カーン・リーの「雨に消えたあなた」と天童よしみの「美しい昔」
この2曲がなぜ並んでいるのかというと、2003年にヒットした天童よしみの「美しい昔」は、ベトナムの反戦歌手であるカーン・リー(Khanh Ly, 1945-)の「雨に消えたあなた」のカバーなのである。
「雨に消えたあなた(美しい昔)」の原題は「Diem Xua」といい、ベトナムの反戦歌だという。作詞・作曲はチン・コン・ソン(1939-2001)。
1970年、夫を殺されたカーン・リーは、ユエからサイゴンに落ちのび、大阪万博に出演して日本語盤の「雨に消えたあなた」をリリース。その後この歌は、1979 年のNHK ドラマ「サイゴンから来た妻と娘」の主題曲となって「美しい昔」に改題して1979年12月に再発して日本でも知られるようになったという。(他に、菅原やすのり(1984年)、加藤登紀子(1997年)がカバーしている)
原曲カーン・リーの「雨に消えたあなた」を聞いてみよう。
<カーン・リー「雨に消えたあなた」>~1971年1月発売
ベトナム語の歌を、訳詩を見ながら聞くのも良い。(出典はここ)
「Diem Xua」(美しい昔/雨に消えたあなた)
霧雨が 古い塔を濡らしている
君の長い手 とても澄んだ瞳
秋の葉を打つ雨音を耳にしながら
小さな靴はすり減っていく
沈んだ瞳に 長い道のりが煙る雨は 小さな木の葉に降り続く
夕暮れはいつも 雨が通り過ぎるのを待つ
君の足跡には 枯葉が静かに降り積もる
苦しむ君を想い 不意に心が痛む雨は今日も降るのに 君はなぜ戻らないのか
心が痛む時 いつも君を想っている
痛みと想いはなぜいつも一緒なのか
早く戻って来ておくれ雨は 波乱の人生に降り続く
墓標が痛みを知らないと なぜ君にわかるのか
雨よ この広い大地に降っておくれ
これからも僕が 彷徨い続けられるように小石のように寄り添える日が
いつかきっと来る
そして、この歌が、天童よしみの手に掛かるとこうなる。少し聞いてみよう。
<天童よしみ「美しい昔」(New Ver)>
「美しい昔」
訳詞:高階真
歌 :天童よしみ赤い地の果てに あなたの知らない
愛があることを 教えたのは誰?
風の便りなの 人のうわさなの
愛を知らないで いてくれたならば
私は今も あなたのそばで
いのち続くまで 夢みていたのに
今は地の果てに 愛を求めて
雨に誘われて 消えて行くあなた来る日も来る日も 雨は降り続く
お寺の屋根にも 果てしない道にも
青空待たずに 花はしおれて
ひとつまたひとつ 道に倒れていく
誰が誰が 雨を降らせるのよ
この空にいつまでも いつまでも
雨よ降るならば 思い出流すまで
涙のように この大地に降れ私は今も あなたのそばで
生命つづくまで 夢みてたのに
今は地の果てに 愛を求めて
雨に誘われて 消えて行くあなた
心に滲みる歌には、それぞれ歴史があるようだ。
カーン・リーという歌手も、ベトナム戦争のかげで、夫が目の前で殺されるような凄まじい過去があるという。それだけに、昔の歌声は(今の美しい姿を見ても)なぜか淋しい。
話は変わるが、家族で(といってもカミさんと)海外旅行に初めて行ったのはタイだったが、2度目(2002年4月)に行ったのがベトナムだった。朝早くからの、バイクでの人の猛烈な流れ(動き)に、戦争の痕跡を打ち消すような、圧倒的な活力を感じた。学校は、校舎が少ないので朝早くから昼までの午前の部と、昼からの午後の部とに分かれていると、その時は聞いた。今はどうだろう?
