小鳩くるみの「花嫁人形」
童謡「花嫁人形」は、自分は童謡の中でも好きな歌だ。しかし、聞き流しているこのような童謡も、良く眺めてみると色々な背景が表れてきて面白い。
先ずは聞いてみよう。数えてみたら、自分は色々な歌手で12種の録音を持っていた。でもやはり、小鳩くるみの歌が一番好きだ。
<小鳩くるみの「花嫁人形」>
「花嫁人形」
作詞:蕗谷虹児
作曲:杉山長谷夫金襴緞子の 帯しめながら
花嫁御寮は なぜ泣くのだろ文金島田に 髪結いながら
花嫁御寮は なぜ泣くのだろあねさんごっこの 花嫁人形は
赤い鹿の子の 振袖着てる泣けば鹿の子の たもとが切れる
涙で鹿の子の 赤い紅にじむ泣くに泣かれぬ 花嫁人形は
赤い鹿の子の 千代紙衣装
雑誌「令女界」の1924年(大正13年)2月号に掲載されたというこの歌詞だが、「花嫁御寮 はなぜ泣くのだろう?」の解は書いていない。ナゾである。普通は嫁に行くのは嬉し泣きするはず(?)だが、この場合はそうでもないらしい・・・。嫁に行くのが嬉しくない事情は・・・?
3番以降は花嫁人形を歌っているが、これもなぜか悲しい・・・・
その背景は、作詞者の人生にあるらしい。作詞者の蕗谷虹児(ふきや こうじ=1898年(明治31年)~1979年(昭和54年))は画家であり詩人。新潟県新発田に生まれ、父は地元新聞の記者だったという。しかし両親が結ばれたのは、父が20歳、母が15歳の時。そして母が16歳の時に虹児(本名一男)が生まれたという。そして駆け落ちの末の貧乏で、母は28歳で他界。それは蕗谷虹児が12歳の時であった。駆け落ちという祝われなかった結婚。そして苦労の末の若い死・・・。
この歌には若くして他界した母親の面影が投影されているという。
ところで「花嫁人形」とは、“戦争などで独身のまま亡くなってしまった男性のために、その男性の親が「あの世でこの人形と結婚しろ」と願いを込めて寺や神社に奉納する人形のこと”だそうだ。靖国神社には花嫁人形が奉納されているという。まだ独身の若い息子を戦地で亡くし、せめてあの世で嫁を取らせて・・・と、人形を作って祀る老母の姿は哀しい・・・。
しかし、童謡とはとても思えない難解な歌詞の「花嫁人形」・・・。今まで何気なく聞いていたが、その背景には凄まじいものがあることが分かった。
(2010/05/02追)
4月30日に、新潟市に行ったついでに「花嫁人形」の歌碑を訪ねてみた。ホテルイタリア軒の裏にある歌碑である。
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コメント
この歌を聞いて、大正の画家 蕗谷虹児の挿絵を思い浮かべた。調べたらその人が作詞者だった。聞き直すと大人の哀しみがみちあふれて、当時のご時勢からしても小学唱歌にはムリだったろうと思うのだが(歌を忘れたカナリヤも排除された)。時代が生んだ傑作だ。
【エムズの片割れより】
お恥ずかしい話、自分はこの歌で初めて蕗谷虹児を知りました。
投稿: r.nakajima | 2011年10月31日 (月) 23:59
もの悲しくもきれいなメロディーです。歌詞もメロディによく合致していて、こどものころから親しんできました。老齢期に入って、この曲の由来を知りました。作詞・挿画した蕗谷虹児さんが長命だったことが分かり安心しました。
【エムズの片割れより】
よく聞く歌も、それぞれに歴史があって面白いですよね。
投稿: あたごの すみひと | 2012年2月 2日 (木) 10:42
花嫁が何故なくのか、疑問でした。わかったような気がしますが、もう一つしっくりしません。
投稿: 京仙人 | 2019年2月22日 (金) 20:23