映画「おくりびと」を見て
映画「おくりびと」を見た。(公式HPはここ) いつものように、新聞で評判が良いのと、カミさんの友人から薦められたことから・・・・
何とも不思議な映画。納棺師なる職業も初めて聞いた。納棺は葬儀屋さんがするのだと思っていたが、まあそれをプロに“外注”するのも分かるな・・・・。
物語は、チェリストの主人公が、せっかく就職したオーケストラが解散して職を失い、郷里山形で仕事を探す所から始まる。そして「旅のお手伝い」の広告でNKエージェントに就職する。(これが「旅“立ち”のお手伝い」で社名が「NK(納棺)エージェント」だって・・・。
世間の人から忌み嫌われている仕事が、本当は“悲しいはずのお別れを、やさしい愛情で満たしてくれるひと”とコピーにある。それに目覚めて行く主人公。
そして色々な別れがそこにはあった。美人だと思ったらニューハーフだった青年、幼い娘を残して亡くなった母親、交通事故で亡くなった娘さん、沢山のキスマークで送り出される大往生のおじいちゃん・・・・
そして主人公の職業を知った妻は、「汚らわしい」と、実家に帰ってしまう。しかしそれに耐えて誇りをもって仕事に励む主人公。そして最後は、自分が6歳のときに家出をした父親を送る・・。
どの役者もベテランぞろいで安心して見た。タダ一人を除いて・・・・。妻役の広末涼子は、最後までピンと来なかった。この役だけは残念。彼女では無理だ・・・
しかしチェロの演奏から納棺師まで、まさに本木雅弘の名演技とともに、自分の妻を送ったのを機にこの世界に入った社長の山崎務の渋さと、崇高さを醸し出す演技、陰のある事務員役の余貴美子の安心の演技、銭湯を一人で頑張る吉行和子、そして銭湯の常連客で焼き場の笹野高史のベテランまで。
そして、納棺の所作の張り詰めた美しさ・・・。一つひとつの納棺の所作が、これほど格好良い(?)とは・・・。
印象に残ったのが、焼き場の笹野高史の言葉。「死ぬのは門をくぐること。逝ってらっしゃい。また会おうな・・・」
この映画のHP(ここ)によると、この映画のコンセプトは、「笑って、泣けて、深く心を打つ・・・そんな映画を作りたい」だそうだが、それは成功している。
この映画は、既に第32回モントリオール世界映画祭グランプリを受賞し、今後も世界中の映画祭に出品されるらしい。確かに、日本の文化をこのような形で世界に発信することも意味があるように思う。
自分は泣かなかったが、カミさんは見ていて散々泣いたという。そしてカミさんの隣の席のおばあさんは、映画と共に泣いて、納棺の時には一緒に手を合わせていたという。そんな、見る人をその世界に引きずり込む、秀作の映画であった。
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コメント
文章が上手いですねぇ、見たいと思っていましたが余計見たくなりました。
妻役のように、あぁ、このミスキャストが何とかならなかったかなぁと陰陽師にもいましたねぇ‥
野村萬斎の台詞が上手すぎたからでしょうか、
見ている方がきまりわるくなるほどでした。
投稿: 福田 | 2008年10月10日 (金) 08:04
福田 さん
妻役は、たまたま脇役が上手かったので目立つのかも・・・?
公式HPの「プロダクションノート」にも「一方、難航したのは妻の美香役。もともと脚本では主演の本木の年令に合わせて30代後半の女優を想定していたのだが、どうにもぴったりの人材が見つからない。・・・」とあります。
では、誰だったらピッタリなのか・・?
菅野美穂ではどうだったろう?という話もありますが、永遠のナゾですね・・・
投稿: エムズの片割れ | 2008年10月10日 (金) 23:25
文章を読んでいて、いやあーこれは見たい映画だなあと思いました。最近いい映画がないのですね。これはもう興味津々。すぐに見たいですね。で、映画とは関係ないのですが、エムズの片割れさんのコメントに出てきた菅野美穂さん、どうして独身なんだろうと思っていました。おもしろそうな人なのに。本木さんの妻役にまったくぴったりじゃないですか。これが現実になればいいのに。本木さん結婚してるのかねえ。そうなら分かれて菅野さんと結婚しなさい。
投稿: 静御前堂 | 2008年10月11日 (土) 22:23
静御前堂 さん
ハハハ・・・
愉快なコメントありがとうございます。
実はウチのカミさん、どう見ても菅野美穂ファンだな・・・
まあ妻役に誰が適役だったかは、撮影が終わっている現在、「神のみぞ知る・・」ですからね。
静御前堂さんには、ぜひこの映画をご覧になった後で、「妻役」は誰が適しているか、再度レポートをお願いする事にしましょうか。
投稿: エムズの片割れ | 2008年10月11日 (土) 23:33
今は大変な騒ぎですが、この日のブログでのご紹介を読んで早速、はるばる隣の県まで観に行ってきました。CDも買いました。
あなた様のエッセイを読んでいて本当に良かったと思っています。
投稿: 冬野 道 | 2009年2月25日 (水) 02:19
冬野さん
コメントありがとうございます。「良い映画」というのは、誰の胸にも届くものですね。それを実現するのは、チェロまで弾けるように練習する“役者魂”なのでしょうか?
