利他心とアーミッシュ
カミさんが「ラジオ深夜便 こころの時代 5号」という雑誌を買ってきた。チョット借りて、電車の中で開いてみた。最初読み出して、直ぐに唸った言葉が見つかった。
遺伝子学者 柳澤嘉一郎氏の「利他心はどこからくるのか(P15)」である。(言うまでもなく、氏は柳澤桂子さんの夫君である)
「アーミッシュの精神性」
――人の性格は、育てられた環境で変わってくるものなのですか。
柳澤:はい。環境や教育が非常に大切だという例を一つお話ししましょう。アメリカのペンシルベニア州に「アーミッシュ」と呼ばれる人々の共同体があります。彼らはスイスに起源を持つ、キリスト教再洗礼派に属するドイツ系の人々ですが、彼らはいわゆる文明の利器を拒否していて、電気も水道も自動車も使いません。ランプを灯して、井戸の水をくんで、馬車に乗って、農業を糧にして暮らすという、昔ながらの生活を今も守っています。
また、彼らは絶対的な平和主義で、暴力的な行為を一切否定します。いわば利他主義でコミュニティーを作っているんですね。彼らは子どもを外部の学校には通わせず、コミュニティーの中に学校を作っています。
2006年のことですが、外部からやって来た男が、銃を持ってその学校に押し入り、先生と男子生徒を追い出して、女子生徒10名を人質にして立てこもったのです。すぐに外部ら警察が来ました。犯人はめんくらって、「包囲を解かないと子供を殺す」と言った。そうしたら、いちばん年上だった13歳の女の子が、「私を殺してください。ほかの子は全員助けてあげてください」と犯人に申し出たんです。それを聞いた犯人は、なんとすぐにその子を撃ち殺してしまった。
次に11歳の妹が進み出て、「それでは私を犠牲にして、ほかの子は助けてください」と言った。そして、その子も撃たれました。結局、5人が殺されて、5人が重傷を負いました。なんとも悲惨な事件ですが、これは人間の利他心、自己犠牲の究極の出来事です。
重傷を負った子どもから初めて中の様子が明らかになり、広く知られることになりました。事実を知ったアメリカ中の人たちは、ものすごいショックを受け、そして子どもたちの行動に深く感動したのです。資本主義の中で、人は株を買い、お金を稼ぐことばかり考えて、自己中心的な考え方だけで行動しているように見えます。しかし、そういう人々でも、このアーミッシュの話に感動したのです。
人間は誰しもそういう話を聞いたときに、感動するような神経回路を持っているのだと思います。つまり利他行動とは、環境がそれと相容れなくても、人間の本能として消えない情感ではないか。利他行動を見ると本能的に感動するのが、人間ではないかと私は考えるのです。
アーミッシュについては、前にTVでやっていたので知っていた。しかしこの様な話は初めて聞いた。2006年といえば、昨年の話ではないか・・・
「利他」についてもこのblogで何度か書いたように、まさに仏教の思想である。
それを、ここまで実践している世界が、何と現在のアメリカにある・・・。それも驚異だが、育てられた環境がそれを育んでいる、という事実・・・。
しかもこの文章で良いのは、この利他行動が「本来人間が、誰でも持っているもの」という視点だ。これは遺伝子学者が言うのだから確かだろう。
また確かでありたい(信じたい)・・・と思う。
現在の自分とは、あまりに懸け離れた言葉なので、心に滲みた・・・
(でも、“もしかしたら自分も持っているかも・・・”と思うと、心が明るくなるよね・・・)
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