真の豊かさ・幸福とは?~ブータンの国作り
BS朝日で放送された「ZOOM ASIA~奇跡の国ブータンから学ぶこと」を見た。(2009/1/10放送~2008年7月の再放送)(詳細はここ)
石川次郎がブータンをナビゲートする。そして初代首相にインタビュー・・・
自分がブータンに興味を持ったのは、ちょうど2年前に「NHKハイビジョン特集「五木寛之 21世紀・仏教への旅」第3回「幸福の王国をめざして~ブータン」という番組を見てから。(ここ)(番組はこれ)
それから1年前に「ブータン 手探り初選挙~前国王主導 民主化完成へ」という新聞記事が載った。(ここ)
今回のBS朝日の番組は、自分にとって“その後のブータン”の姿を伝えてくれる。取材は2008年6月7日~18日だ。この番組を見て「ヘエー」と感じたことを、番組の進みに合わせてナレータ・字幕を元にメモしてみた。
・ブータンへの旅行は、現地旅行会社とルート・ホテル・ガイド・車などを予め決める。現地での調整は全てガイドが行う。
・2008年3月に初の国民議会選挙が行われ、1世紀近く続いた王室統治が終りを告げ、民主化がスタート。
・しかし道路の信号機が1台も無い首都はティンプーだけ。
・ホテルはアマンリゾートが近代的なアマンコラを建設中も含めて6箇所建設。
・ブータン料理は辛いのが普通。トウガラシはスパイスではなく野菜の扱い。
・宗教上ブータン人は殺生を許されていないので、釣りや網を使った漁をしないのでインドから輸入している干し魚は高価な食材。
・ブータンの学校は英語が必須科目であり、小学校の授業も国語とブータン史を除けば授業は英語で行われる。だからブータンの若者は英語が実に堪能。コーヒーショップで隣の席で話していた若者たちも、ブータン語ではなくて英語で話している。何故かと聞くと「その方が楽だから」と答える。彼らは西洋の便利さを知った上で、それでもブータンが一番と言う。今やブータンは遅れているのではなく、あえて遅らせているのだ。
・ガイドの奔走で、2008年3月に選出された君主制民主主義国家初代首相のジグメ・ティンレイ首相に会うことが出来た。
・そのガイドも言う。「ブータンが自ら課した鎖国状態から解き放たれたのは1960年のこと。非常に短い期間で多くが変わった。電力も無く、靴も履かず道路も無かった。それが今やジェット機を保有し、人々はニューヨークに飛ぶ。しかしブータンの王は聡明でこう言う。「ブータンは近代化しなければならない。しかし西洋化してはいけない」と。そして王は東洋の精神・目で物事を見て言う。西洋の科学や技術を使うことは受け入れなければいけない。そして自然を尊重し、人を尊重しなければいけない。そして人生のすべてはお金ではない、と。そして、我々は豊かにならなければならないが金持ちになってはいけない。金持ちと豊かさは違う。西洋の国々は金持ちかもしれないが必ずしも豊かではない、と。
そして日本のテレビとして初めてのジグメ・ティンレイ首相へのインタビュー。
「首相選任、おめでとうございます」
「ありがとうございます。まだ始まったばかりですからね。新しい政府を始めるというのは、簡単なことではありません。政府が新しいということだけではなく、このシステム自体がまったく新しいものです。私たちが制定したのは、民主的に選出された政府です。ならうべき先例がありませんから、想像力豊かに挑戦することが多くあります。新たな道を一から作っているわけですから、大変なことです。私も分刻みで働いています。」
「国民総幸福量について、ブータンの人たちはどのような形で幸福を追求しているのでしょう?」
「まず、GNH国民総幸福という理念が世界中で注目され、人気を博しているのは、新しいミレニアムを迎えた今、人々が気づいたからだと思います。私たちが特にこの50~60年で成し遂げた科学的、経済的、物質的、技術的な発展が、結局より良い社会を築き上げることが、できなかったということに気付いたのです。そのような発展は、人が幸せになる、真の幸福を得られる、そんな状態を作り上げることができませんでした。世界中の人々は、これまでの発展が物質主義すぎたと気づいたのだと思います。発展の過程で、人間の精神というものは軽視されてきました。だからこそ人々はすDNHに人間の発展の新たな規範は、パラダイムを見出だしているのだと思います。人間の真の発展のためには、身体的な成長が必要だという信念に基づいた考えです。身体のニーズに応え、精神を発展させ、そして心の欲求にも応えるのです。私たちの国民総幸福という理念は、国民一人一人に、物質的および精神的な成長のバランスを取るよう努力することを求めています。このことに関して第4代国王は、すべての国民が幸せを追求できる国づくりをするのは、国家の、政府の義務であると考えておられました。・・・」
