映画「闇の子供たち」を見て
今まで見た映画の中で、これほど衝撃を受けた映画はない。もちろんBlogを書く気など、到底起こらなかった・・・・。起きたのは吐き気と重たい気持ち・・・
先日、聞くのを忘れていた昔の放送を聞いた。NHKラジオ深夜便「人生“私”流「夢のある生き方を求めて」京都造形芸術大学教授…寺脇 研」(2009/2/21放送)だ。元文部官僚だった寺脇氏は「ゆとり教育」の生みの親だという。その寺脇氏の趣味(=今の仕事)が映画(邦画)。1年に150本も観るという。その寺脇氏が今まで見た中で最高の映画と言っていたのが「闇の子供たち」(これ)。この映画の題は知ってはいたが、見る機会は無かった。Netで調べると、ギリギリまだやっている・・・。それで急遽、昨夜会社の帰りに一人で飯田橋ギンレイホールに行ってきたというわけ・・・。
舞台はタイと日本。幼児売買春と、生きながら心臓を取られる子供の臓器移植がテーマ。田舎で実の両親に、テレビと冷蔵庫のためにマフィアに売られていく8歳の女の子。連れて行かれたバンコクで待っていたのは、日本・欧米の“客”による性的玩具にされる売春宿の檻(おり)の世界。
日本人らしい痩せた“客”が、店から大きなスーツケースを持って出てくる。自分のホテルでそれを開くと女児が出てくる。そして言う。「まずシャワーを浴びよう」・・・・。
白人夫婦は、子供にホルモンを注射し、子供が死にそうだと分かると、金を払うと言う。そして、7000ドルだと言われて「ビザで・・・・・」。
そしてエイズを発症した子供は、生きたまま黒いビニール袋に入れられ、ゴミ収集車に・・・・
あまりにおどろおどろしいシーンの連続で、吐き気すら覚える。
そして子供の心臓移植。東京の商社マンの息子が心臓の病気で半年しか命が無い。そして5000万円を払って、タイでの心臓移植を決意する。それも我が子を救うため、生きた子供から心臓を取ることも承知の上で・・。そして売春宿の子供が血液型を調べられ、選ばれた子供は洗われ、初めてきれいな服を着せられ、“予定の日”に病院へ・・・
この映画がノンフィクションかフィクションかは、色々と議論されている。この映画に取材協力をした大阪大学医学部付属病院移植医療部の福嶌教偉さんは「まずはタイで、日本人が心臓移植を受けた例はない」「心臓移植を受けようと思っている子供の両親が、よその子供を殺してまで自分の子供を助けたいと思っている人は一人もいない」「心臓移植はリスクが高すぎて、儲けということでは成立しないかもしれない。スタッフは8名必要であり、情報は漏れる」と指摘する。(ここ)
これが事実かどうかは別にして、「このような事」が有り得るだろう事は、映画を観ていて分かる。前にもどこかで聞いたことがあるので・・・。
しかし、その場面を赤裸々に眼前に展開されると、目をそらしたくなる。でも、もし自分の子供だったら・・・・?
最近何かの本で、「虫けらも人間も、食する力を失った時、死を迎える」といった事を読んだ。それが自然の摂理。それに対して、「臓器移植」は、我々はどう捉えたら良いのだろう。自然への、また神への反逆?
そしてこの映画のラストシーンに圧倒される。「お前もこれは他人事ではなく、当事者だ」と迫ってくる・・。(それ以上はネタバレなので書かないが・・・・)
ところで、自分はこの映画の“何に対して”吐き気をもよおした? ⇒たぶん“日本人が加害者である”という事実に対してかも・・・。(この映画の通りでないとしても、金満の日本人なら、たぶんその通りだろう・・・)
この映画は、2008年8月の上映スタート時は7館だったという。それが大ヒットになり、公式HPに載っている2009年2月現在の上映館だけでも126館に達する。
でも、見ていて楽しくない、まさにマイナーな社会派ドラマが、これだけ沢山の日本人に受け入れられたということは、まだまだ日本人の自浄能力が期待できるという事かも・・・
話は変わるが、昨夜、自分の“衝撃を受けた”という感想を聞いて、ウチのカミさんも急 遽、今日見に行った。ギンレイホールの最終上映である。その感想は・・・「社会派ドラマで、このようなテーマを取り上げたのは良かった。桑田佳祐の主題歌“現代東京奇譚”がとっても良かった!特に“淋しくて淋しくて 魂(こころ)に死化粧”という所・・」(奇譚=きたん=世にも珍しく面白い物語・言い伝え)
いずれこの映画も「復習」しようと思って調べたら、すでにDVDが出ている。既にレンタルもされているようだ。(例はここ)そのうち、もう一度ゆっくりと見てみよう・・・かな??
●メモ:カウント~38万
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コメント
こんばんは
これ 映画は見ていませんが 原作を読みました。
映画か原作かどちらかと思っていましたが 小説の方が手に入りやすかったのです。
それがきっかけで ヤンソギル 沢山読みましたが なかでも この「闇の子ども達」群を抜いて 大変ショックでした。
怖ろしくおぞましく信じられない世界で 人間はここまで恥ずかしく浅ましくえげつなくなれるかと 衝撃で本当に吐き気がする思いでした、読み進むのが大変気が重かったです。
原作は 乾いたタッチでまるでドキュメンタリーのように話が進みます、湿り気がないのが かえって真実みがあってオソロシイです。
めったに ネットで読書感想文やレビューは書きませんが これ 思わず書いてしまい 反響も多かったです。
片割れさんの この記事を読むと 原作よりもっとセンセーショナルに作られている様で 私はとても映画を観る勇気はありません。
監督は 出演者達と何度も話し合いを重ね 演じる子ども達にもどうしてそのセリフやシーンが必要なのか話したそうです、でも タイでは上映禁止になりました。
投稿: 見切り | 2009年4月19日 (日) 21:31
見切り さん
そうですか。小説を読みましたか・・・。
今NHK TVで、臓器移植法改定のニュースをやっています。臓器移植は非常に危険な一面(死を待つ)を持つので、慎重に・・・
投稿: エムズの片割れ | 2009年4月21日 (火) 21:21
原作を読み終えました。
ズーンと重苦しいものが心に残りました・・・。
あまりにも衝撃的で、あまりにもリアルな描写で、読むのに辛いものがありました。
学校帰りの子供たちを見ても、あの年頃の子供たちが、今も、私たちの知らない世界で、と思うと、胸が苦しくなります。
これを映像で見せられるのはかなり苦しいかな・・・
でも、機会があれば、映画も観てみようと思います。
原作には映像では表しきれない作者の思いもあるかもしれませんので、わたしは原作もお読みになることをお薦めします。
投稿: 園内麻亜 | 2009年5月 8日 (金) 18:06