89歳の新人作家~久木綾子さんの話
NHKラジオ深夜便で「瑠璃光寺五重塔に魅せられて 作家 久木綾子」(2009/4/26~27再放送)を聞いた。(初回放送は09/3/1だったが録音失敗だった)
何よりも、89歳で最初の小説を出版したというからスゴイ。世の中には凄い人がいるものだ・・・。
東京在住の久木さんは、70歳を過ぎた頃、亡くなった夫の歩いた道をもう一度辿る旅で、山口の国宝瑠璃光寺の五重塔に出会った。それからこの五重塔のとりこになって、もう35回も行ったという。(写真はクリックで拡大)
そして、小説の取材・勉強に14年、執筆に4年を掛けて小説「見残しの塔―周防国五重塔縁起」(これ)を書き、2008年9月に出版したという。
久木さんは瑠璃光寺の五重塔を見てから、「あの世が透けて見える塔」と表現して友人を誘っているという。そして「あの塔は結界だと思う。生きている人が、そして過去の人が透けて見える塔。あそこはたぶん結界だと思う」と友人に言っているとか。
この小説では、はかなく生きてはかなく死んでいった人たちの面影を描いてみたいと思って書いたというが、その執念がすごい。先ず「日本史の論文の書き方(これ)」という本を買ってきて、それをもとに取材をスタートしたのが20年前。
そして主人公が塔を建てた宮大工のため、大工の棟梁のところに修行に入った。父が早く亡くなり、祖母と母の女だけの3人家族で育ったため、家には大工道具も無い。トンカチとクギ位はあったが、棟梁のところに行って初めてノコギリを見た。だから大工の1から10まで習ったのではなく、0.1から1まで習ったのだという。そして高野山に1年修行に入ったり、80歳の時にはパソコン教室でWORDを習ったり、勉強の毎日だったという。それらを追いかけるのが楽しくて、締め切りが無かったら、今でも勉強していただろう・・・
それから場面に出てくる場所、街道には全部行ってみた。登場人物が歩いた道を、滋賀県から宮崎県まで自分でも歩いてみた。そこの空気を吸って、そこで感じたままに書きたいので行った。だから想像で書いた所はない。
執筆に4年掛かったのは、山口の同人誌に連載したが、隔月発行で毎回掲載では無かったため時間が掛かったとか。
そして言う。「トシを考えて行動したことは無い。行きたいと思うと行ってしまうし、やりたいと思うとやってしまう。万年受験浪人の状態」・・・
この話を聞いて、「六十の手習い」という言葉をしみじみ“眺めて”しまった。久木さんの場合は、ご主人が亡くなってからの「七十の手習い」である。しかしここまでやり遂げる人がいるとはビックリ・・・・・。インタビューの声も、とても90歳近い方とは思えない。
自分も、久木さんの爪の垢を煎じるため、この本を読んでみるか・・・
フト先日書いた(ここ)「今日は残された私の人生の最初の日である」という言葉を思い出した。
今日もカミさんに、「夜、夢をたくさん見るのは、人生でまだやり残していることがあるため。その何かを早く見つけろ」と“激励”されてしまったが、人生はまだまだ永い。自分も、第2ラウンドをどう生きるか、真面目に考えないと・・・
(しかし“女性”はスゴイね。ウチのカミさんも、自分が死んだ後で、久木さんのように“化ける”かもね・・・。そしたら先にあの世に行っている自分は、“化けた”カミさんがあの世に来ても分からず、人違いしてしまうかも・・・。ウン、これはありそうな話だな・・・)
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コメント
私なぞ、今こそ久木さんが一念発起されたという丁度70歳を少し過ぎた頃であります。
のんべんだらりの私と比較し、まさに「すごい」の一言。ほんとに爪の垢でも煎じて飲みたい心境です。瑠璃光寺には、近くですので2,3度行きはしましたが・・・・・。
投稿: 周坊 | 2009年5月 9日 (土) 09:48
周坊さん
この話が、なぜか頭から離れず、また記事を書いてしまいました・・・・。本も買ってしまった・・・。
投稿: エムズの片割れ | 2009年5月11日 (月) 22:23