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2008年10月15日 (水)

ピンピンコロリ~「緩和医療」大津秀一医師の話

一つのグラフを見て「緩和医療」の何たるかを知った。
カミさんが尊厳死協会の会員になってから久しいが、その会員報「リビング・ウイル(No.131:2008/10月号)」(P12)の、松原アーバンクリニック(東京)ホスピス医 大津秀一氏の「知っておきたい緩和医療」という記事には考えさせられた。曰く・・・・

「・・・医師になるまで人間の死ぬ場面を見たことがなかった。TVドラマで見るような「ずっと愛していたよ・・」「私も・・」と最期まで言葉を交わし、次の瞬間ガクッと亡くなるのが死だと思っていた。医師になってこうした死が存在しないことを知った。
・ ・・2004年、忘れられない一冊の医学書に出会った。現在阪大の緩和医療学講座の教授である恒藤暁先生の「最新緩和医療学」だ。この本の内容がすごかった。こういう苦痛の症状にはこういう苦痛緩和の治療を、と事細かに書かれていた。末期がんの患者さんの苦痛を取り除く優れた医療があることを知った
・・・・
さて、「希望どおりの最期」を実現するには、終末期を迎えるに当たり四つのことを知っておいた方がいい。患者さんを診てきて私なりの経験則からのまとめで、おそらくこの四つを押さえておけば「みじめでない死を迎える」可能性は高くなる。

<四つの知っておくべき事>
 苦痛の少ない最期を迎えるために必要な事・・・
 1)病気の正しい理解
 2)がん告知、終末期に対するシミュレーション
  及び家族との良好なコミュニケーション
 3)緩和医療受ける事
 4)望まない延命治療を拒否する事

・・・意識はあくまでも変えず、命も縮めず、薬を使って苦痛のみを取り除くのが緩和医療だ。・・・
・・・
緩和医療の「今」と「昔」がある。「がんを治しましょう」と抗がん剤治療をしていて効かなくなると、突然「緩和ケア病棟やホスピスに行ってください」と言われ、患者も戸惑うなかで緩和医療に急に切り替わる。これを「昔」の緩和医療(今もまだ多いが)とすれば、痛みや苦しみは最初から取り除き、緩和医療の比重を徐々に増やしていくのが「今」の緩和医療。日本のがん医療はこのようにならないといけない。
・・・・
・・緩和医療の使命は、病気の早い段階では主に痛みの緩和であり、その後の段階では痛みだけではなくだるさや食欲不振などの多様な苦痛症状を和らげることにある。その目的で使う薬剤として、医療用麻薬(モルヒネ等)、ステロイド、鎮痛補助薬などが挙げられる。
・・・・
081015kanwa では緩和医療を行わないとどうなるのか。緩和医療をしないで放置すると、腫瘍に伴う苦痛症状は個人差があるが余命60日目前あたりからどんどん出てくる可能性がある。苦痛症状が複合して現れると、早い段階から寝たきりに近い状態になってしまうこともある。しかし緩和医療を受けていると、患者さんの苦痛症状は一般的に軽くなる。・・・ただし注意したいのは、緩和医療をしようがしまいが、最期は急にやってくる場合が多いということである。昨日まで歩けた人が・・、ということはよくある。それが人間の体なのだ。それでも緩和医療をしっかり行えば、したいことができる時間を確保できることが多い。
自分が末期がんになったらどうしたらよいか。まず緩和医療が受けられる医療機関を調べてほしい。日本ホスピス緩和ケア協会(現在、登録施設182=3552床)のHP(ここ)を見れば、最寄りの緩和ケア病棟やホスピスが見つかるはずだ。また最期の療養場所として緩和ケア病棟と自宅のどちらを選択するかを考えておくのも大事である。・・・」

先にも書いたが、この記事にあったグラフがショッキングだった。図では見にくいが、「緩和医療の効果」で苦痛の“実線”が“点線”まで持ち上げられる。まさにピンピンコロリである。しかも、科学的に確立された「医療」として・・。

結局のところ死期は変わらない。死ぬときは死ぬ。しかしそこに至る患者の状態で、ピンピンコロリか、のた打ち回るかは大きい。そして、その違いは医師の治療方針に掛かっている。そして氏は、患者が“家族を動員して”それに対して「意思を持つべきだ」と指摘する。

ここで思ったのは、自身が患者になってからでは、意見を言えるチャンスが限られるかも知れない。従って、自分自身の意思を事前に周囲の家族に伝えておき、「その時」になったら、家族からその意思を医療の現場に向かって発信してもらうしかない。そのためには、日頃の家族とのコミュニケーションが必須。(自分の意思とは無関係に、家族が延命治療を望む場合も大いに有り得るので)

振り返って我が家ではどうか・・・・? 自分が重篤な病気に罹ったときには(カミさんが動くので)まず心配ないが、カミさんが先に罹った時には(自分が動くので)心配だとカミさんが言う。
仕方が無いので、国会答弁ではないが、「その時」医師に言うべき事柄を、今から文書で用意して置こうか・・・?? そして「その時」は、真っ先に大津秀一氏の「死学」という本を買って来よう、と思った。

(関連記事)
「知っておきたい緩和医療」を読んで(エムズのひとり言)

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