!!もう!まちくたびれちゃいましたよっ!!」「じゃあ行くか」「あ!ひさしぶりに、さんぽですか!!」「・・・みたいなもんだ」・・・と二人で天国へ・・・
この本の後半は、“おとうさん”の遺体を処理したケースワーカの「日輪草」という物語。
親がわりに育ててくれた祖父母が、子供の時に犬を飼ってくれた。「私が犬を可愛がったのは最初だけ」だったが、祖父母が亡くなったとき、「すべての血の繋がりを失った私の傍らに犬がいた」「そのぬくもりにしがみつきながら私は悟った。あの日、祖父は、この時を慮ってこいつを家族の一員に迎え入れたのだと・・・」
そして犬が死んだ時「私は、私の犬に何をしてやったのか?」「もっと遊んでやればよかった・・・」「無理に引っ張らずに気の済むまでガードレールやら縁石のにおいをかがせてやればよかった・・・」・・・
筆者は「あとがき」でこう言っている。
「拙い作品、最後まで読んで下さってありがとうございました。自分で書いてて何ですが、作中の「お父さん」は、こんな結末を迎えなくちゃならないほど悪人じゃありません。ちょっと不器用だけど、普通に真面目なタイプ。ただ、ほんの少し、家族や社会の変化に対応することを面倒くさがったり、自分を変えることが苦手だったり・・・・というだけで、昔なら、いたって平均的ないいお父さんです。しかし、今ではそれが十分「普通の生活」を失う理由になり得るようで、本当につまらないことになってきたなあと思うのです。ちやほやしろとは言いませんが、普通に真面目に生きている人が、理不尽に苦しい立場に追いやられていくような、そんな世の中だけは、勘弁してほしい。と、やるべきことすらちゃんと出来ていないダメな僕は、切に思うのです。・・・・・」(村上たかし著「星守る犬」あとがきより)
色々な考えるテーマを我々に与えてくれるこのマンガ・・・。でもまさに筆者が言いたいことがこの「あとがき」に書かれている。
そう、どこにでもあるような「普通の家庭」が、今はリストラというありふれた事象でいとも簡単に崩れていく理不尽・・・
そしてもう一つのテーマが、犬のけなげさ・・・・。昔の忠犬ハチ公が、また映画になって話題になっているが、犬は飼い主をただ待つだけ・・・・。それは哀しい・・・。でも飼い主は、要らなくなったと、保健所に・・・・
さらっと読めるマンガではあるが、犬を飼っている人にとっては、犬の飼い主を決して裏切らないけなげさに、再度ハッと気付かされる物語である。自分もフト反省した。散歩で、クンクン匂いを嗅いでいる時は待っているツモリだが・・・・
この本は、カミさんがたまたま今週急病で入院している息子の見舞いに本を買おうと本屋に行ったとき、山積みされていたそうで、犬の話だからと買ったという。それを自分でも走り読みした結果、自宅用にもう一冊買って来たという。
Netで見ると、朝日新聞(ここ)と読売新聞(ここ)の書評に載って評判になっているらしい。しかも、Netはすごい。オリジナルが連載された「漫画アクション」のサイトで、最初の19ページ分が読める・・・(ここ)。
でも、さすが大新聞が取り上げるだけの内容はあるマンガだと思った。
選挙で忙しいマンガ好きの麻生首相・・・。この本を読めば、少しは政治が変わるかな?? いや変わらないな・・・!
でも、この本を読んだ愛犬家のところの犬だけは、少なくとも1週間くらいは待遇が良くなるはず・・・。それだけでも筆者がこの本を書いた甲斐はあったのでは??
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