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2008年3月 6日 (木)

腸内細菌と免疫~藤田紘一郎氏の話

NHKラジオ深夜便「こころの時代」で「小さな小さな友達・微生物 東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎」(08/3/4~5)を聞いた。なかなか面白い話で“目から鱗”??
話を要約すると・・・

「人間の腸内細菌は、500種類、100兆個、重さにして1.5K。乳酸菌、ビフィズス菌、大腸菌達がお互いにバランスを取り、体の免疫を高めたりビタミンを作ったりしている。しかし現代の人間社会はそうした細菌達を汚いものとして排除しようとしている。
腸内細菌は大切。人間の糞便には1g当たり1兆個の細菌がいて、体には100~150兆個の腸内細菌がいる。我々の免疫力の70%はその腸内細菌が作っている。あとの30%は心の問題。笑うとか・・・。

現代は、糞便は出た瞬間から汚いものになる。江戸時代、徳川家康が関東ローム層の関東の地に、40万の人達とやってきて、なぜ暮らせたかというと、人の糞便が肥料になったから。その頃は糞便屋、うんち問屋があった。値段は5段階くらいあって、尿と一緒になっていない糞便は高価だった。だから、当時世界最大都市の江戸は清潔な町だった。長屋でも、家賃を払わなくてもちゃんと便を出してくれれば、大家はそれが売れるので家賃の代わりになるという良い時代。
それに比べてパリは汚かった。ベルサイユ宮殿にもトイレは無かった。トイレを作ったら直ぐにいっぱいになってしまう。皆おまるを持ち歩いて、適当に捨てていた。だから2階から降ってくる便を避けるために傘が必要であり、道路の糞便を踏まないためにハイヒールが出来た。対策として、パリでは下水道を作った。
便の半分は腸内細菌だが、最近はそれが減っている。便の量が、戦前は一日平均300gだったのが、今は200g~150gになった。最近まれた赤ちゃんは、その40%がアトピーとか喘息になる。それはお母さんの腸内細菌が少なくなっているため。

清潔も、今の日本のような“し過ぎ”は良くない。表皮ブドウ球菌のような10種類の皮膚常在菌は皮膚を守っている。それを抗菌グッズなどで殺している。女性の膣の中にはデーデルライン乳酸菌がいて膣を守っている。これが膣のグリコーゲンを餌にして乳酸を作って、強力に膣の中を酸性にして雑菌が入らないようにしている。トリコモナスという原虫は常在していないが病原性はゼロ。それが膣の中に入ると餌のグリコーゲンを取ってしまう。だから餌が無くなりデーデルライン乳酸菌が死んでしまって中性になってしまう。だから雑菌が増える。最近はビデで洗いすぎて膣炎になっている人が多い。

日本の水道法は世界で一番厳しい。水道水の細菌を殺すために塩素をたくさん入れる。それを飲むので体の中の細菌まで死んでしまう。
日本人は洗えばきれいになると思っているが、洗いすぎると汚くなる。つまり薬用石鹸などで洗いすぎると、皮膚を守ってくれている細菌まで殺してしまい皮膚の病気になる。東京医科歯科大の皮膚科に来た患者の例では、3分の1が洗い過ぎが原因の皮膚病。
若い人が、一度風呂に入って石鹸で洗うと、皮膚常在菌の90%が流れた。しかし若く健康であれば12時間で元に戻る。しかし年を取るとその戻りが遅くなる。藤田氏は20時間かかった。よって1日1回までの入浴は許されるが、それ以上はダメ。アトピーになったり乾燥肌になったりする。

1950年頃は、日本人には回虫が62%いた。サナダムシとかの回虫の分泌液には人の免疫を抑える働きがあった。だから昔はアトピーとか花粉症とかのアレルギーは無かった。この40年にそれが発生するようになった。
虫が体に中にいる事は、昔から許容されていて、日本語にもたくさんの言葉がある。「虫の知らせ」とか「虫唾(むしず)が走る」とか「浮気の虫」とか。自分はその気は無いが、体の中のムシが勝手に浮気した・・・・ナンテ。

