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2007年12月31日 (月)

映画「それでもボクはやってない」を観て

映画「それでもボクはやってない」レンタルビデオで見た。なるほど、評判の映画だけあって、見ごたえ充分。しかし何とも後味が悪い・・・・。それは映画の中身というより、日本の裁判の現実が我々に突きつけられたから・・・・。
映画とタイトルからして、冤罪事件ということは分かっていたが、被告としては、これ以上努力しようが無い。出来る限りの努力をし、証言も集めた。でも有罪となる現実・・・・
その背景には、裁判官が一人で百件以上の事案を抱えて、忙し過ぎる現実。そして痴漢行為に対して、世間の目線があくまで女性側に立ち、「女性は正しい」との予断・・・。そして私人による現行犯逮捕。それに、何よりも警察・検察・裁判官の「メンツ」・・・・・。
また裁判が、裁判官の考え方・「心証」によって、同じ事件なのに(裁判官の交代で)右にも左にも振れる現実・・・・・

なんといっても、映画のセリフが、日本の裁判制度の課題を明確に指摘している。曰く・・・

<当番弁護士>:「裁判は大変だよ。はっきり言うけど、この種の軽微な事件でも否認していれば留置場暮らしだ。裁判にでもなれば被害者証言が終わるまでへたをすれば3ヶ月位出てこられない。僕は半年拘留されていた人を知っている。当時認めれば罰金5万円の事件だ。そのうえ裁判に勝てる保証は何も無い。有罪率は99.9%。1000件に1件しか無罪はない。示談で済むような痴漢事件で、正直裁判を戦っても良い事は何も無い。もちろん弁護士として、やってもいないことを認めろと勧める事はできない。でも、これが日本の現状だ。認めて示談にすれば、誰にも知られず明日かあさってにはここを出られる。いいかい、このまま否認していれば、3週間はここで取調べを受ける。それで起訴されれば裁判だ。無罪を争えばまず1年はかかる。そのうえ、本当に無実でも、無罪を勝ち取れる保証はない。今認めて示談にすれば、それでおしまいだ。・・・」
・・・・・・・・・
「有罪になる確率は99.9%というのは本当ですか?」
「それは認めている事件を含めての数字です。否認事件だけに限れば高くなる。3%位だな。100件に3件は無罪だ・・・・」
・・・・・・・・・
「99.9%の有罪率というのは弁護士さんにとっても便利なんですよ。有罪となっても誰からも非難されないし、無罪を勝ち取ったら英雄だ。」
・・・・・・・
<最後の場面で主人公の独白>:「ボクは、心のどこかで、裁判官なら分かってくれると信じていた。どれだけ裁判が厳しいものだと自分に言い聞かせても、本当にやっていないのだから有罪になるはずが無い。そう思っていた。真実は神のみぞ知る、と言った裁判官が居るそうだが、それは違う。少なくとも僕は、自分が犯人ではないという真実を知っている。ならばこの裁判で、本当に裁く事が出来る人間はボクしかいない。少なくともボクは裁判官を裁くことができる。あなたは間違いを犯した。僕は絶対に無実なのだから。僕は初めて理解した。裁判は真実を明らかにする場所ではない。裁判は、被告人が有罪であるか無罪であるかを、集められた証拠でとりあえず判断する場所にすぎないのだ。そして僕は、とりあえず有罪になった。それが裁判所の判断だ。それでも、それでもボクはやっていない。」・・・・

ウチにも二人の息子がいるので、カミさんが前から心配している。もし痴漢事件に巻き込まれたら、やったのなら仕方がないが、もしやっていないのなら、直ぐに家に連絡せよ・・・・、と言い聞かせている。
というのは、前に駅のホームで男性を摘発している女性を目撃して、その自信たっぷりの女性の言い方から、“慣れている”と感じ、到底女性側に立てなかったとか・・・・・
でも、この映画を見ての我が家の結論は、「無罪でも、さっさと罪を認めて争わない・・・。時間も手間も、到底いまの日本の現実(警察・裁判・・)には付き合えないので・・・・」。

Tuuhan この映画を見て、先日見かけた「通販生活」の表紙を思い出した。電車のつり革をいつもカバンの中に入れておいて、電車ではそれを常に握っている・・・、というギャグ・・・・(この表紙は気に入った!)
このテの痴漢事件に対し、それしか対応策が無いのが今の日本の男性の置かれている現実とすると、可笑しくもあり、悲しくもあり・・・・

しかし「真実」にふたをして、“長いものには巻かれろ・・・”が「現実の解」だとすると、この世の中、何ともやりきれない・・・。
でも電車内での痴漢事件に巻き込まれる可能性はいつでも誰でもあるので、対策としてこの“携帯つり革”を通販生活で買ってカバンに入れておくことにしよう。

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