映画「東京オリンピック」と円谷幸吉の遺書
昨夜(08/5/17)、NHK BS2で「日めくりタイムトラベル-昭和39年!-」という番組を放送していた。DVDレコーダに録っておいてざっと見たのだが、印象に残ったのが、市川昆監督の映画「東京オリンピック」と、そのマラソンで国立競技場で2位から抜かれて3位にはなったが、東京オリンピックで唯一の陸上競技メダルを獲得した円谷幸吉の姿だった。
映画「東京オリンピック」は、当時のオリンピック担当大臣 河野一郎が「記録性に欠ける」と批判したことから、「記録か芸術か」という論争になったのは有名な話。
思い出すに、この映画は高校2年のとき、学校から“見に行け”という話があり、ある一日、授業の替わりに映画館に見に行った記憶がある。
NHKの番組では、市川昆監督の映画の舞台裏や、「記録か芸術か」の論争を話題にしていたが、“もう一度見たいな・・・”と思ってネットを検索していると、何と「YouTube」に載っている(ここ)。
全編を20に分割しているが、まさにビデオオンデマンドで居ながらにして見られるのはスゴイ・・・・。(つい懐かしく、見てしまった・・・・)
そして、TVでもこの映画でも出ていたが、マラソンの円谷幸吉の姿・・・。直ぐに思い出されるのが、かの有名な遺書(血に染まった・・)である。
父上様 母上様 三日とろろ美味しうございました、干し柿 もちも美味しうございました、
敏雄兄、姉上様、おすし美味しうございました、
勝美兄姉上様、ブドウ酒、リンゴ酒美味しうございました、
巌兄姉上様、しそめし、南ばんづけ美味しうございました、
喜久造兄姉上様、ブドウ液、養命酒美味しうございました、又いつも洗濯ありがとうございました、
幸造兄姉上様 往復車に便乗さして戴き有難うございました、モンゴいか美味しうございました。
正男兄姉上様、お気を煩わして大変申し訳ありませんでした、
幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敬久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正嗣君、立派な人になって下さい。
父上様 母上様 幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません
何卒 お許し下さい。
気が休まる事なく、御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません、
幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました、
校長先生 済みません、
高長課長 何もなし得ませんでした、
宮下教官 御厄介お掛け通しで済みません、
企画課長、お約束守れず相済みません
メキシコオリンピックの御成功を祈り上げます、
一九六八・一、
この遺書は、実に哀しい。「美味しゅうございました」と繰り返される家族への感謝。そして「もうすつかり疲れ切つてしまつて走れません」という逃げ場の無い心の吐露・・・・。
実家(地須賀川市)の隣には、家族(兄弟)が開設した「円谷幸吉記念館」があったが、遺族の高齢化により2006年の秋に閉館したという。
世は、競泳のスピード社の水着の採用問題で騒がしいが、スポーツは時代が変わっても肉体の戦いである事は変わらない。
さて、今年の北京オリンピックはどうなるのか・・・
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