谷村新司の「群青」
先日放送されたので録っておいた映画「出口のない海」を見た。ちょうど昨日が終戦記念日だったが、この映画のテーマは人間魚雷「回天」。何ともやりきれないテーマではある。特攻で死ぬと「軍神」になるという。そして死ぬ積りで回りに挨拶をして、イザというときに回天の故障で出発できない・・・。そして生きて戻ってきた時の、周囲の冷たい眼・・・。
この映画でも、最後の場面で回天が故障して海底に突っ込み、そのまま死を迎える場面が出てきた。まさに「出口のない海」である。爆死よりも悲惨・・・
特に回天は終戦間際の作戦のため、機械の故障も多く、事故で死ぬ例も多かったように聞く。飛行機の特攻隊もそうだが、人間の死を前提とした作戦は、何ともやりきれない。そういえば、ニュー・ヨークの同時多発テロも同じだし、自爆テロもだ・・。
この映画を見ながら、フト谷村新司の「群青」という歌を思い出した。この曲は、1981年(昭和56)年7月発売で、同じ年に公開された東宝映画「連合艦隊」の主題歌だという。
少し聞いてみよう。この音源はオリジナルのCDとは別の音源(編曲)である。
<谷村新司「群青」>
「群青」
作詞/作曲:谷村新司空を染めてゆく この雪が静かに
海に積りて 波を凍らせる
空を染めてゆく この雪が静かに
海を眠らせ 貴方を眠らせる手折れば散る 薄紫の
野辺に咲きたる 一輪の
花に似て儚なきは人の命か
せめて海に散れ 想いが届かば
せめて海に咲け 心の冬薔薇老いた足どりで 想いを巡らせ
海に向いて 一人立たずめば
我より先に逝く 不幸は許せど
残りて哀しみを 抱く身のつらさよ君を背おい 歩いた日の
ぬくもり背中に 消えかけて
泣けと如く群青の海に降る雪
砂に腹這いて 海の声を聞く
待っていておくれ もうすぐ還るよ空を染めてゆく この雪が静かに
海に積りて 波を凍らせる
空を染めてゆく この雪が静かに
海を眠らせて 貴方を眠らせる
思い出すと、この歌を知ったのは1980年代後半だった。会社の飲み会の後、上司達と二次会に行き、そこで上司がカラオケでこの歌を歌った。そこで曲名を教えてもらって、早速仕入れたという訳。この頃は、とても新たらしい曲を仕入れるヒマもチャンスも無かった。
話が変わるが、靖国神社で「回天」を見たことがある。数年前、世の中が小泉首相の靖国神社参拝で騒々しかった時に、一度も行ったことが無いのも失礼?かと思い、会社の創立記念日で半ドンだった日に、行ってみたことがある。中に立派な博物館があり、飛行機や回天が展示されていた。
昔、子供のときに「人間魚雷回天」という映画(1955年公開)を見たことがあり、映画の内容はすっかり忘れたものの、「回天」という名前は強烈に覚えていた。それで、実物を興味深く見たものだ。
今しみじみとこの曲を聞きながら、歌詞をかみ締めると、戦争の哀しさが伝わって来る。特に終戦前夜に空襲に遭った熊谷市や、「回天」等の機械の故障など、理由は別にして、本来死ななくても良かったのに死んで行った人の無念さは察して余りある。
あまり関係ないが、谷村新司の「群青」でも聞きながら、戦没者の追悼をしようか・・・。(戦後63年・・・。戦争を風化させないために)
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コメント
夫の唯一オハコ?の一曲ですが・・・今日のエムズさんのコメントで想いが新になりましたァ~・・・
私のブログでアクセスカウンターが過去トップは谷村新司さんのライブ報告の時で、100件を超えてましたァ~・・・
何度聞いても、心に染み入り、しんみりと涙がこぼれて来ます・・・
投稿: 花舞 | 2008年8月17日 (日) 01:30
花舞 さん
この歌をカラオケで歌うのは至難のワザですが・・・。
イイですね~。ライブとは・・・。
小椋桂にも行かれるとか・・・。自分の小椋桂人生も、大分(の友人宅)で「彷徨」のレコードを知った時に始まります。
投稿: エムズの片割れ | 2008年8月17日 (日) 22:10
昔、鹿児島市の海辺にあった旧空港を飛び立ち、知覧・開聞岳・佐多岬・純白の灯台・鹿屋基地等の上空を回ったことがあります。知覧も鹿屋も陸軍と海軍の特攻基地です。何かにせき立てられる思いがして、もう一度操縦して同じコースを辿ってしまいました。
後日、不完全な特攻兵器で部下を死地に赴かせるのは忍び難し、と言って先導機で出撃し、部下共々全機散華した「桜花」神雷部隊長が我が家に縁があることを知りました。
この歌を聴くと、あの群青の海が目に浮かび滂沱を禁じ得ません。ですから深夜一人で聴くことにしています。
取り上げて下さって有難うございます。
投稿: 紺碧 | 2008年8月18日 (月) 05:25
紺碧 さん
コメントありがとうございます。
歌(詩)に込められた“想い”は、それを聞く人の心に様々な波紋を与えます。音楽とは不思議な「生き物」ですね・・。
我々がうかがい知れぬ体験をされた由。