付録に、そのときの写真を何枚か付けておく。若いエネルギッシュなベトナムに幸あれ・・・・・と。
●メモ:カウント~13万
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コメント
日本語の歌詞では、感情移入は難しいのでしょうか?ベトナム語での歌唱はさすがで、涙が流れ落ちてきました。目の前で愛する人々が殺される事を、私は想像することさえできません。ただ、彼女の悲しみをもろに感じてしまったようです。ところで、日本でも2部授業はありましたよ。地方ではなく都内の大田区では、戦後昭和20年代の後半、人口が急激に都市部で増えだして、私も2部授業の経験をしました。30年代になるとそれもなくなりました。ほんの一時期、そんな事がありました。2部授業とは、生徒の数が多くて、教室を午前、午後で2クラスが使うという事。
【エムズの片割れより】
そうですか・・。自分は団塊の世代の中心でしたが、2部授業はありませんでした。今は少子が社会的な大問題。時代は変わりました。
投稿: 中野 勝 | 2011年7月29日 (金) 10:33
「赤い地の果てに」の歌い出しでここにたどり着きました。
映画「バグダッド・カフェ」のテーマと同じくらい小生の深部で澱んでいる歌です。カーン・リーって言うんですね、歌手の名前。ベトナム語の部分が、ベトナム戦争の戦場写真と重なって嫋々と響いてきます。大阪万博の印象が強かったので一緒に記憶に刻まれたのもあるかもしれません。
【エムズの片割れより】
“(戦争の悲惨な)現実”が背後にあると、歌の旋律も、切々と我々の心に響きますよね・・・。
投稿: 的場右近 | 2011年9月12日 (月) 13:20
とても、切なくて、悲しくて、美しい歌ですね
時々聴かせてください
心に沁みます。
投稿: hana | 2011年11月28日 (月) 02:30
やはり天童よしみの「美しい昔」ではなく、カーン・リーの「雨に消えたあなた」ですね。天童よしみには悪いですが、思い入れが全然違います。
「雨に消えたあなた」のレコード(レコードなどあまり買わなかった私が)を持っています。
最近知ったのですが、春日八郎の「ロザリオの島」も気に入っています。
【エムズの片割れより】
春日八郎の「ロザリオの島」ですか・・・
もちろん自分も持っていますが、まるで声楽家のように、歌が上手ですよね。
投稿: 虎野 | 2013年2月 1日 (金) 19:46
すごくなつかしいです。ずいぶん経ちました。私はNHKテレビでドラマを見てこのレコードを買いました。ドラマは産経新聞の有名な記者(Kさん)の実話です。原作も買ったんですよ。---今、本棚から「サイゴンから来た妻と娘」もってきました。いろんなことを思いだすなあ。---後日、天童よしみの「美しい昔」を初めて聞いたときはびっくりした後で、ギャップで不思議な気分になりました。
【エムズの片割れより】
ドラマでもこの歌が使われたんですか・・・
投稿: 狩野長昭 | 2015年2月 5日 (木) 17:10
泣けました・・・・
子供の頃、心に引っかかって、レコードをかって貰いました。
急に思い出し、{ベトナム戦争/赤い地の果てに}で検索して再会できました!
UPありがとうございます!
また、聞けるとは・・・
何度も繰り返し聞いて、しみじみ泣いています
【エムズの片割れより】
天童よしみがこの「美しい昔」を歌ったのは2003年だったようです。
自分の年代になると、つい先日、のような気がしますが、聞いていると、その当時のことを思い出します。
投稿: とみながようこ | 2016年9月28日 (水) 22:37
この歌を始めてきいたのは、たしか竹内てるよさんの、ことを書いた本をドラマにしたときの、挿入歌だったです。当時美智子皇后がてるよさんの詞を絶賛してこのドラマが生まれたと、思います。
こんなに素晴らしい曲に感動していつも聞いています。🤟🎌🏳️🌈🚩
【エムズの片割れより】
Netで「竹内てるよ」ググると、wikiに「自伝小説『海のオルゴール』は、これまで2回TVドラマ化されている」とありました。
これですかね・・・?
いやいや奥が深いですね。
投稿: 佐藤美紀子 | 2020年10月29日 (木) 21:03