そしてインタビューが終わるや、走って議事堂の中に戻って行った。
首相は、非常に忙しい中で時間を割いてくれて、日本人にメッセージをくれたのかも知れない。しかし、リーダーの大切さ、ブータンという不和雷同しない国作りに感銘。
・ポジブカの谷。電気が来ていない。それは電線が、ここに冬に渡ってくるオグロヅルの邪魔になるのではないか、という話になり、ポジブカの民は電気のある生活よりも鶴のいる生活のほうを選んだという。
・寄った民家は質素な生活。実はアマンコラの建つ土地の持ち主で、大金を手にしたはずだが生活は何も変わらない。つまりここで暮らす人にとって、お金は意味が無いのだ。
・ブータンにはお墓が無い。荼毘にふされた骨まで灰にし川に流される。輪廻転生が当たり前のブータンでは、生まれ変わるのだから、先祖の霊や死者の霊を祭ることはしない。死への恐怖の薄さは、生への執着の薄さと比例する。
・パロの村に、日本人西岡京治氏(1933~1992)を称えるチョルテンと呼ばれる仏塔があった。西岡氏はブータンに1964年から1992年まで住んで日本式農業をブータンに根付かせた。彼はブータンの人々に「何かをやらせよう」としたのではなく、やり方を見せた。野菜の植え方を見せた。だからこの地の人々は彼を尊敬している。
・自給自足の生活、篤い信仰心、物欲とは無縁であるからこその自由。ブータンの人々は皆自分が幸せだと言っていた。自分より他人の幸せを願うブータン人。それを実感したのは4人のガイドからだった。
“競争に疲れた”世界中の人々の目が、今、ブータンに向かっているという。しかしブータンは遠い。先日カミさんの知人がブータンに行ったというが、(日本からの入国ルートである)バンコクから5時間近くかかったという。
だから、実際に行く事は難しくても、これらの番組から「豊かさとは?」「真の幸福とは?」を考えるきっかけだけでも貰おうか・・・
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コメント
私の一番最後の国際協力の相手国がブータンでした。
3年の間に10回ほどかの地を訪れて全土を踏破しています。
裏表の事情ほとんど存じ上げた上でいろいろな報道をみてみるとやはり、かなりの嘘があります。
質問いただければ、
実はこうなんだということにもお答えできると思います。
ブータンは私の一番好きな国のひとつでした。
今はかなり変革しています。
私はブータンで最初のインターネットプロバイダを立ち上げたグループのひとりです。
投稿: ampouie | 2009年1月11日 (日) 18:33
ampouieさん
そうですか、ブータンにも行かれましたか・・。
この記事は、単に番組を文字に写しただけですが、もし記載に間違いがあれば教えて下さい。修正したいと思います。
投稿: エムズの片割れ | 2009年1月11日 (日) 23:54
何に関するマスコミ報道も同じですが、流される情報がすべて正しいと思い込むのは禁物です。
むしろ報道には嘘があると思うのが懸命です。
大きな誤りがなければ訂正はしませんが、
疑義があればお答えします。
(解釈もちがいます)
私はブータンへの入国は個人的なものと政府要人してのもの(ブータン国顧問)
がありますので普通の旅行客の知らないこともたくさんあります。
投稿: ampouie | 2009年1月12日 (月) 01:37
ブータンには家内と二人で2004年7月に行ってきました。我々二人に現地のガイドがついて案内してくれました。勿論日本語で。
仏教の国であり、皆、穏やかに暮らしている印象があります。いろいろな寺院を見てきましたが、特に地方の方も貧しい感じはなく、テレビで紹介のあったように幸せな暮らしをしているようであった。子供達は皆明るい笑顔が印象的であった。チベットも同じ仏教国だが中国の支配が強い感じで、貧しさも目立った。
いずれにしても「心の持ちよう」が大切で、そこに人間たる由縁があるわけで、年を取るにつれて、人間とは・幸せとは・・・と考えることも多くなってきた。
投稿: 保田 博 | 2009年1月19日 (月) 10:37
保田さん
そうですか。あの秘境に行かれましたか・・。これからも楽しみですね。またお二人で、ぜひ世界をまたに掛けて、闊歩して(?)下さい。
1/21のam9時からNHK hiで「ハイビジョン特集 五木寛之 21世紀・仏教への旅(3)ブータン」が再放送されますので、良かったら見て下さい。
投稿: エムズの片割れ | 2009年1月20日 (火) 08:27