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2009年2月27日 (金)

「子供が使ってはいけない敬語」~金田一秀穂氏の愉快な話

NHKラジオ深夜便「くらしの中のことば 杏林大学教授…金田一秀穂」(2009/2/16放送)を聞いた。今回のテーマは「頭が上がらない」。
だいぶん前の放送だが、これがなかなか愉快な話だった。最初の部分を文字にしてみると・・・

「子供用の国語辞典の監修を頼まれる事があるが、その中で子供用の決まり文句とか、慣用句とかを並べる。例えば「馬がいななく」とか「鳥がさえずる」とか。その中で「頭が上がらない」というのが出てきた。「お世話になった先生に、頭が上がらない」という例文をみて、小学生用の辞典だが、本当に小学生はそう言うのだろうか? 何か気持ちが悪い。どうも言いそうにない・・・。他にも、例えば「手に余る」という言葉。「この算数の宿題は、私の手に余る」。何か気持ち悪い。「試験の成績が悪くて、お母さんに合わせるが顔ない・・・」。何か違うんじゃないか、と思う。頭が上がらないと言ったって、そんなことないだろう。宿題が手に余ると言われたって、あんたの手はどの程度のもんだ?と思ってしまう。この場合の「手」は“大人の経験”といった意味。ある程度できる人の「手」に余らなくてはいけない。
つまり、大人しか使えない言葉というのがある。だから「あんたが使ったら生意気だよ・・・」と言いたい。
最近、夜の11時頃にコンビニの前を通ると、塾を終わった子どもたちが帰って行く。たぶん中学受験で夜遅くまでやっているので大変だな、とは思うけれど、友達と別れるときに、彼らは「お疲れさま」と言って帰っていく。6年生ですよ? 疲れているのはとてもよくわかるけど、「お疲れさま」とは言ってほしくない。“疲れるなよ!おまえたち”と思うわけ。
子供が“お疲れさま”と言うのは、ちょっと嬉しくない。
つまり“敬語を使ってはいけない”というルールが子どもにはある。例えば、おばあちゃんからアメ玉をもらった時、「ありがとう」「良い子だね」で終わる。それが「結構なものを頂戴いたしまして、恐れ入ります」と子供が言ったらいったら、イヤなんですね・・。
つまり大人が使うべき敬語は、子供は使ってはいけない。一人前の社会的な存在でないと、敬語は使ってはいけない。「頭が上がらない」とか、「合わせる顔ない」とか、「手に余る」とかの言い方は、社会的な能力があり一人前でないと使ってはいけないのでないかと思う。・・・・」

この話は落語よりも面白かった。駅からの帰りのバスの中で聞いていたが、思わずニタリとしてしまった。混んでいるバスの中で、妙齢のお嬢さんに向かって、頭の薄いオジサンが“ニタリ”と笑い掛けたら、それこそセクハラ! あわてて顔を窓に向けて、外の景色を見ているフリをした。
AM放送で、かつ電話での話なので音が悪いが(特に電話の“エコー”が大きい!)、落語より面白い(?)続きの“お話”を聞きたい方は、これをどうぞ!(9分半)

<「くらしの中のことば」“頭が上がらない”
         ~杏林大学教授 金田一秀穂>

           (「NHKラジオ深夜便」2009/2/16放送)

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コメント

中途難聴の私には、ラジオも歌も聞けませんが、この欄のおかげで面白い内容を知る事ができ、毎日読むのが楽しみです。ありがとうございます。

【エムズの片割れより】
コメントありがとうございます。(2006/11/2)の記事にあるように、実は自分も難聴・・・。でも右だけなのでセーフ・・・
右耳が壊れてしまっただけに、聞けない事の無念さは、健常な人よりも分かります。
でも当blogは音をコンセプトにしているけど、音のない記事の方が多いので、また寄って下さい。

投稿: み~子 | 2010年6月14日 (月) 21:39

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