このような作品が多く出来ると良いですね。
投稿: エムズの片割れ | 2009年2月25日 (水) 21:49
エムズの片割れさん、奥様
やりましたね、おくりびと
アカデミー賞、受賞 エムズさんの予感が
ピッタリ的中で驚いてます。まだ私は映画見る機会が無いのですが、これだけは足を
運びたいと思います。
こういう習慣は
日本人しか分からない感性かと思いましたら
世界で絶賛される嬉しいですね、
私事で恐縮ですが余命数日と言われた母が
退院先の高度医療大病院から紹介されて来た
看護士さんが、本木雅弘さんよりも凄いイケメンで、介護のおばさんも会うのが恥ずかしいと隠れてしまう程知的で美貌です。母はこの日より
劇的な回復をしました。それから3年
クリスマスイヴの朝、母は眠ったまま天国に
召されました(没90歳)。最後はこの看護士さんが、納棺師の役割りをしてくれた姿が美し過ぎて
この映画と重なりました。現実に映画の様に
崇高な志を持っておくりびとにかかわる
高尚な医師や看護士に会えた事は最高でした。母が好きだった真っ赤なエルメスの
カシミヤに前面はシルクのプリントのセーターに雪の様に白いウールニット
スカートにパジャマから着替えさす姿が
母と初めてあった日からの思い出を愛しむように優しく頭から足先まで、整えてゆく姿は
圧倒しました。彼は家系が医者の末っ子で
30歳までカフェの店長をしてたそうです。
30歳で看護士の学校を3年かけて卒業、
年は本木さんと同年齢位でした。
母の棺はキリスト教用のグレーで母の大好きだった大輪のカサブランカ、大輪の薔薇や
可憐な花達で埋め尽くされ、母は微笑んで
ました。遠くの親戚もあまりの母の美しさに
驚いて、私の顔を見て叔母さんがOOちゃん顔や肌のいいところ
全部お母さんに持っていかれちゃったね、
言われるほど、私の顔は5年の介護でヨレヨレでしたが、人生の最後は末期まで、誰よりも大切にされた母であれば最高と思います。
その看護士さんはもう看護士センターの
所長になられました。今でも感謝と尊敬で
いっぱいです。
投稿: 向日葵 | 2009年2月27日 (金) 12:09
向日葵さん
そうですか。イケメンの介護士さんだと、90でも元気が出て生き返りますか!!
この話は貴重です。つまり「生きる意欲」で人間は生き返る、ということを示しています・・・。
(自分も病気になったら、先ずきれいな看護婦さんのいる病院を探そうかな~)
いやいや、まさに“ドラマ”のコメントをありがとうございました。母君も「終わり良ければ全て良し」で良かったですね。
投稿: エムズの片割れ | 2009年2月27日 (金) 22:49
ようやくビデオを借りて見ましたよ、おくりびと。出ている俳優さんが皆、上手でした。そして懐かしさの残る風景、建物。自然豊かな映像が自分の街のように何の違和感もなく体にしみてきて、いい映画でした。登場人物の少ないことがかえって隣近所の出来事のように感じられ、まあ広末涼子さんの不満も許容範囲かと、寛大な気持ちになっていました。いい映画を見ると人間ができてくるようです。でも、あえていわせていただければ、末広さんの表情に、OKを出した監督の責任もありそうです。こんど続編を作って、菅野美穂さん出てくださいっ。鶴の湯も閉鎖になるとか、残念ですねえ。映画でもお湯の量が少なかったですものねえ。ぜひこのまま記念館として残してほしいものですが。エムズの片割れさん、いい映画を紹介してくださり、ありがとうございました。
投稿: 静御前堂 | 2009年9月 4日 (金) 21:13
静御前堂さん
この映画が公開されたのはもう1年前ですね。広末さんは許容範囲とか・・・。まあ目くじら立てる話でもありませんね。
しかし映画はTVドラマと違って、中身が濃いですよね。でも最近はなかなか見に行けません。最近の評判の映画は何なのでしょう・・
投稿: エムズの片割れ | 2009年9月 5日 (土) 22:04