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2008年9月20日 (土)

映画「ルワンダの涙」を見て

映画「ルワンダの涙」を見て、改めてルワンダの悲劇を認識した。
Rwanda 舞台は1994年のアフリカ ルワンダ。ルワンダではフツ族(85%)とツチ族(13%)の間で長年にわたる部族間の争いが続いており、世界各国から派遣された国連治安維持軍(UN)が監視をしていた。1994年4月6日の夜、フツ族出身のハビャリマナ大統領が乗った飛行機が何者かに撃墜され、それを機にツチ族に対するフツ族の大量虐殺が始まった。
国連軍は守りの堅い(この映画の舞台である)公立技術専門学校(ETO)を防衛地点にして武装する。そしてこの学校に、ツチ族2500名余りが逃げ込むが、学校の外では日に日に血みどろの虐殺が繰り広げられていく・・・
1994年4月11日、国連軍が撤退の命令を受けたとき、海外青年協力隊の英語教師ジョーと学校長のクリストファー神父は、国連兵士たちと一緒にその場所を立ち去るべきか、それともルワンダの人々を守る為に立ち上がるべきか、判断を迫られる・・・
そして国連軍が去った数時間後、学校に残されたツチ族2500名余りは、全員虐殺された・・・。1994年4月から7月には、80万人以上のルワンダ人が集団虐殺されたという。(映画の公式HPはここ

前に「ホテル・ルワンダ」(ここ)を見ていたので時代的背景は知っていたが、最初に出た字幕「これはこの地で起きた実話である」の通り、この映画は実際の学校を使って、その虐殺から辛くも逃げ延びた人たちの体験をもとに作られたという。中には、汚物だめに14週間隠れて殺害を逃れた人や、家族の遺体の下に隠れて民兵の発見を免れた人など、(この事件を思い出したくない)何人もの体験者が、この映画のスタッフとして協力したという。

歴史的背景とこの映画の制作過程は公式HPに詳しい(ここ)。この映画は、アウシュビッツと同じく、現代版民族抹殺の事実と共に、国連の罪を指弾している。HPに、こうある。

「そしてまたこの一連の事件は、国際的な視点からみても、はなはだしい失敗の連続だった。そこには国連軍もいて、虐殺を防ごうとすれば出来たのにしなかった。国連の安全保障理事会はまざまざとその腰抜けぶりをみせつけた。国連が国連軍をボスニアに送ろうとした時点で、安全保障理事会はアフリカから逃げ出したのだ。たぶん国際機関が紛争国の仲裁に乗り出すには、二つの明確なルールがあるのだろう。その一つは当事者たちが白人であること、二つ目は当事者たちが西側が求める何かを持っていて、それが安全保障理事会の利益になるものであること、の二つだ。しかし当事者が黒人で、貧しい国であった場合は、関係ない。自分たち同士で勝手にやってくれ、となるのだ」(ここから)

しかし、この映画の原題「SHOOTING DOGS」が何とも皮肉だ・・・・。
国連軍は“監視”のために派遣されているため、集団虐殺を止めようとしない。大尉は言う。「安保理から命令されていないし、武器が使えるのは自衛のためだけ・・・・」。映画で、象徴的な、こんなシーンがあった。

・・・
大尉:
「実は犬のことで困っている。門の外で死体を食っている。衛生上の問題もあるし、撃ち殺すと皆に言ってほしい。銃声に驚かないようにと」
神父:「犬が君らを撃ってきたのか?」
大尉:「何が言いたい?」
神父:「君らが受けている命令のことだ。犬を撃つのは、先に犬が撃ってきたからだろうな」
大尉:「なあ・・」
神父:「言わせてもらう。なぜ下らん命令に従うんだ? “衛生上の問題”は次々と作り出されるぞ。連中のナタで・・」
・ ・・

このシーンが全てを物語っている。

しかし国連軍が去るときの、青年教師と神父の人生最大の判断・・・・。それはまさに生と死の判断だ。
誰もが何度か経験する人生での岐路。そこではキレイ事など言っていられない状況もある。この映画は、「その時にどうする?」という厳しい宿題を(平和ボケした)我々に問いかけている。
しかも、この内戦はたった14年前だ。(映画の公開は2005年)

ふと、ブッダの次の言葉を思い出した・・・・

<ブッダの言葉>
「実にこの世においては、怨みに報いるに怨みをもってしたならば、ついに怨みの息むことがない。怨みをすててこそ息む。これは永遠の真理である。」(「ダンマパダ」-5 中村元訳)

(関係記事)
映画「ホテル・ルワンダ」の重たいテーマ

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コメント

今晩は、“エムズ”さん!
昨日「かんぽの宿」へ、投稿したものです。
お邪魔します。即、コメント有難う御座います。帰宅後の執筆、ご苦労様です。

「ルワンダの涙」、レンタルDVDで見たのですが、最後の協会へフツ族が乱入する時、リーダー「作業かかれ!」号令が、“日本語”そのママに聞こえましたが、私の勘違い・空耳でしょうか?国連軍の指揮官Romeo Dallaire氏は帰国後、トラウマに悩まされ、ホームレスになったとか-著“Shake Hand with the Devil”があります。邦訳なし。老婆心ながら

“エムズ”さん、先日NHK-BS“世界ドキュメンタリー・シリーズ:リベリア内戦”放送を
DVDに録画したのを見ようとしましたのですが、チョッと引きました。少年兵-昨年12月、TV“世界一受けたい授業”紛争解決人・伊勢崎賢治氏を見るまで、その成立ちから“可哀想”と思っていましたが、妊婦の腹を裂き、胎児の男女をギャンブルの対象にしたとか!-14歳以下の少年は国際法廷でも裁けないとか!?-更生?
また、NHK-TV“沸騰都市南アフリカ”-マンデラ氏と共に、白人政権に抵抗した人が、優遇され“ブラック・ダイヤモンド”と呼ばれる富豪になっているとか、人間の“富への執着心”-遣り切れませんね!

