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2008年12月25日 (木)

ヴォーチェ・アンジェリカと菅原洋一の「忘れな草をあなたに」

叙情歌の名曲に「忘れな草をあなたに」という歌があるが、そのルーツを辿ってみた。自分の持っているこの歌の音源の中で、唯一モノラル録音がヴォーチェ・アンジェリカだったが、案の定それがオリジナルだった。先ずは“オリジナル”に敬意を表して・・・・

<ヴォーチェ・アンジェリカ「忘れな草をあなたに」>


「忘れな草をあなたに」
  作詞:木下竜太郎
  作曲:江口浩司

別れても 別れても
心の奥に いつまでも いつまでも
憶えておいて 欲しいから
幸せいのる
言葉に換えて
忘れな草を あなたに あなたに

いつの世も いつの世も
別れる人と 逢う人の 逢う人の
運命は常に あるものを
ただ泣きぬれて
浜辺に採んだ
忘れな草を あなたに あなたに

よろこびの よろこびの
泪にくれて 抱き合う 抱き合う
その日がいつか 来るように
二人の愛の
想い出添えて
忘れな草を あなたに あなたに

この歌は色々な歌手が競作しているが、自分はやはり菅原洋一の歌が好きだ。自分は菅原洋一の3つの録音を持っているが、やはり定番の録音が一番素晴らしい。

<菅原洋一「忘れな草をあなたに」>

さて、この歌のルーツを辿ると、「演歌ジャーナル1998年6月号『昭和流行歌秘話94』長田暁二」(=元キングレコード・ディレクター)に詳しい。当事者だけに話が具体的だ。その話を要約してみると・・・

「ヴォーチェ・アンジェリカ(Voce Angelica=イタリア語で「天使の歌声」)は国立音楽大学声楽科出身の6人の女声重唱団。ダークダックスの女性版を目指して1960年(昭和35年)にデビュー。彼女たちを有名にしたのは、仲宗根美樹の「川は流れる」や三橋美智也の「古城」「石狩川悲歌」のバックコ-ラスを受持って成功したこと。そして「私達にはオリジナルのヒット曲がない」と思っていた彼女たちのところに、作曲家の江口浩司が「あなたたち六人のイメージでこんな曲を作ってみた」と、「忘れな草をあなたに」の曲を直接持ち込んだ。そして昭和38年8月にキングレコードから発売された。そして労音のコンサートなどで歌い、歌声喫茶で歌われる。その後、ステージで一緒になった梓みちよが、「とてもいい歌ね、私にも歌わせて」と申し入れ、昭和40年4月に発売された。続いて、菅原洋一がこの歌を歌いたいと言い出し、菅原のマネージャからキングレコードに「菅原洋一の愛唱歌にして日本レコード大賞を狙いたい。ポリドールで録音させて欲しい」との申し入れがあった。そこでキングでは、先ず倍賞千恵子に急遽レコーディングさせ、そのあとでOKを出す事になり、昭和46年8月に倍賞千恵子盤が発売され、その3ヶ月後に菅原洋一盤が発売されてヒットした。
作詞者の木下龍太郎は、この作品の誕生について「昭和37年のある日、西銀座を歩いていたら、洋画の『夜をあなたに』の看板が目についた。「**をあなたに」-これは歌の題名に使えると直感し、最初は「さよならをあなたに」を考えが、あまりにも生っぽい。自分は花が好きだから“真実の愛”の花言葉を持つ「忘れな草をあなたに」にすればいいと考え、詩想を練った。」という。」

ところで「忘れな草」には、次のような伝説があるそうだ。
Wasurenagusa 「昔、ドイツにルドルフとベルタという恋人同士が暖かい春の夕べ、ドナウ川のほとりをそぞろ歩いていた。乙女のベルクが川岸に咲く青い小さな珍しい花が欲しいというので、ルドルフは岸を降りていった。そしてその花を手折った瞬間、足を滑らせ、急流に巻き込まれてしまった。ルドルフは、最後の力を尽くして花を岸辺に投げ上げ、「私を忘れないでください」と叫び、流れに呑まれていった。残された少女は若者の墓にその花を植え、彼の最後の言葉“忘れないでください”を花の名前にしたという。この話は、プラーテンの詩で有名である。英名の「Forget me not」はこの伝説に基づいて命名され、日本語の「勿忘草」は英名の訳である。
 十九世紀のバリでは、恋人への贈り物として街頭で売られた。スイスのサンクス・ガレン州では、若者がズボンのポケットに忘れな草を入れて行くと、娘に気に入られるという。また、中部ドイツのヘッセン州では、偶然見つけた忘れな草を左の脇の下に入れて家路を辿ると、途中で出会った最初の者が、未来の配偶者の名を教えるという。」

しかし実にロマンチックな話だ。自分はもう遅いので、だれか若い人にこの話を教えてあげようかな・・・。
それと、無理だと思うけど、ウチの息子に“忘れな草を左の脇の下に入れて家路を辿らせて”最初に出会った人に「私の配偶者は誰ですか?」と聞かせて、その“名を教えて頂きたい”ものだ・・・
まあ“夢のまた夢”だけど・・・(←せっかくの叙情歌の名曲が“グチ”になってしまった・・・)

●メモ:カウント~26万

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コメント

この歌には忘れられない思い出があります。もう30年も前のことですが、仕事で旅を続けていたフィンランドの田舎町のレストランに入ったところ、私たちを日本人と目ざとく察したバンドの人が思いがけずこの曲を演奏し、しかも日本語で歌ってくれたのでした。感激して1杯おごったバンドマスターは、以前に日本に来たことがあるとか、たどたどしい日本語でしたが話してくれました。遠い外国で耳にした日本のメロディーがどれほど私たちの旅情を慰めてくれたか、その時同行した社長がその後すぐに亡くなったということもあり、今も強く印象に残る出来事でした。

投稿: 雪爺 | 2008年12月27日 (土) 10:21

雪爺 さん

海外で日本の歌に出会うとは、さぞ心強かったでしょうね。
欧米では日本の歌は無理でも、アジアでは「北国の春」は皆知っているようです。それに引き換え、我々は英米等のヒット曲を除くと、海外の歌を殆ど知りません。

投稿: エムズの片割れ | 2008年12月28日 (日) 22:36

音楽療法士をしています。この曲を取り上げようと思い、調べていてたどり着きました。
この曲の生まれた経緯が良くわかりました。
他の記事も面白そうですね。
ありがとうございました☆
ブックマークしましたのでちょくちょくよらせてください♪

【エムズの片割れより】
ありがとうございます。この歌の菅原洋一盤は、何より編曲が良いですよね。

投稿: れい | 2013年4月13日 (土) 11:39

ヴーチアンジェリカ。私の若き日の素晴らしい思い出の人々、そして忘れられないあの歌。忘れなぐさをあなたに。あの時の彼女たちの言葉、この歌は私達の歌なんです。 今はフォレスタを聞きながら思い出す日々。また歌声喫茶に行きたいです。

投稿: 吉清 利典 | 2014年10月21日 (火) 09:14

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