雪村いづみの「約束」
さっきNHK BS2の「蔵出し劇場」の(1983年放送の)「夜の指定席」という番組で、若き雪村いづみが歌っていた。それでフト、雪村いづみの「約束」という歌を紹介したくなった。
Wikipediaによると、この歌は「1964(昭和39)年1月に大阪労音リサイタルで発表された痛烈なる反戦歌」、とある。先ずはこの歌による壮絶な“ドラマ”を聴いてみよう。
<雪村いづみ「約束」>
「約束」
作詞:藤田敏雄
作曲:前田憲男
歌 :雪村いづみ
その日 ぼくが石けりしてると パパが家から出て来ていった
「坊や いそいで帰ってくるんだ ママがお前に会いたいそうだよ」
ぼくはパパに小声で尋ねた
「そいじゃ ママはもう死んじゃうの」
するとパパは静かにいった
「そうだ坊や ママは死ぬんだ だけど坊や 泣くんじゃないぞ
みんな誰でもいつかは死ぬんだ 坊やわかるな お前は男だ
歯をくいしばり 耐えて行くんだ どんなときでも弱音を吐くな
男らしくやるんだ頼むぞ いいか坊や 約束してくれ」
ぼくはパパに約束をした
ぼくが走って帰るとママは 白い顔してベッドに寝てたが
ぼくに やさしく笑ってみせた
「坊や 元気で大きくなるのよ」
ぼくもママに笑ってみせた
だけどぼくは見たんだ そのとき ママの瞳にうかんだ涙を
ママはママは泣いているんだ
そうさ ママは考えてるんだ ぼくのことを心配してんだ
自分が死ぬということよりも ぼくのことだけ考えてるんだ
ぼくは思わず神に祈った
「どうかママを助けておくれよ ママが死んだらぼくも死んじゃう
どうかママを殺さないでよ
どうか神さま お願い 神さま どんなことでも ぼくはするから
夜ねる前に歯をみがくから ごはんの前に手も洗うから」
だけどママはその夜おそく そっと淋しくこの世を去った
ずっとぼくの手をにぎりしめ 涙うかべてこの世を去った
ムリさムリだよ 泣くなっていったって
ダメだ そんなの そんなの絶対ダメだよ
だって だってママが死んだんだ
ぼくは泣いた やっぱり泣いた ママ
だけどぼくは ぼくは男さ そのあくる年 あの戦争で
パパが死んだと聞いたときは ぼくはそのとき 涙をこらえた
ぼくはそのとき約束まもった
この6分40秒余の大作は、まさに「ドラマ」である。もちろん「歌」はドラマだ。歌には、その少ない言葉(歌詞)の中に、凝縮された世界がある。しかしこの歌は、かなり写実的だ。聴いているとその場面が目に浮かぶ・・・。
同じように感情をぶつけた歌では、前に紹介した中島みゆきの「うらみ・ます」(ここ)があった。スタジオライブで泣きながら歌う中島みゆきも凄かったが、この「約束」もすごい・・・。
話は変わるが、親と子の絆は、何故か母と子の関係が深い。それに比べて、父と子は希薄・・・。この原因は、カミさんに言わせると「生みの苦しみ」から来ているという。娘が子を産んで母になった時、これほどの苦しみの中で生んでくれた自分の母親との関係が激変するという。自分には分からんが・・・。
そういえば、今朝、NHKラジオ深夜便「こころの時代」で「亡きわが子に導かれて~いのちをバトンタッチする会代表 鈴木中人」(08/8/25~26放送)の話を聞いた。この放送の中で、鈴木中人氏が次のようなエピソードを紹介していた。ある学校の校長が教室をたまたま通りかかったら、飼っていたウサギが死んで、新任の先生が生徒にこう教えていた。「死んだものは腐る。ちゃんとパッキングして生ごみで捨てろ。ばい菌が付くといけないので良く手を洗え・・」。後で校長が「なぜ手を合わせて天国に行ってください、と教えないのか?」と聞くと、「学校でそんな宗教的なことを教えて良いのか?」と言われ、言葉を無くしたとか・・・。ともあれ、「いのちの大切さ」は永遠である。
話が大分それたが、この歌は、我々がいつも“当たり前”と思っている「いのちの大切さ」を、高らかに歌っているような気がするが、どうだろう?
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コメント
あまりに壮絶で、コトバが探せません・・・
関連して、「うらみ・ます」も拝聴しましたが今夜は眠れないかも?です。
父子・母子の関係、私事ですが「ひとり事さん」にメールした内容とのシンクロに驚きです!
投稿: 花舞 | 2008年9月 4日 (木) 00:46
花舞 さん
この歌を聞いていると、ついその世界に引き込まれて同化してしまいますね。
投稿: エムズの片割れ | 2008年9月 4日 (木) 21:28
中学3年ごろ受験勉強の前に布団の中でよく聞いてました。ラジオ大阪の深夜放送だったかな。
何度聞いても、涙が出てきて止まりませんでした。
よく、当時交際中の彼女に、この時間に手紙も書いていたのですが、便箋に涙が一つ落としたものを、そのまま送っていましたが、まあ必要以上にセンチメンタルになっていたのも、思い出します。
懐かしい です。
【エムズの片割れより】
これは反戦歌のようですが、最近どうもこんな歌が気になります。
自分は大分歳を取ってからこの歌を知りました。
投稿: ロックハート | 2015年4月 6日 (月) 16:19