お邪魔しました。
貴サイトの趣旨・格式を乱してすみません。

投稿: 小笹仁 | 2009年2月 5日 (木) 00:27

今晩は、“エムズ”さん、変な・貴サイトには馴染まない・生臭い文章を投稿しました。
放って、ダンマリを決込もうと思ったのですが……

2/2、NHK-BS“リベリア-内戦を終わらせた女たち”
1997年、武力蜂起(民衆にレイプ・虐殺・テロ・少年兵)により独裁・腐敗国家が樹立されたのですが、1989年、反政府勢力による武力闘争が勃発。またもや、少年兵の登場するのですが、一切の犯罪行為を不問。多数の男達が、抜身のナイフを片手に人を襲うシーンがあり、実写だけに寒気・吐き気がしました。少年兵には、麻薬を使用していた。ディカプリオの映画“ブラッド・ダイヤモンド”舞台は、シエラレオネでしたか、少年兵の採用には、麻薬使用。話としては聞いていたのですが、余り現実感無かったのですが!当TV、実写だけに凄さが、……
“世界一受けたい授業”-紛争請負人、伊勢崎賢治:インドネシア・東チモール・アフガニスタン・シオラレオネで武装勢力の武装解除を国連・日本政府の依頼で行った人物なのですが、その人の話なのですが、「提示した条件とは、反政府組織の首謀者の戦争犯罪を問わない」→副大統領へ
早く紛争を終結するためなのだそうです。
氏「国際法廷を開くには、莫大な金と時間・労力がいる。10人未満でも、10年以上かかる。…その割にちゃんと裁ける人数はごくわずか。だったら全員許しちゃおって…やっぱり国際正義は金次第…でも、正義を執行しないと虐殺は再発します…紛争被害者にしてみればたまったものじゃないですよね。自分の親、兄弟、妻子を殺したり、手足を切ったり、レイプしたり、やりたい方題してきた兵士を、平和のために銃を捨てたのだから、許してあげましょう、和解しましょうって言われても…被害者にも感情移入してあげなくては…でも日本を筆頭に先進国の人たちはそれが出来ない。日本の若い人たちは、自分の立場に置き換えて考えてみてと言っても“許せるんじゃないかな?”“暴力では何も解決しない”“復讐は暴力の連鎖をまねくだけだ”なんていうんですよ。」
少年兵は麻薬を与えられる事も一因らしいのですが、自己の優位性を誇示するために、狂気がエスカレートするだそうで、14歳の司令官?-リーダーがいたそうです。彼らは「言い訳は色々するのだが、そんなに深くは考えていないですよ。絶対に楽しんで人間を殺してたね。」
カンボジアでも、ポルポト政権下の虐殺者たちも、お咎め無しで元の生活を過ごしているそうです。
1/25、NHK“沸騰都市ヨハネスブルク“黒いダイヤ”たちの闘い”
豊富な鉱物資源と“黒いダイヤ”と呼ばれる黒人層の拡大で急成長を遂げているのだそうですが、旧黒人居住区ソウェトに住む人たちはそのママ…マンデラ氏と白人政権に抵抗した人には、富の分配が優先され貧富の差拡大して不満が吹き出しているそうで…その富を狙って中国人とインド人が進出しているそうで、
ジンバブエも、かつては農産品輸出国だったのが、白人農園主を追いたて、政府関係者が代わりに、でも農業知識・農園経営能力がなく、超インフレで食料品輸入もままならなとか
インドネシアの元・前(?)スハルト大統領夫人は“ミセス10%”と呼ばれていたらしいですよ。OEDの10%を懐に…。フィリピンのマルコスなんて人もいましたね。

旧ソヴィエト政権、ブレジネフ首相:大の車好きだったそうで、
ある日、老母を別荘に連れて行き、別荘・車を見せ、自慢したのだが、老母は話に乗ってこなくて
(ひっそり声で)「お前、赤軍がやってくるよ!」

“エムズ”さん、人間の欲望って限りないのですね!墓場にもっていけないのに!

(かく言う、私もbit money & LOVEが欲しい!)
失礼しました。

投稿: 小笹仁 | 2009年2月 5日 (木) 21:44

小笹仁 さん

コメントありがとうございます。
NHK sp「沸騰都市ヨハネスブルク“黒いダイヤ”たちの闘い」を先ほどやっと見ました。
当サイトでも映画「マンデラの名もなき看守」について書いたことがありますが、あのマンデラと親交があった人が、そのツテで今は莫大な財を築いているという話に、何ともやり切れない気持ちです。まさかそれを狙って運動を展開していた訳では無いでしょうが・・・。
「リベリア 内戦を終わらせた女たち」も2/9の朝に再放送されるらしいので、予約しました。見たらコメントします。
また良い番組をご覧になったら教えて下さい。ありがとうございました。

投稿: エムズの片割れ | 2009年2月 8日 (日) 00:22

『ルワンダの涙』見ました。

>しかし国連軍が去るときの、青年教師と神父の人生最大の判断・・・・。それはまさに生と死の判断だ。

おっしゃる通り「自分ならどうするのか」という質問を投げかけられた映画でした。

いつまでも心に残る作品との出会いに感謝です。

【エムズの片割れより】
事実に基づいたドラマは、心に残りますよね・・・

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2014年6月 8日 (日) 12:09

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