ロシア民謡「鶴」は広島の原水禁大会がきっかけ・・
前に録ってあったNHKラジオ深夜便「人生“私”流『ロシアの魂を歌い続けて』バス歌手…岸本力」(08/5/4放送)を(今頃・・)聞いた。番組の最後で、岸本力氏が「鶴」を歌ったが、その解説で「この曲は、ガムザートフというロシア人が広島の原水禁大会に参加した時の印象をもとに書いた詩に、フレンケリが作曲したもの。広島の千羽鶴を見て、“鶴となって天国に行って下さい。戦場の死骸を見ながら、彼らの魂も鶴となって舞い上がって幸せに生きてくれ”といった内容・・・」という話を聞いてビックリ。
と言うのは、久しく鮫島有美子の「鶴」を聞いてきたが、その歌詞に「広島原爆」の影は見えなかったし、てっきり昔のロシア民謡だと思い込んでいたから・・・
前にこのblogでも書いたが(ここ)、鮫島有美子の「鶴」の編曲は素晴らしいし、もちろん鮫島有美子の歌も珠玉である。
<鮫島有美子の「鶴」>
「鶴」
作詞:フェオクチーストフ/訳詞:中村五郎
作曲:フレンケリ/編曲:青木望
指揮:青木望/演奏:室内オーケストラ1)空とぶ鶴の群れの中に
あなたはきっといる
きっと このわたしをまっている
激しいたたかいの日も 空に群れてとぶ
美しい鶴の群れ あなたはそこにいる
ルルル・・・2)いくさにいのち捨てても
死んではいない
あなたはきっといる きっと生きている
このわたしを待っている
激しいたたかいの日も 空に群れてとぶ
美しい鶴の群れ あなたはそこにいる
ラララ・・・
この録音の作詞は「フェオクチーストフ」とある。ん???
それで、家に帰ってからCD(鮫島有美子「ともしび/ロシア民謡をうたう」)の解説を改めて読んでみたら「カフカス山脈とカスピ海にはさまれた小さな自治共和国ダゲスタンの詩人P.ガムザードフ(1923~)が、広島の原水禁大会に参加した時の感動をもとに書いたアヴァール語の詩。S.フェオクチーストフがロシア語訳をし、それに1969年にフレンケリが作曲した。戦場で散った戦友は死んでしまったのではなく、鶴に姿を変えて群れをなして大空を飛んでいるのだと偲んでいる。日本ではダーク・ダックスによって広く知られた。」とあるではないか・・・。
「鶴」の素性?をNetで調べたら、どうもこのような事らしい。(このHPに詳しい)
<ガムザードフの詩「鶴」の原文?>~(ここ)から引用
時々私は兵士たちのことを思う
血まみれの戦場から帰ることのなかった彼らのことを
兵士たちはいつか、わが大地で眠りについたのではなく
白い鶴に姿を変えたのだ、と
彼らはあれから今もずっと
飛び続け、私たちに空から話しかけている
そのせいではないだろうか、空を見上げて
幾度となく悲しげに私たちが押し黙るのは?
空を飛んで行く 疲れた楔形の群れが
夕暮れの霧の中を飛んで行く
その列の中にある小さな隙間は
もしかすると、私が入る場所なのかもしれない!
いつの日か私も鶴の群れと一緒に
この青灰色のもやの中を飛んで行く日が来る
空から鳥のように声をあげながら
地上に残る人々みんなと別れていくのだ
(中島章利 訳)
それを、フェオクチーストフがロシア語に訳したのが、ダーク・ダックスや鮫島有美子が歌っている歌詞。
そして、同じ詩をガムザードフのコンビであるユダヤ人の詩人ナウーム・グレブニョーフがロシア語に訳したのが、以下。
<ナウーム・グレブニョーフの訳の「鶴」>~(ここ)
「鶴」
作詞:R.ガムザト/フナウーム・グレブニョーフ訳
作曲:Y..フレンケリ
訳詞:坂山やす子
1)Ahー Ahー Ahー Ahー
私はふっと思う 傷つき帰らぬ兵士ら
異国の土に眠り いつしか白い鶴に
鶴は昔から今も 訪れては声伝う
それ故か いつも切なく 声もなく 空見守る
2)Ahー Ahー Ahー Ahー
日暮れの霧の空を 疲れた渡り鳥が飛ぶ
あの列の中の隙間は もしや 私の為に
やがて鶴の群れとなり 青い夕もやを飛び立とう
大空へ 鶴の言葉で 世の人々 偲びつつ
Ahー Ahー Ahー Ahー
なるほど・・・・
確かに、歌うのは鮫島有美子の歌詞のほうが良いな・・・・。
しかし、これも「ロシア民謡」と言うのだろうか? (ここ)によると、「鶴」は「大衆歌曲(日本で言えば歌謡曲、流行歌か)として作られた」とあり、これも「ロシア民謡」と位置付けている。
何れにせよ、ガムザートフが参加した原水禁は1965年であり、「鶴」が作曲されたのが1969年である事が分かった。予想外の新しさ・・・・
でも名曲は名曲だ。最後にこの「鶴」を、前にこのblogで紹介した(ここ)ロシア人歌手「IOSIF KOBZON」の歌で聞いてみよう。まさに「ロシア民謡」的な朗々とした歌声だ。
<ヨシフ・コブゾン(IOSIF KOBZON)の「鶴」>
*蛇足:カミさんにこの記事を読ませたら、「鮫島さんの歌詞は何を言っているか分からない。キレイ事はキライだ。“私はふっと思う・・”の歌詞の方が、リアリティがあってよっぽど良い。見解の違いだ・・・」という。実は我が家では、いつも意見が合わないのであ~る・・・
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コメント
合唱団[鶴]を主宰しておられる桜井武雄さんと言う方が訳された詞が元のガムザトフの詞に最も近いと思います。ご関心があればメールでご連絡を。
投稿: | 2008年9月 4日 (木) 22:22
You Tube にアップした「鶴」の音飛びを修正しました。どうやらセキュリティフィルターのいたずらだったようです。(12.07.08)
【エムズの片割れより】
それは良かった・・・
投稿: cello7496 | 2012年7月 8日 (日) 09:52
この曲が単に兵士を弔うための曲か、平和や反戦を願う曲なのか・・・は歌詞からは伺えないが、原水禁ということを考えると単に弔うだけの曲ではないような。ロシアでは多く歌われているようだが、本当はロシアから平和と反戦を発信する歌であってほしいな。
【エムズの片割れより】
世界では今でも戦禍が絶えません。
人間とは何と愚かな存在でしょう。しかも、日本でもそれを心配する時代が来ようとは・・
投稿: 押藤 斗歌 | 2017年3月17日 (金) 23:49
私も時々うたいます、マサカ原水禁が、初めて知りました、私は浜松在住、5月6日にはこの唄を言語で唄う勉強会があります、、不思議、、この歌メロディは、谷村新司の群青、、そっくり?
【エムズの片割れより】
言われてみると、確かに似ていますね。
しかし群青は1981年、鶴は1989年発表とあるので、まねた訳では無さそうです。
日々、無数の音楽が作曲されています。
似ない方がおかしいと思います。
投稿: エデイ 鈴木 | 2024年3月23日 (土) 09:37