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2009年3月 2日 (月)

“かんぽの宿”問題~日経「大機小機」の大人の論理

先日の日経のコラム「大機小機」に「官業払い下げの論理と倫理」という記事があり、つくずく“日経はオトナの新聞だな”と思った。(2009/2/227日経朝刊p15より)
曰く・・・

大機小機~官業払い下げの論理と倫理
日本郵政が所有する資産「かんぽの宿」の売却を巡る騒動は、官業払い下げの論理と倫理を問いかけている。
2400億円余りを投じた資産の譲渡価格がなぜ、109億円でしかないのかという素朴な疑問は確かにある。中には不動産として優良物件もあるというから、個別物件ごとの評価を積み上げれば譲渡価格を上回る金額になるはずと考える人は、入札に不正があったのではないかと疑い、「出来レース」と批判する。
郵政側は、これは単純な不動産の処分ではなく、3千人超の従業員を抱える宿泊事業の売却で、M&A(合併・買収)と同様に事業価値の評価の問題だと主張する。永久には縛れないが、雇用確保を条件とする事業の譲渡価格は投下資本の多寡には関係なく、将来の予想収益の割引現在価値で決まるという理屈だ。
問題は公正価値(フェアバリュー)とは何かである。国会質疑を聞く限り、最悪の環境下で売り急ぐ必要があったかという疑問はあれ、郵政の説明に特段の違和感はない。批判者が暗に想定するような客観的で絶対に正しい公正価格など存在しないからだ。
パナソニックが三洋電機を子会社化する際、時価を下回るTOB(株式公開買い付け)価格が話題になった。自ら資産査定をして付けた価格は、事業統合を考えるパナソニックにとっての公正価値であり、純投資目的の大株主(優先株)であるゴールドマン・サックスにとっての公正価値とは一致せず、不特定多数が参加する公開市場の時価と違っていても不思議はない。
誰がどんな目的で買うのかで、同じ資産・事業の価値は変わる。安すぎると思えば、対抗TOBを掛けるか、売らずに保有し続ければよい。上場会社の株価でさえも、何が公正価値かは神のみぞ知る。予測と仮定の評価(主観)に基づく根付けは、第三者による活発な競争的取引の結果を受け入れるしかないのだ。民間の私有財産の処分に関する限り、以上の論理で問題はほぼ完結するのではないか。
しかし、日本郵政は民営化しても政府が全株を保有する国有企業で、その資産は国民の財産だ。官業払い下げに付き物の疑惑を招かないためには、民間取引に倍する手続きの公正さと透明性を要求される。郵政と入札参加者双方にその自覚はありや。かんぽの宿売却は、公共財を扱う倫理基準を満たしていたかどうかの問題だろう。(渾沌)」(2009/2/227日経朝刊p15より)

「かんぽの宿」の“各新聞の論評”については、各紙の特徴が出ていて面白いので、当blogでも前に取り上げた(ここ)。でもこのコラムを読んで、「これでこの議論は終りだな」と思った。つまり、自分にとって、それほどこの記事は説得力があったのだ。
いったいこのコラムは誰が書いているのだろう? 相当、頭の良い人が書いているのだろう。一般的な感情・感覚の視点からの見方、及び、市場経済の視点からの見方、そして一刀両断の結論。実にスカッとしている。

何でもそうだが、物事を見る視点の違いで、正反対の結論が出る事は多い。その格好の例を、この“かんぽの宿”事件は提供してくれた。
この事件は、たぶん買い手が付かないまま、時間だけが過ぎるのだろう。せめて日本郵政が必要な説明責任を果たしていたら、別の動きになっていたかも知れないが・・・・。

マアそれはそれとして、繰り返しになるが、このコラムの筆者は素晴らしい。自分もこのような論理展開が出来るようになりたいが、“頭の出来”が違うのでマア永遠に無理だな・・・

(関連記事)
「かんぽの宿」問題~自分の“付和雷同”を思う

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コメント

今晩は、“エムズ”さん

4年前、秋葉原のオフィス家具のリサイクル店に勤めていたことが有ります。
会社からオフィス機器を下取りし、点検・整備し、売るのですが(顧客は闇金業者が多)、ある時、厚生省の外郭団体からコピー・マシンの下取り要請があり、XEROXのカラー・50枚ソーター付・FAX付、使用1年半、コピー枚数600枚の機器を1万5千円を貰って(?)、3ヶ月後に30万円で売却。
外には、多摩地区の小学校から、3年使用のシュレッダー26台を10万円で下取りし、3ヶ月間で1台3万円で完売した経験があります。

投稿: 小笹仁 | 2009年3月 2日 (月) 23:26

小笹仁 さん

コメントありがとうございます。
なるほど・・・。結局、需要と供給ですものね。どんな高価な骨董品でも、興味の無い人には無価値!
まあ当たり前の議論ですが、感情で見ると、これがなかなか納得できない・・・

投稿: エムズの片割れ | 2009年3月 2日 (月) 23:36

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