自分はサナダムシのキヨミちゃんを15年間体内で飼っていた。共生している微生物は主主に悪い事はしない。なぜなら宿主が死ぬと自分も死んでしまうし、子供を残せるのはその宿主の中だけ。だから宿主を大事にする。我々が病原体と言っているのは、他の動物で共生していたもの。それが人間の体に入ってくると病原体になる。微生物には縄張りがある。エボラ出血熱の病原菌は、昔からアフリカのミドリ猿に共生していたもの。鳥インフルエンザウィルスを無くそうとしているが、それは無理。人類が人になる前からカモ(鴨)に共生していた。それが同じ水鳥でも、アヒルに感染すると3割が死ぬ。ニワトリだと全滅。人だともっと怖い。これは、人が地球温暖化のような自然破壊で、彼達の生態系を脅かしているから異変が起きる。

大腸菌も生き物なので、抗生剤などでイジメると変身して延命を考える。その過程で157番目のO-157のようなものが出来てしまう。しかし細菌の生きる力のうち、O-157は毒素を作るのに70%の力を使い、生きるエネルギーに30%しか使っていない。だから生きるエネルギーに100%使っている雑菌が居ると、30%のO-157は弱いので、100%の雑菌に殺されてしまう。よって、雑菌のいる所にはO-157はいない。国別では米、日、仏、英、カナダ、北欧等の清潔な国でO-157は発生する。場所では、世界一清潔な学校給食の無菌の場所でのみ繁殖する。O-157の運び屋のカイワレ大根は、無菌で育てられているから。土で育てられた大根などは、雑菌が多いのでO-157はやられてしまう。
前に大阪・堺の小学校でO-157の集団感染があった。その時に児童の便を調べたデータでは、O-157菌がいっぱい居ながら一度も下痢をしなかった子供が30%いた。逆に下痢を繰り返して入院した子供が10%。入院したこの子供達を調べてみると、大変に神経質で大腸菌の数が少なかった。逆に、下痢をしなかった30%の子供には大腸菌がちゃんとあった。だから、O-157が入ってきても元から居た大腸菌がO-157を追い出したので下痢をしなかった。残る60%の子供達は、少し下痢をしたが元気だった。だから大腸菌は悪者ではなく、本当は重要な働きをしている。よってばい菌もバランス良く持っている事が重要だ。

人間は1万年前に免疫システムが完成した。だから同じ環境だと免疫システムは活発になる。人は誰でも1日に3000個のガン細胞が発生するが、TH-1免疫がそれをやっつける。・・・」

とまあ、書いても書ききれない。
しかし、全て「過ぎたるは及ばざるがごとし」ではある。
「アレルギーを避けるためには回虫を飼うこと・・・」とはビックリだが、確かに自分達が小学校の頃は回虫の話題があった。検便にもその検査があった。しかし「花粉症」という言葉は無かった・・・・。
それにしても、清潔は良いことだが人間も動物。色々な動物と共生することで、補っていた部分もあったわけだ。
“何事もほどほどに・・・”だな。

●本日カウントが6万を越えました。皆様の“ご愛顧”に感謝します。

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コメント

「女性の膣の中には.デーデルライン桿菌(乳酸菌)がいて膣を守っている。トリコモナス膣炎云々」と懐かしい言葉(文章)が出てきました。ちょっと役に立つことを打記致しておきます、御参考になさって下さい。
帯下を伴う外陰部膣炎になりましたら、薬局、医療機関を受診する前にヨーグルトを一匙膣内に入れてみます。乳酸菌がデーデルライン桿菌の役割をして結構良くなることがあります。
それで駄目なら初めて医療機関を受診します。このことを以前健康雑誌に掲載しましたら、「どのようにして入るのですか?」と言う質問を頂きましたので、単行本では図を入れて貰いました。安価優先駄目で元々でお試し下さい。

投稿: 今井 龍弥 イマイ タツヤ  | 2017年8月25日 (金) 02:53

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胎児は母親の胎内ではほぼ無菌状態ですが、新生児で割とすぐに大腸菌などが便培養で見つかったりします。 [続きを読む]

受信: 2008年3月27日 (木) 22:20

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