段段と風化して行く日本の「戦後」の一方で、世界のどこかでは今も戦争をしている現実・・・・。
何とも複雑な終戦記念日ではありますね。
投稿: エムズの片割れ | 2008年8月18日 (月) 19:07
{群青}キーワードでぐーぐるからたどって来ました。音楽で谷村新司「群青」がヒットしたようです。
はじめまして。
群青という曲タイトルの曲は、福山雅治、スピッツとあわせて三つあるそうです。
歌謡曲やJ-popsなど、かなり集められたんですね。
よくまめに集められたものだと感心しています。
私のほうは、ブログ立ち上げたばかりですが、トップの記事に石井明美「バラード」をYouTubeから借りてきました。
また、覗きに参ります。宜しくお願いいたします。
【エムズの片割れより】
コメントありがとうございます。同じ“群青”でもだいぶん違いますね。またよろしくお願いします。
投稿: 群青 | 2010年7月23日 (金) 21:34
哀しい歌ですね。「雲こそ我が墓標 落暉よ 碑銘を飾れ」(阿川弘之)が浮かんできました。ふるさとでも先の戦争で多くの人が亡くなりました。父の兄は終戦間近に、台湾沖で消えた(沈んだ)そうです。いつか仏前で伯母が「何も遺品は届かなかった」と言われていました。
1944年5月27日ニューギニア・ビアク島沖でアメリカ駆逐艦に体当たりして散華、後の陸軍特攻隊の嚆矢となったと言われる陸軍第七飛行団第5戦隊隊長高田勝重中佐は我が町の出身です。自分に厳しく部下には慕われていたそうです(戦争の時ゆえかほとんど語られていません)。実家には同級生が嫁入りしています。
残された家族の悲しみを知るためにも、宅島徳光氏の遺稿「くちなしの花」は読み継がれていってほしい、と思う者です。
【エムズの片割れより】
戦争の事を思うと、何とも言葉が出てきません。我が家は、戦死者が居なかったので、意識が薄いこともあるかも・・・・
投稿: 植松樹美 | 2010年11月 3日 (水) 20:46
植松様
『雲の墓標』懐かしいです。映画「空ゆかば」を思い出します。もう半世紀たちます。学生役の渡辺文雄も田村高広もあの世へ旅立ちました。本はまだ手元にあります。その頃恋した美しい青年が防大に進学したショックはまだ私の心に傷となって残っています。戦争もなく彼もまだ元気で執筆などをされていることが最近わかりました。平和であったればこその命です。戦争を美化させないようにしたいものです。
投稿: 白萩 | 2010年11月 7日 (日) 22:32
白萩様
ありがとうございました。先の戦争で旧軍が勝ち残っていましたら、日本はさらに苦汁を飲み続けていたのではと思います。そして、我々の若かった頃を当然含んで多くの若者が戦争に引き込まれ戦死していった可能性があると思います。それは「海を眠れ」の澤地氏も言われていたと思います。かなしいことに世界史はこれまで然るべく力で守ろうとしない文明国?は多く亡ぼされていったことを教えているようです。「身捨つるほどの祖国はありや」と問われるとき、身を捨てる覚悟を気負うことなく内にして、平和を志向することができた人は爽やかだと思います。
あらためて、エム様のブログに感謝申し上げます。
投稿: 植松樹美 | 2010年11月 8日 (月) 11:10
一輪の冬薔薇・・・
雪の中に一輪の薔薇が咲いていました。
何で、この時期にと思い調べたら咲き残りの
「冬薔薇」だったのです。
そして「群青」を聞いたらその一節にありました
もう、一輪の薔薇は散りました・・・。
「花に似て儚きは人の命か」を想います。
投稿: マリオ | 2017年3月15日 (水) 10:28
戦艦大和の水上特攻で散った多くの将兵に対する鎮魂歌です。
夫を失った妻を演じた古手川祐子、そして我が子に先立たれた父親役の森繫久彌。
名演技でした。
知覧の特攻記念館は2度ほど訪れていますが、若くして散った飛行兵の遺書には何度も涙しました。
ロシアとウクライナの戦争、いずれにしても人間同士の醜い戦いに勝者はありません。
【エムズの片割れより】
先日、映画「ホタル」を見ました。
せめて日本だけは、憲法の平和主義を永遠に守りたいものです。
投稿: 牧山雄男 | 2022年6月 4日 (土) 10:43
映画「連合艦隊」映画で鑑賞しました。水上特攻の大和の最後、そして、若くして逝った息子の死を悼む年老いた父親の森繫久彌・息子の妻を演ずる古手川祐子、愛する人の散った海を眺めるラストシーンは印象的でした。
知覧の特攻平和会館は二度ほど訪れています。
生きていれば日本の復興に大きく貢献したであろう、若き特攻隊員の遺書は見るたびに涙を誘います。
この曲は、戦争で散った多くの若者への鎮魂歌であり、谷村新司の名曲ですね。
【エムズの片割れより】
過去と思った戦争が、ウクライナで現実に行われていようとは・・・。言葉がありません。
投稿: 牧山雄男 | 2022年10月31日 (月) 22:26